マガジンのカバー画像

奇妙な味の短編

17
奇妙な味の短編を集めてしまった。
運営しているクリエイター

#孤独

無言の返事

「ただいま」
母は死んでるのでもう答えない。
「おやすみ」
父も死んでるのでもう答えない。
生きているときから返事はなかった。
両親と入れ違うように喉の手術は成功して声を取り戻した。

やっと発声できるようになったのに無言で答える部屋は死んでいるようだ。

もう一度「ただいま」と私はいう。
もう一度「おやすみ」と私はいう。

二人二体

二人二体

少女は自分を成長させるように人形も育て始めた。

母に見捨てれた日に与えられた人形は手のひらに乗るほど小さかった。

少女のほうは何時なんどきもその人形を手離すことはなかった。

握りつぶさぬように、手離さないように、起きているときも寝ているときも人形は少女の小さな手に繋がれていた。

誰も気づかない速度で徐々にだが確実に人形は育ち始めた。

少女の手から吸い出された思いは人形の中に充満していって

もっとみる