それでもオフィスに行く理由(4/7)
4.組織活動を可視化する
仕事の分散が進み「可視化」は不可避
以前、オフィスに行けば、会社全体の様子がわかりました。
オフィスに並ぶ机の上をながめれば、仕事の忙しさはどの程度か、そして本人の性格の一端もうかがい知ることができました。
しかし、テレワークの普及で「全員毎日出社」という慣習がなくなり、出社するワーカーは一部になりました。出社率が低下したことで、固定席が廃止される代わりにフリーアドレス制が採用され、個人の所有物はロッカーに収められているので、そんなことを知ることはできません。
オフィスの変容も劇的ですが、それだけではありません。
オフィスと自宅に仕事場所が分散し、ZOOMやビジネスSNSなどのツールが普及して、デジタル空間にも活動場所が拡張し、いよいよ組織全体を見渡せる場所がなくなっています。
このように、二重の分散(テレワーク、デジタル空間)に伴う全体の見通しの悪さは、円滑なコミュニケーションを阻害し、組織の一体化を阻みます。
このため、見通しがきかなくなった組織活動を、「可視化」することが重要な課題になりました。
こうした背景から、「可視化ツール」が次々と登場しています。
身近なメンバーを中心に「誰が」「どこで」「何しているか」を可視化することで、組織活動全体が想像しやすくなり、ワーカーが自宅で仕事していても仲間や同僚、組織全体の気配を感じられるようになります。
WHERE社の「EXOffice」や、Beacapp社の「Beacapp Here」は代表的なオフィス可視化ツールです。
オフィスのデジタルツイン
こうした中で、オフィスには新たな役割が求められます。
すでに人は分散して仕事しています。このなかでオフィスは、相対で行うべき仕事が集中的に行われる場所になりつつあります。
その価値の高い仕事は、可視化ツールによってオープンになり、会社全体として共有されます。
こうした仕事を巡る再編劇の中核に、オフィスが位置づけられます。しかし、そのオフィスは従来のオフィスと全く異なる存在です。
物理的なオフィスも人と人が出会う場として重要ですが、その裏側に、物理的な状態をデジタルで可視化するデジタルオフィスが双子のように存在しています。
つまり、オフィスのデジタルツインこそが新たなオフィスの姿です。
仕事の中心、企業の中核に物理的なオフィスが座る。分散して仕事する多くのワーカーはそれを可視することで中心を共有するという構図です。
次は、「それでもオフィスに行く理由」の続きで「5.孤独・孤立を解消する」を上げる予定です。
(丸田一如)