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Daily Select News[7.14.2020]Vol.1

7月14日(月)のデイリー・セレクト・ニュース|国内記事版

表紙画像:Ambrose KardarによるPixabayからの画像

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◇ロジャー・ストーンと法治主義の腐敗

トランプ、ロシア疑惑で有罪になった「お友達」の実刑を免除
[7月13日,Newsweek日本版]
 ドナルド・トランプ米大統領の長年の盟友ロジャー・ストーンは,2016年の米大統領選でのロシアとトランプ陣営の共謀に関する「ロシア疑惑」の捜査にて,偽証や証人買収を行ったとして,禁錮3年4ヶ月の実刑判決を受けた.そして,ストーンは今月14日に刑務所へ収監される予定だったが,10日,トランプ大統領は刑の執行を正式に免除した.大統領は以前から,ストーンは政治的思惑から不当に標的にされたとして,「お友達」を擁護し続けていた.
 この措置に対し,トランプ大統領と対立する共和党のミット・ロムニー上院議員は「前例のない歴史的な腐敗だ」とTwitter上で強く非難した.民主党のナンシー・ペロシ米下院議長も,CNNの番組の中で「驚くべき腐敗ぶりだ」と語っている.他にも,共和党内でもストーンの有罪は正当であるという声が上がっている.パット・トゥーメイ上院議員は,ロシア疑惑に対する捜査の欠陥を指摘しているものの,「それでもロジャー・ストーンの刑を免除することは間違いだ」と主張している.
 なお,ロムニー,トゥーメイ両上院議員の批判に対し,トランプ大統領は12日のツイートの中で,二人を「名ばかりの共和党員(Republican In Name Only:RINO)」と呼んで反発している.

ムラー元米特別検察官、沈黙破る トランプ氏が刑免除の盟友は無罪ではないと
[7月13日,BBC News Japan]
 トランプ大統領の措置に対し,ロシア疑惑について捜査を担当した(ストーンの起訴を含む),ロバート・ムラ―元特別検察官は11日,異例の寄稿を米Washington Post紙に提供した.連邦捜査局(FBI)元長官でもあるムラ―氏がマスコミで発言するのは,きわめて異例の出来事である(昨年7月に連邦下院公聴会での証言が最後).
 ムラ―氏は寄稿記事の中で「ロシア捜査はきわめて重要なものだった」としている.そして,「ストーンは連邦法に抵触する犯罪を犯したため,起訴され有罪判決を受けた」のであり,「有罪となった犯罪者であることは今も変わらない」と書いている.また,ムラ―氏の捜査が不当であるという批判に対しては,「我々は全ての事件と同様,ストーンの事件でも,すべての決定をあくまでも事実と法律と法治主義に基づいて行った」と書いている.
 なお,ロジャー・ストーン元被告については当初,検察は7~9年の禁固刑を求刑していた.だが,大統領寄りのウィリアム・バー司法長官の異例の介入によって,求刑の軽減が命令された.これに対し,担当検事4人が一斉に抗議して担当を降りるという事態になっている.
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◇11月の再選に向けて,だが2016年とは違う

アングル:集会戦術に執着するトランプ氏、世論と合わず「空回り」
[ワシントン 7月10日,Reuters]
 トランプ大統領は11月の大統領選挙に向け,再選への意欲を示しているが,一方で現実では困難に直面している.だが,それでも同氏の選挙戦のスタイルは以前と変わらない.誇張的で乱暴な言い回しを駆使する集会を好み,「伝統主義・保守主義者」と「進歩主義・自由主義者」の対立構造を人々に訴える.これは,トランプ大統領が前回の選挙で,人種や宗教面で社会の分断を煽ったことが当選の一因であったことに起因している.
 だが,状況は変化している.大統領の元アドバイザーの1人は,今年は事情が違うことを「トランプ氏以外の誰もが」感じ取っている,と述べている.事実,それは世論調査でも明らかになっており,支持基盤であった白人層でも支持を失いつつある.それでも,複数の関係者によれば,トランプ大統領は自身の直感に従い,周囲の助言を受け付けようとしない.
 トランプ大統領は再選に向けて,1968年の大統領選で勝利したリチャード・ニクソンの「サイレントマジョリティー」の存在を確信している.だが,世論調査によれば,同氏の思惑と有権者の意識の乖離が示されている.すでに,対立候補である民主党のバイデン前副大統領は,世論調査にて無党派層や高齢者層でも,支持率をリードしている.
 トランプ大統領の動きは,悲惨なコロナ危機への対応策やBLMに関連する南軍彫像問題など,国内の様々な危機に直面しているなか,そうした現実に直視しようとせず,幻想を見ているかのように思えてくる.
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◇ポピュリストの勝利は,東欧に暗い影を落とす

ポーランド大統領選、現職の保守派ドゥダ氏が僅差で勝利
[7月13日,BBC News Japan]
 ポーランドで12日,大統領選の決選投票が行われたが,選挙管理委員会は13日,現職の保守派アンジェイ・ドゥダ大統領が勝利したと発表した.決選投票では,与党「法と正義(PiS」を含む保守連立を率いるドゥダ大統領と,社会的リベラルのワルシャワ市長ラファル・チャスコフスキの一騎打ちとなった.
 ドゥダ大統領が再選したことで,異論の多い司法改革が進められるほか,人工妊娠中絶や性的マイノリティの権利の抑圧などが続くことが予想されている.同氏は以前,LGBTの権利は,共産主義よりも破壊的な「イデオロギー」だと発言していた.また,EUとの緊張関係が,今回の選挙にて大きく注目されていた.
 ただし,今回の選挙プロセスについて,野党「市民プラットフォーム(PO)」は,在外ポーランド人に投票用紙が期日中に送付されないなど,12日の投票締め切り後にいくつかの「異常」が報告されたとしている.ワルシャワ大学の政治学者アンナ・マテルスカ=ソスノウスカ氏は「選挙に関する抗議が起きるのは必至」だとし,全ての問題が最高裁判所まで持ち込まれる可能性についても語っている.
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◇現代の焚書,「皇帝」習近平の野心

焦点:中国の学校で一斉に「有害図書」処分、若者の思想統制へ
[北京 7月9日,Reuters]
 新型コロナウイルスの流行による混乱が沈静化し,授業が再開した中国国内の学校では,政治的に不適切であると当局にみなされた書籍を処分する動きが一斉に進んでいる.この動きには,教育システムに愛国主義と純度の高いイデオロギーを深く浸透させようとする,習近平国家主席の意向を強める目的がある.
 今回の動きは,昨年10月に中国教育部が小中学校に対し,「違法」あるいは「不適切」な作品を掲載した本を学校の図書館から排除するよう求める指示を出したことがきっかけとなっている.この動きは,ソーシャルメディアへの投稿などから,実際に確認されている.この動きについて,北京で活動する政治アナリストのウー・チャン氏は,「図書館を標的にする動きは文化大革命以来だ」と語る.
 ただし,今回のキャンペーンは組織的な動きというのが,文化大革命と異なる.どの本を対象にするかは,各学校の教員が上から指示内容を個別に解釈して決定している.教育部は対象書籍をリストアップしているわけではなく,あくまでも違法とする定義を明示しているに留まっている.それでも,この動きは中国共産党及び習近平国家主席による,子供たちへのイデオロギー強化という,きわめて憂慮すべき事態であることに変わりはない.
 ジョージ・オーウェルの『1984』が処分されたのはある種皮肉らしいものと私は感じたが,興味深かったのは,以前は習近平国家主席と関連付けられて批判や嘲笑,ジョークのツールとなっていた『くまのプーさん』が,今回の動きでは推薦図書に含まれていたということだ.
 また,今回の「焚書」キャンペーンでは,各地方自治体がソーシャルメディア上で撤去・処分した本について触れているが,それらの基準は「不適切」であったり「無価値」,「古く時代遅れの内容で学生が読むにはふさわしくないもの」だという(損傷が激しいものも含まれているが).だが,そうした基準は,どのような視点で判断しているのだろうか.不適切や無価値などという定義は,なるほど表現の自由が著しく欠如している中国では,ある意味ではふさわしいのかもしれない.
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◇彼らのノブレス・オブリージュ

超富裕層は「コロナ税」納付を 世界の大富豪らが公開書簡
[ロンドン 7月13日,AFP]
 世界の大富豪80人超が13日,新型コロナウイルスからの復興のため,超富裕層への課税の大幅強化を,各国政府に向けた公開書簡の中で呼びかけた.人道支援を目指す富豪らの団体「Millionaires for Humanity」は,公開書簡の中で,富裕層は課税額を「即座に,大幅に,永続的に」引き上げられてしかるべきだとしている.
 公開書簡の中で富豪らは,コロナ危機からの復興に向けて「我々には多くのお金がある.世界がこの危機から回復していく中で,いま切実に必要とされており,今後何年にもわたり必要となるお金だ」と書いている.そして,COVID-19パンデミックのなか,「われわれ富裕層は世界を癒やしていくために果たすべき非常に重要な役割がある」としている.
 この「素晴らしい」提言は,確かに正当なものだろう.世界の大富豪たちは,このコロナ危機の中で「救世主」としての役割を果たしてくれるかもしれない.だが,忘れてはいけないのは,そもそもこのコロナ危機で困窮している人々の多くは,深刻な経済格差の影響を被ったのだということだ.そして,富豪たちは概して,その経済格差の恩恵を享受してきたのである.もちろん,全ての富豪がそうだとは言わない.それでも,飽くなき欲求に駆られた少なからぬ富豪たちの影には,多くの貧困層がおり,彼らが今回の危機で最も,打撃を被ったのだ.
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