インプットは五感、アウトプットは筋肉
養老孟司『ものがわかるということ』を読んでいます。
この本の前半の方で話がありますが、インプットは五感で、アウトプットは筋肉で行われます。
インプットは目で見る、耳で聞く、手で触る、鼻で嗅ぐ、舌で味わうことであり、一方アウトプットは、筋肉の運動だけです。
何かを学ぶ際は、「身につく」こと、「身体を伴ってわかる状態」を目指す必要があります。たとえどれだけインプットしても、筋肉(身体)でうまく運用・活用できなければ、頭でっかちになって終わりです。
「五感による入力」と、「筋肉による出力」をくりかえすことによって、知識や教養は身についていきます。それが学習のメカニズム、とのことです。
学校や教室で教わるような、泳ぐこと、スキーを滑ること、三味線を弾くことなどは、身につけるのにたくさんの時間がかかります。自転車に乗ることや、絵を描くことなんかもそうですね。そう簡単にはできるようになりません。
教科書を読んだり、ビデオを見たり、少し実物を触ったりしただけでは、できるようにはなりませんよね。必要な知識を知ったうえで、自分で(自分の身体で)やってみる必要があったはずです。それも、くりかえし。
大人になってからの学習も同じです。「五感による入力」と「筋肉による出力」をくりかえさなければ、何事も身につきません。
どれだけビジネススクールに通っても、資格の勉強をしても、オンラインコースを受講しても、身についていなければ学んだことにはなりません。
どれだけ研修でビジネスマナーについての話を聞いても、どれだけリーダーシップについてのビデオを見ても、それだけでは実践できません。インプットした内容を自分の身体でくりかえし試すことを通じて、それらの知識やスキルは身についていくはずです。
私としては、はじめて仕事のお客様と会う前日に、名刺交換のやり方を解説したYouTube動画を見た後、アパートでひとり何度も練習したのを思い出します。
学校教育や企業研修に懐疑的な人もいるかもしれませんが、そこで行われる教育自体に意味がないわけではないと思います。「身につく」に至るまでのメカニズムを「教える側」も「教わる側」も理解していないことが問題かと思います。
「身につく」ことを目指さない学習や教育は、「受け身でインプットして終わり」の人間や、「頭でっかち」な人間を生み出して終わりです。
教える側としても教わる側としても、「身につく」に至るまでの道のりを考えながら学習に臨む必要があります。
知識を身につけるために必要な「反復」が組み込まれた教育を受ける人や、「反復」を実践する学習プロセスを経る人だけが、学びで人生を豊かにできるのだと思います。
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