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2020年下半期読書リスト(ウサギノヴィッチ)

読書リストが長くなりそうなのと、新しく読んだ作品が一番下に来てしまうのそこを完全するために、noteを新しくしました。


『肝心の子供』『眼と太陽』 磯崎憲一郎
今回は、『肝心の子供』について言及する。
『眼と太陽』は、崩れかけのラジオで読書会をやったので、省きます。
 最近、磯崎憲一郎のことをリスペクトしている。保坂スクール(佐々木敦の言葉を引用)の出身者、そんな学校はないが、信者みたいなものとして捉えて欲しい。
 小説を自由に書くということをとにかく実践しているのが、保坂和志だし、その門下生みたいな人たちだ。それを僕自身も体験してみたいと思っているのだが、ノープランで書くとき、次の展開がどうすればいいのであろうかとか、論理の飛躍みたいなのがおきてしまい、結果的にプロットを書くことになる。
 僕の感性や想像力が劣っているのか、それを表現できる語彙力がないのか、どっちもそうなのか。
 少しでも自由度の高い小説を一回でもいいから書いてみたい。(10/26)

アウトラインから書く小説再入門  K.M.ワイランド

 今年に入ってから何冊も小説の入門書を読んでいる。それは、自分の書き方に対して疑問を持っているからだろう。少しでもいいから上手くなりたいという欲は、一回でもいいから文芸誌に名前が載りたいということなのだ。
 今回読んだ本は実は再読だ。数年前に読んだことがある。でも、記憶が曖昧になってきていたので読んだ。
「アウトライン」とはそもそもなんなのか。それはプロットのようでプロットでなく、シノプシスのようでいてシノプシスではない。物語を構成する要素を思いつくだけ書き込んで集めて、最終的には削ぎ落とし必要なものだけでにしする、レポートのような、結局プロットのような、いわば、これこそが「アウトライン」なのだが。

 この本を読んでみて、ぼくは入院前に二作ほど書いたがそれはプロットなしで書いた。物語が停滞するところもあったかもしれないが、そんなことも勢いで書いたいし、誤魔化した。なるべくなら下準備をして書きたいと思う時がある。
 だから、今書いているのは、下準備をして書きたいと思って、この本を選んで読んだ。
 少しでも上手くなりたいと思って。(9/12)


臆病な都市 砂川文次

 都内で最近増え始めた「けり」という鳥が原因で、都内で感染症が流行り始めた……。
 主人公は首都庁に勤める公務員。けりのことに関して担当することになる。ただ、その感染症は調べると「ない」ことになっている。街の住人とは温度差ができ始めて、健康診断と一緒に感染症の検査をしなければならず、そこで正常ならばワッペンを渡される。このワッペンを持っていないと自由に行動できない。物語の終盤に主人公わざと持っていなくて外出して、感染性の隔離施設に強制入居させられる。
 この小説は三月の群像に掲載された作品だ。現在の世界で起きているようなコロナを予想していたのか、それとも偶然なのか。読んでいてハラハラする部分があった。(9/9)

砂漠が街に入り込んだ日 グカ・ハン

 あんまり言いにくい事なのだけれども、この作品はブッツァーティみたいな不思議な国の不思議なお話みたいな短編が収録されているなと思った。
 読んでいて一番不思議だったのは、主人公が中性的であり、女の人の話なのか男の話なのか、読んでみないとわからない。いや、ぼくの理解力が劣っているのかもしれないですが。
 それでも共感できるお話があったりして、読んでいて新鮮な気持ちになった。もし、注文をつけるなら一点、会話文が欲しかった。あることはあるのだが、地の文に入りこんでいるため、ずっと地の文を読むというぼくにとっては非常に苦行な感じがした。(9/9)

破局 遠野遥

 この作品を初めて読んだときには、「なんだか異物が入っている」と思っていた。たぶん、それは主人公のきっちりとして、はっきりとした性格が読者に感情移入をさせない。共感させない。そんなところがあって、ぼくは半分くらいまでよんで、やめていた。
 ときはすぎ、芥川賞を獲ったで続きを読んでみたものの、あいかわらず登場人物誰一人として共感が得られない。とくに平板なまま話は過ぎていき、最後に山場があるが、それもたいして劇的ではない。
 果たしてこの作品で芥川賞をあげてよかったのか、疑問が残る。
 まだ、『改良』の方がよかった。(7/16)

火花 又吉直樹

 出だしで「おぉ、純文学やんけ」と圧倒されてしまいました。筋立てちょっと大人の青春もので、漫才師が、「面白い」を追求する。その中で出会った、神谷が破天荒だけど面白いと主人公徳永は思う。師匠というか兄さんみたいな存在になり、親しくやっていく。
 だが、そんな順風満帆にはいかず、徳永のコンビの解散が決まった。そのときの漫才が超絶に心を掴まれる。ベタな漫才で、よくありそうなやつだけど、なんか感動した。
 最後は、一番最初の風景に戻ってくるという、純文学のお手本のような構成でした。
 そりゃ、芥川賞とるわ。(7/6)
 これを書いたのがお酒を飲んで酔っ払って書いていたので、追記します。
 この話は、徳永と神谷の師弟愛みたい部分はあるけども、それよりも共依存的な部分が見られるのではないだろうか。具体的には書けないけど、オタク同士が超絶に話が合ってしまって、それからその人以外に話せない状態になるという状況に、陥ってしまったのではないだろうか。んで、芸人の慣習である、先輩が飲み代を払うというということをやっていき、徳永かっこつけていたら、借金で首が回らなくなってしまう。
そのあと借金が払えなくて雲隠れしたから、帰ってきたときの神谷の姿は不快に思えた。

書きたいのに書けない人のための文章教室 清水義典

 たしかに文章教室だったなぁという感じはあるけれども、どちらかと言うと読者のターゲットがお年寄りな気がした。最後の章は、「終活」についてまで触れていたのだから、それはたぶんきっとターゲットは高齢者向けだ。
 でも、中身は本格的で、400文字でどう書いていくかということからはじまり、小説とは出てきてないが小説の書き方、心得、テクニック、みたいなところまで踏み込んでいた。ある程度自分の知りたい知識みたいなのは吸収できたが値段と見合う本かと言われるとちょっと違うような気がした。(7/3)

ホワイトラビット 伊坂幸太郎

 うーん、伊坂マジック炸裂したか? なんか時間軸も不親切だし、ネタも小出しにしてくる。そして、嘘が多すぎて、捌き切れない感じがした。(それは自分の頭の良さのせいかもしれないが)
 読んだ後もいまいちスッキリしない一冊、これが過去のこのミス2位と文春ミステリ3位とは……。
 昔から好きだから、もうなんも言えない。(7/1)


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