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アンネ・フランクリン

本記事は爆笑します。電車などでは読まないことをお勧めします。めちゃくちゃハードルあげましたが、大丈夫です(笑)

高校に入学したばかりの話です。
家に一番近くににある高校で
まだ新設校で校舎も新しく
偏差値もそこそこで
中学時代全くモテず
新しい高校生活こそ期待して
入学したのを覚えている

ただ一つだけ気がかりな事があった。

当時はネットなどなく
口伝えで伝わる噂だけが
唯一の情報源なのだが体育の教員に

生徒を2人殺した先生がいる。
それは大袈裟でも
火の無いところに煙は立たない
つまりなんらかのヤバイ人
そういう恐怖が新入生共通認識だった。

入学式が終わり授業が始まれば
直ぐ最悪だった。
その暴力教師は俺たちの体育の
受け持ちだった

5分前集合は絶対だと
例えその前の授業が
どれほど長引こうが遅れるなど
そんな事は俺には関係ない!!
そんな理不尽は許さん!と

理不尽の意味知ってます?
と問いかけたくなるような
事を最初に言われた。

だけどそんなツッコミは
できるわけがない
暴力教師は竹刀を常に持って歩く
そして既に2人殺している(噂だけど)

授業が始まって
ゴールデンウィーク前だったか
新入生歓迎の一環として
1年生は演劇の鑑賞会があった。

演劇の内容はアンネフランク
どこの劇団だったかは覚えていないが
しっかりした演技ではあった。

色んな高校から1年生が来ており
比較的偏差値の低い高校は
野次をとばしたり見苦しかった。

俺たちは比較的おとなしく
そこそこ偏差値があるので
どちらかというと品行方正だった。

同時に不良たちを馬鹿にしている
そんな態度も出さなかった。
要するに俺たちは喧嘩が大嫌い
ビビリの集団である。

学校からバスで鑑賞しに行ったが
そのバスの中に殺人教師もいて
生きた心地はしなかったのだが
帰りは、俺たちの態度が良かったのか
凄く上機嫌だったのを覚えている。

いい先生かな?と思いつつ
ちょっとほっこりした
そんな鑑賞会だった。

しかし何回目かの体育の時間に
ついに事件は勃発した。

あろうことか物理の授業が
時間を延長して休憩時間に
10分も食い込んだ

ダッシュで更衣室に行き
着替える時間5分で
授業開始のチャイム
ギリギリではあったが
滑りこんで間に合った。

間に合ったのだが
約束は破られていた。

整列をしていた俺たちの前に
体育館内にある教師用の控室から
ゆっくり竹刀をもって
殺人教師は近づいてきた。

先「なんて言った?」
皆「・・・・・」
先「最初なんていった?」
Aという生徒が答えた
A「5分前集合です」
先「正座っ」

それだけ言い残して殺人教師は
控室にもどっていった。

皆理不尽な正座に憤ることなく
皆、安堵する。
殴られる痛みの方が
きついと思っていたからだ。

しかし10分20分と経つと
皆、足が痺れて姿勢は崩れ始める
少しだらけた気持ちにもなった
肉体的な疲弊もあるが
この後どう決着されるのか
それを思うと精神的にも疲弊した。

30分経った頃
パターーーーーン!!!

控室のドアが開いた

指揮系統が崩壊しかかっていた
我が生徒軍は一瞬で精強な
グリーンベレーへと成長を遂げた。

隣の仲間の背骨は恐ろしい程
まっすぐ伸び、また俺の姿勢も伸びた。

カツン

カツン

カツン

竹刀で床をたたきながら歩いてくる
その音が体育館内に響きわたる。

耐えられない恐怖
演出の天才かっ!とツッコミを
思いつく余裕のない若葉の頃
俺たちはただただ緊張した。

先「お前らさぁ俺は悲しいよぉ」

怒鳴られると思っていた。
意外にも優しい口調だった。

どこから入ったスイッチなのかは
わからないのだが何かが心を震わせた

先「演劇をみたよな」
先「態度は立派だったよな」

褒められている
俺たちは今、褒められている!

先「だけどなんだ今日は」
先「もし今があの時代なら」
先「お前たちは死んでいたぞ」

意味がよくわからなかった
だけどもそうだ。そうに違いない
俺たちは死んでいたんだよ!
緊張と足の痺れが反抗心をマヒさせていた。

恐らくだけど、あと少し生き残れば
アンネは死なずに済んだと
いいたいのだろうか?
それとリンクするには無理があったが

精神的にも肉体的にも
未だに正座を解かれていない俺たちには
妙な説得力があった。

先「俺は悲しいよ」

この先生は良い先生なのかもしれない。
だって悲しんで下さっている!!
不甲斐ない俺達を思い
悲しんでいらっしゃる!!

熱い先生なのかもしれない
滝沢賢治なのかもしれない
悔しいです!!って叫びたい
でもラグビーはしたことはない

先生に心から心酔しかけた
そんな刹那

先「可哀想だと思わないか」
先「少しの遅れで命を失うのだぞ」

俺達「・・・・・・・・・・・」

先「可哀想だアンネ・フランクリン」

可哀想なのは
こいつのオツムだった!!!

生徒たちに動揺が走る

(あれ?今この人なんていった?)
(アンネフランクリンいった?)
(「リン」がついたよね)

微妙なアイコンタクトが
生徒間で広がっていく。

(でも間違えだよね?)
(勢い余っただけだよね?)

皆その場を耐えた。
耐えたというよりは今だ混乱にあり
どういうことなのか判断がつかない
間違っただけだよな?

先「思わないのか」
先「アンネ・フランクリン」

間違いではなかった!!!
彼にとってアンネ・フランクには
「リン」がつく

(ヤバイ)
下唇が吐出し上唇を塞ぐ
フーハァーフハァーと息を逃がす。
この時、生徒全員は皆例外なく
イノキだった。

(元気ですかっぁ!!)
(よぉー)

なんとかイノキになり
心にビンタを喰らわせ第一波を凌いだ。

笑ったら殺される
握りしめる竹刀は
その十分な根拠だった

「お前ら演劇みただろう」
「アンネ・フランクリンどう思うよ」

先生もうやめてくれ
それ以上アンネを辱めないでくれ

しかし、そんな想いは
意外な形になって現われた。

「フランクリンが可哀想だろう」

「!?」

まさかのそっち!!!
そっち認識なの!!?

辱められたのはアンネではなく
フランクの方だった
しかも「リン」が付く

恐らくアンネと言えば
全ての日本人が1人の少女を想像する。
フランクといっても
下手をしたらフランクフルトを
想像しかねない。

それはもう食物だ!!

余計な連想が
自らをより窮地の追い込む。

(お前笑うなよ)
(お前も笑うなよ)

絶対に笑ってはいけない
そう思えば思うほど
こみ上げてくるリビドー

「お前達、劇を見ていなかったのか」
いやそれはお前だっ!!

「可哀想だろう?」
お前のオツムがなっ!!

プッ

誰かが吹いた

もう止まらない
場は爆笑の渦だった。

体育の授業は2時間だったが
2時間の正座を余儀なくされた

その時正座こそしたものの少し
変わっている先生というだけだった。
生徒を殺したというのは
若いころにマラソンをさせ
不幸にもその生徒1人が
不慮の事故で亡くなった
それが真相だった。

その後俺たちは
フランクリン先生ー!と
本人の前でも呼べる関係になった

パワーバランスはちょっとしたことで
大きく変わるそんな緊張と緩和

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結構幅拾いです。今度は
感動をお届けします(笑)
お時間ある際はぜひ、お読みください

上記のようなテイストなので
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