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4月のある晴れた朝に100パーセントの仕事に出会うことについて

内田樹『こんな日本でよかったね』を読んでいます。


大学3年生の就職セミナーでリクルートの営業はまず最初に「みなさんは自分の適性に合った仕事を探し当てることがもっとも重要です」と獅子吼する。
その瞬間に若者たちは「この広い世界のどこかに自分の適性にぴったり合ったたった1つの仕事が存在する」という信憑を刷り込まれる
もちろん、そのような仕事は存在しない。
だから、「適職」という概念を発明したことそれ自体がリクルートの奇跡的なサクセスの秘密なのである。 (P.152~153)


リクルート社に限らずですが、就職活動に関する情報は、「いかにして自分にぴったりな企業 / 仕事に出会うか?」という話が大きなウェイトを占めます。

そんな情報に触れた人の多くは、『自己分析をして、企業について調べて、面接を受ける、、、といったプロセスの先で、”自分に100%ぴったりの仕事”に出会うことができる』と信じます。

また、『適職』に出会うためのノウハウが、インターネットや書籍などを通じて流布され、知らず知らずのうちに『これは自分の適職か否か』というモノサシに支配されます。


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不満や不足を一切感じない、100%自分にぴったりな仕事なんてありませんから、当然『これは自分の適職(天職)ではない』と苦しむ人が出てくるわけです。

それで仕事がイヤになりますし、イヤな部分が必要以上に気になるようになりますし、その先で「どこかにもっと自分にぴったりな仕事があるはずだ」と思い、転職を考えるようになります。

しかし、『自分の個性や価値観や希望に100%合致する仕事』なんてものは、この世のどこにもありません。不足しているものに目を向け続ける限り、いつまでたっても楽しく働くことはできないはずです。


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仕事や労働で必要以上に悩んだり苦しんだりしないためには、『適職』という概念そのものを疑うことが必要かと思います。

転職を促す企業広告に気を取られぬよう努め、『自分にぴったりの仕事がある』という考え方そのものを見つめなおすことです。

恋愛や結婚でも、『自分に100%ぴったり合うたった1人のパートナーがどこかにいる』と信じているうちは、いつまで経っても幸福感や満足感を得られないはずです。

『自分にぴったりな仕事』『自分にぴったりなパートナー』を探すことに労力を使うよりは、『どんな仕事も楽しくこなせる』『どんな人とも楽しく過ごせる』よう自分の考え方や姿勢を変えることに時間やエネルギーを使う方が、よっぽどよいのではないでしょうか。

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