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もうすぐ今日が終わる やり残したことはないかい~読書note-13(2023年4月)~

選挙に追われた一ヶ月、いや二ヶ月だった。地元の小中学校、足利青年会議所(JC)の尊敬する先輩である「小林たかひろ」足利市議の後援会(選対)事務局長を務めているので、その4期目への挑戦に奔走した。

選対悲願のトップ当選はならずも、3回連続2位、4回連続3,000票獲得で当選、自分が担当する事務処理も先週終わり、とりあえずホッとしている。他人の人生の懸かった一大事なので、事務書類に不備などあったら大変だと、2月の立候補者説明会時からずっと気が気でなかった。4度目だから慣れてるのだけど。

ただ、ホッとしているのは事実だが、悔しさが日に日に増してくる。トップ当選を目指してきただけに、事務局長としてもっとこうすれば良かった、あそこはもっとこう攻めれば良かった、という反省点ばかりが浮かんでくる。こんな経験を積み重ねて、どこの選対にも必ずいる「優秀な選挙参謀!?」になって行くのかなぁ。本音は、選挙から早く足を洗いたいけど。

そんなこんなで、4月も4冊しか読めず。選挙終わるまで2冊しか読めなかったが、先週1週間で2冊読んだ。本を読める日常が戻ってきたことが、何よりも嬉しい。


1.風に舞いあがるビニールシート / 森絵都(著)

森絵都さんは昨年夏に読んだ「カラフル」以来、市立図書館の芥川賞、直木賞特集コーナーで見かけて、帰りに本屋で購入。「カラフル」より後の作品で、直木賞獲ったのか。帯に「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語」とあるように、自分にとって「大切にしているものって何だろう?」と考えさせられる6編の短編集。

どれも面白いのだが、仏師になる夢破れ、仏像修復師になった「鐘の音」の潔、商品のクレーム処理のため、謝罪に向かう「ジェネレーションX」の健一と石津、外資系銀行から国連難民高等弁務官事務所の一般職へ転職した表題作「風に舞いあがるビニールシート」の里佳と危険を顧みず難民を救うべく戦い続けるその元夫エド、この後半3作品の主人公が好きだ。

特に「鐘の音」は、ラストがタイトルに繋がる壮大な伏線回収、もうたまりません。短編なのに本格ミステリーのようで、主人公・潔のガンコでプライドが高いくせに、臆病なところがまるで自分のようで。近年読んだ短編の中で、3本の指に入るかも。

選挙手伝ったり、今でも色々なボランティア活動をしているのは、表題作のエドのように、飛んで行ってしまいそうなビニールシートを必死に抑えようとしているのかもしれない。


2.鴻上尚史のほがらか人生相談 / 鴻上尚史(著)

市立図書館に用事があって行った時に、ぶらぶらしてたら目に付いたので借りる。冒頭で話したように、選挙で忙しくて中々読書が進まぬ中、寝る前に、一相談一回答ずつ読むのを日課にした。ご存じ「AERA.dot」で人気連載中の劇作家・演出家の鴻上尚史さんの人生相談を書籍化したもので、自分もたまにネットで目にして「良い回答するなぁ」と思っていた。

サブタイトルが「息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」とあるが、この「世間」と「社会」の違いや、「同調圧力」の強さ、「自尊意識」の低さ、「所与性」等、日本特有の悩みが多くを占めていて、それに対して著者の持論や経験をもとに丁寧に回答していく。

鴻上さんならではの回答で面白かったのが、「大学生の息子が『俳優になりたい❗』と言い出して心配だ」という父親からの相談。プロの演出家として俳優のオーディションを40年近くやっていて、一番多いのが「30歳で初めてオーディションを受ける人たち」だと。皆、高校卒業時に俳優になりたかったが親に反対され大学に行った、そして大学卒業時にも親に反対され就職した、でも、ずっと俳優になりたかったが親に反対されると思って会社を辞めれなかった、ようやく30歳になったら親の反対など気にせず、自分のやりたいことをやろうと思いたち、オーディションを受けたと。

鴻上さんはそんな時いつも内心、「どうしてもっと早くオーディション受けなかったの?」と溜め息をつくと。18歳や22歳で俳優を目指し、ダンスレッスンをしたり、発声のトレーニングをするのと、30歳から始めるのでは、プロの俳優になれる可能性がウンと違うと。

我が長男が大学でお笑いサークルに入った時、そのまま、もし「お笑い芸人になりたい!!」と言っても、反対しなかっただろうなぁと。鴻上さんの話を聞いて、その考えは間違いではなかったと。お笑いとは真逆の公務員になってホッとしてるけど。


3.アンと青春 / 坂木司(著)

先月読んだ「和菓子のアン」が凄く面白かったので、早速続編を購入。前作でも主人公・アンちゃんが成長していく過程を楽しめたが、第2弾もデパ地下の和菓子店「みつ屋」の販売の仕事にも慣れ、更にお向かいの洋菓子店の男性店員さんという新たなキャラも登場し、悩んだりときめいたり!?しながら、今回も様々な謎を解いていくアンちゃん。

今やスマホで何でもググれば直ぐに答えがわかる時代だが、アンちゃんは自分で必死に考えて答えに近づいていく。そして、ググっても直ぐに答えが見つからない、「和菓子の世界」の特殊性(専門性)と奥深さよ。本格ミステリーならぬ「ほの甘ミステリー」が何とも心地良い。

そして、表題に「青春」とあるので、お向かいの店員「柏木さん」と親しくなることで、みつ屋の乙女系男子「立花さん」との関係がギクシャクしたりと、その辺りも今回の見どころ、いや読みどころだ。

自分と妻の関係も、もう「甘酒屋の荷」なのだろうか。あぁ、考えるのはよそう、明日柏餅でも買って食べよう。


4.クスノキの番人 / 東野圭吾(著)

殺人事件が起こらずとも、次どうなるか気になって、一気に読んでしまう。やっぱ東野圭吾は凄い作家だ。今作品はいわゆるミステリーとは違う、帯にも書いてある通り、「秘密」「時生」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の系譜の「感動エンターテインメント」作品だ。著者本人が「小さな奇蹟を時々、無性に書きたくなります」と言っているように。

不遇な人生を送っていた主人公・玲斗が、罪を犯し逮捕された時に、救世主(伯母と名乗る千舟)が現れ、助けてもらう代わりに「クスノキの番人」を命じられる。千舟が顧問を務める企業グループが所有・管理する神社の大きなクスノキ、その木に祈れば、願いが叶うと言われている。

昼間は神社の境内を掃除し、夜になるとクスノキに「祈念」(祈祷や祈願ではない)をするために、予約した者が神社を訪れ、その対応をするのが大事な仕事だ。千舟からは「祈念」の詳細について、「番人を続けて行けば、そのうち分かる」と一切教えられず。だが、「佐治さん」という一人の祈念者の行動をその娘・優美と探っていくうちに、少しずつ色々なことが分かり始めてくる。

非情にスピリチュアルな話だが、自分は割とこういう類の話は信じる方だ。自分が好きな「時空を超える」というか「時を繋ぐ」話だし、つい最近見た鬼滅でも「記憶は遺伝する」なんて話が出てきたし。もし「祈念」が出来るのならば、息子達に…。だって、死ぬ間際に「もう、やり残したことはない、悔いのない人生だった!!」なんて、言える人生送れそうもないもん。

選挙だけでなく、今潰れそうな会社のことも、「あぁもっとこうしておけばよかった」と後悔しかない。そして、妻とのことも。

鴻上さんの相談じゃないけど、もし今就活中の次男が「やっぱ、YouTuber(例えばね!?)になりたい!!」と言い出しても、応援したい。後悔するより、今の自分がやりたいことに挑戦すればいいさ。

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