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インプットは五感、アウトプットは筋肉

養老孟司『ものがわかるということ』を読んでいます。


泳ぎ方の教科書を読んだからって、泳げるようにはなりません。スキーの滑り方をビデオで見たって、滑れるようにはなりません。じゃあ一度プールに入ったら、泳げるようになるか。無理でしょう。三味線に一回触ったって、三味線が弾けるようにはなりません。基礎学力どころか、人生諸事万端、すべて学ぶ基本は同じです。反復練習しかありません。

P.84


この本の前半の方で話がありますが、インプットは五感で、アウトプットは筋肉で行われます。

インプットは目で見る、耳で聞く、手で触る、鼻で嗅ぐ、舌で味わうことであり、一方アウトプットは、筋肉の運動だけです。

何かを学ぶ際は、「身につく」こと、「身体を伴ってわかる状態」を目指す必要があります。たとえどれだけインプットしても、筋肉(身体)でうまく運用・活用できなければ、頭でっかちになって終わりです。

「五感による入力」と、「筋肉による出力」をくりかえすことによって、知識や教養は身についていきます。それが学習のメカニズム、とのことです。


学校や教室で教わるような、泳ぐこと、スキーを滑ること、三味線を弾くことなどは、身につけるのにたくさんの時間がかかります。自転車に乗ることや、絵を描くことなんかもそうですね。そう簡単にはできるようになりません。

教科書を読んだり、ビデオを見たり、少し実物を触ったりしただけでは、できるようにはなりませんよね。必要な知識を知ったうえで、自分で(自分の身体で)やってみる必要があったはずです。それも、くりかえし。



大人になってからの学習も同じです「五感による入力」と「筋肉による出力」をくりかえさなければ、何事も身につきません。

どれだけビジネススクールに通っても、資格の勉強をしても、オンラインコースを受講しても、身についていなければ学んだことにはなりません。

どれだけ研修でビジネスマナーについての話を聞いても、どれだけリーダーシップについてのビデオを見ても、それだけでは実践できません。インプットした内容を自分の身体でくりかえし試すことを通じて、それらの知識やスキルは身についていくはずです。

私としては、はじめて仕事のお客様と会う前日に、名刺交換のやり方を解説したYouTube動画を見た後、アパートでひとり何度も練習したのを思い出します。



学校教育や企業研修に懐疑的な人もいるかもしれませんが、そこで行われる教育自体に意味がないわけではないと思います。「身につく」に至るまでのメカニズムを「教える側」も「教わる側」も理解していないことが問題かと思います。

「身につく」ことを目指さない学習や教育は、「受け身でインプットして終わり」の人間や、「頭でっかち」な人間を生み出して終わりです。

教える側としても教わる側としても、「身につく」に至るまでの道のりを考えながら学習に臨む必要があります。

知識を身につけるために必要な「反復」が組み込まれた教育を受ける人や、「反復」を実践する学習プロセスを経る人だけが、学びで人生を豊かにできるのだと思います。

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