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Daily Select News[7.3.2020]Vol.1

7月3日(金)のデイリー・セレクト・ニュース|国内記事版

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◇政治&経済:香港危機

アングル:香港国安法を投資家が歓迎、「本土資金」に期待
[上海/香港 7月1日,Reuters]
 6月30日夜,「香港国家安全維持法」が施行されたことに対し,民主主義国家の政府は続々と批判や懸念の声を上げている.ただ,そうした政治的側面とは対照的に,投資家たちの間では,今回の法律の施行を歓迎する向きがある.というのも,今回の措置によって香港への中国本土への統制の高まりとともに,中国企業が香港市場に上場し,資金流入が拡大するからだ.加えて,世界第2位の経済大国である中国本土との金融的つながりの強化という面でも,肯定的に見ている.香港のゲオ・セキュリティーズ CEOフランシス・ルン氏はこう述べる:「金融業界人は金儲けのことしか頭にない.何があろうとも,金儲けという人生唯一の目的以外には目が向かない」

米下院、香港めぐり中国制裁の法案を可決 国家安全法を非難
[7月2日,BBC News Japan]
 香港国家安全維持法の施行を受け,今月1日,米下院は中国による香港の自治侵害に対する制裁措置「香港自治法案」を全会一致で可決した.この法案は,香港の民主化デモの取り締まりに当たる中国当局者と取引を行う銀行に対して罰則を与えるものである.本制裁案は上院でも可決されており,トランプ大統領に送られる.
 中国の強硬な姿勢に対しては,欧州やオーストラリア,日本などの民主主義国政府が懸念を表明している.一方,先月30日にジュネーブで開催された第44回国連人権理事会では,53カ国を代表してキューバが,中国の国家安全維持法を歓迎している.また,中国高官は1日,香港での問題について,内政問題だとして国外からの批判を一蹴した.

【解説】 香港の「国家安全法」 なぜ人々をおびえさせるのか
[7月2日,BBC News Japan]
 本記事は,BBCのマイケル・ブリストウ記者が,新たに施行された香港国家安全維持法について詳しく説明した記事である.今回の法律には多くの懸念点があるが,その代表的なものが「曖昧な表現」だろう.同法が違反と定義している行為については明確な定義がなく,それゆえ中国当局が様々な解釈を行うことが可能となる.そして,この曖昧な表現は,海外の外国人にも適用される可能性があることを意味している.中国当局の機嫌を損ねるような発言をしたことがある人物は,拘束されたくなければ香港に近づかないほうが良いだろう.キャリー・ラム行政長官は,今回の法について香港の安定に貢献するものと歓迎しており,市民の権利を損なうものでないと同法を擁護しているが,いったい彼女の言葉を信じられる根拠はどこにあるのだろうか? 筆者には甚だ疑問である.

中国の「国安法」、香港に起き得る不可逆的な変化とは
[香港 7月2日,CNN]
 今回施行された香港国家安全維持法(国安法)には,様々な効果がある.ひとつは,「萎縮効果」だ.同法が曖昧な表現をしたことにより,人々が何が法に抵触するのか分からず,したがって萎縮してしまう.なにしろ,重大なテロ活動に対する刑罰は最高で終身刑であり,最も軽いものでも禁錮10年である.重大でなくても,最低で禁錮5年の刑が科されるのだ.ふたつ目は,「外国人への脅威」である.国安法の規定により,外国の企業やメディア,NGOなどの香港での活動に大きな影響を及ぼす可能性が生じた.中国当局が国家安全保障に敵対していると見なせば,有罪となる可能性があるのである.
 また,司法上の変化もある.国安法により,香港の司法の独立性が侵害されることになる.また,特定犯罪に対しては中国当局が介入することが可能となり,中国本土の法律や法的基準が適用される.被疑者が本土に移送される可能性もあるが,これは昨年,香港市民が反対していた逃亡犯条例改正案と同様のものでもある.国安法の施行は,これまでの香港の在り方を恒久的に変えるかもしれない,大いに憂慮すべき事態にまで進展したことを意味している.
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◇政治&経済:中国

国務院、輸出用製品の内販転換をサポート
[北京 7月2日,JETRO]
 中国・国務院弁公庁は先月22日,「輸出用製品の内販転換支援に関する実施意見」を発表した.これは,輸出用製品の内販転換支援などにより,コロナ危機による外需不振の影響を被った輸出型企業をサポートするものである.これは特に,国内各地域において重要な産業チェーンやサプライチェーンを担う輸出型企業や,中小零細の輸出型企業を重点的に支援するとしている.この施策は,コロナ危機にともなう緊急措置ではあるものの,輸出型企業が受注貿易に依存するのではなく,国内においても販売チャンネルを築くチャンスとなる.

中国はマルウェアによるウイグル族の監視活動を数年にわたって行っていたと判明
[7月2日,GIGAZINE]
 セキュリティ開発を行うLookout社は1日,中国で新疆ウイグル自治区居住のウイグル族を対象に,マルウェアによる監視活動が数年にわたり行われていたことを公表した.同社が発見したのは,Android端末で動作する4種類のマルウェアであり,ウイグル族だけでなく中国国外のイスラム教徒も対象になっていた可能性があると報告している.また,Lookout社は,マルウェアによる監視活動が,中国に拠点を億複数のハッカー集団と関連している可能性があるとも示唆している.
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◇政治&社会:グローバル

ロシアの改憲投票、78%が賛成 プーチン大統領は2036年まで続投可能に
[7月2日,BBC News Japan]

憲法改正を問う国民投票で78%が賛成を選択
[7月2日,JETRO]
 今月1日,ロシアにて憲法改正案をめぐる国民投票が実施された.今回の改憲案で注目されていた一つには,大統領の就任回数を2期12年間に制限する項目があったが,一方で現職大統領やこれまでの大統領経験者は本制限の対象外となっている.そのため,プーチン大統領の任期は任期満了となる2024年に一度リセットされるため,そこから最長で12年(2036年)現職にとどまることができる.
 改憲案の他の修正点には,下院の権限強化や,内省・外交政策の基本方針および社会経済発展の優先方向性を定める国家評議会の創設,労働最低賃金を最低生活水準以上とし,年金や社会的給付への物価スライドの保障などがある.なお,今回の国民投票について,選挙管理委員会によれば,投票率65%であり,77.9%が賛成したという.

ドイツ、EU議長国に就任、欧州の復興に向けた結束に主眼
[ブリュッセル 7月2日,JETRO]
 今月1日,ドイツがEU理事会における2020年下半期のEU議長国に就任した.議長国就任に先立ち,ドイツは先月30日,議長国ウェブサイト上にて,「欧州の復興と共に」と題する実施プログラムを公表した.同プログラムでは,新型コロナウイルスの感染拡大における社会的・経済的影響への対策として,2021-27年の次期中期予算計画(MFF)が重要な基礎であるとし,復興基金を含むMFFの早期合意の可否が争点となっている.

USMCAが発効、国内法整備も完了
[メキシコ 7月2日,JETRO]
 今月1日,米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が発効した.メキシコのグラシエラ・マルケル経済相は1日の記者会見にて,同協定が北米の地域経済を強化する効果を強調した.また,USMCAには北米自由貿易協定(NAFTA)には存在しなかった中小企業育成,腐敗防止,環境保護,労働者の権利保護などの内容が含まれており,現政権の開発政策の柱になると強調している.
 一方,USMCAの短期的な経済刺激効果には疑問を呈する声も多い.すでにNAFTAによって米墨間の関税は完全に撤廃されており,USMCAで新たに関税面での関税恩典が加わるわけではない.それどころか,自動車分野での原産地規則厳格化により,短期的には無関税恩典が享受できない製品が出てくることも想定されている.原産地規則の厳格化は,中長期的には素材産業などのサプライチェーンへの投資を呼び込む効果があるが,初期投資額が大きい分野への投資誘致のためには,法的信頼性の確保が不可欠だと主張する声も大きい.
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◇ビジネス:ニューノーマル

わたしたちは「ニューノーマル」に適応していく必要がある:スンダー・ピチャイが語るグーグルの現在とこれから(前編)
[7月2日,WIRED]
 スンダー・ピチャイは,GoogleとAlphabetのCEOとして様々な課題に直面している:反トラスト法違反や企業方針に対する従業員からの抗議,多様性の実現,新型コロナウイルスの影響など―.本記事ではピチャイが,Googleの“現在とこれから”について,「ニューノーマル」におけるGoogleの在り方について語る.ピチャイへのインタビュー記事(US版)の邦訳.
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◇テクノロジーと偏見

「差別をAIに植え付ける」としてMIT研究者らが大規模なデータセットをネットから完全削除
[7月2日,GIGAZINE]
 6月29日,マサチューセッツ工科大学(MIT)は「Tiny Images」をオンラインから完全削除した.Tiny Imagesは,MITが2008年に作成した画像ライブラリであり,800億枚の画像が用いられている.この画像ライブラリは,「写真」と「被写体の名称ラベル」を結びつけており,コンピュータの訓練に使われる.
 だが,次世代認証サービス「UnifyID」のチーフ科学者Vinay Prabhu氏と,ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの博士課程学生Abeba Birhane氏がこの画像ライブラリについて調査したところ,何千もの画像がアジア系や黒人の差別用語でラベル付けされており,女性を説明するのに不適切なラベルも使用されていることが判明した.このような関連付けが行われることで,Tiny Imagesを用いて訓練を行ったニューラルネットワークに依存するアプリや製品などが,写真や映像を分析する際に,これらの用語を用いる可能性が指摘されていた.
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