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それでもオフィスに行く理由(6/7)

1.集合した方が効果的な仕事がある
2.「図書館の勉強」効果
3.時間管理の効率化
4.組織活動を可視化する
5.孤独・孤立を解消する 1/22/2
6.帰属意識の醸成
7.会社の顔(象徴)となる
7+1.似て非なる「デジタルツイン」オフィス

6.帰属意識の醸成

親密さの喪失と帰属意識低下

前回は「孤独・孤立を解消する(5/7 ②)」で、ワーカーが獲得した自由に対する相応の責任について考えてきました。
今回は、分散のもう一つの弊害である「親密さ」の喪失について考えたいと思います。

「全員毎日出社」という習慣は、会社のなかに大家族のような「親密さ」を作り出していました。
そして、その「親密さ」を前提に、企業は組織ルールを作り、オンボーディングやトレーニングを行い、チームをマネジメントして企業活動が進められてきました。

ところが、テレワークが進み、全員毎日出社の習慣がなくなり、そして終身雇用制も薄れることなどで「親密さ」が希薄になりつつあります。
会社での飲み会が敬遠されるようになり、次第に皆が「親密さ」がなくとも仕事が成立することを理解しはじめています。

静かな退職

しかし、「親密さ」が希薄になることが、会社への帰属意識に影響を与え、帰属意識の低下は、企業の成長に大きな障害になります。

最近、「静かな退職(quiet quitting)」という言葉が話題になりました。これは、在籍しながらも契約通りの仕事だけを淡々と行い、退職したかのように振る舞う働き方を指しています。

「静かな退職」までいかなくとも、仕事効率が落ちていくのは、「親密さ」を失い帰属意識が低下している現状では、ある程度仕方のないことかもしれません。

親密さに変わるエンゲージメント

ところで最近は、「帰属意識」を「ロイヤルティ(loyalty)」ではなく、「エンゲージメント(engagement)」と読み替えるようになっています。

ロイヤルティは、「愛社精神」のように企業にワーカーが忠誠を尽くすイメージがありましたが、エンゲージメントは、ワーカーと企業の結びつきのことを指しており、両者は対等の関係です。

エンゲージメントが低下すると、ワーカーは仕事のやりがいを失うとともに、職場の人間関係も希薄になり、企業とは給与だけでつながる状態に陥ります。まさに「静かな退職」の状態です。
そのため、企業にとって、エンゲージメントをいかに維持、向上させるかが新たな課題であり、働き方改革の本丸です。

ニューノーマルな社会とは分散型。無条件に集合することで得られていた「親密さ」に頼らないで、帰属意識を回復させる方法とは、このエンゲージメント向上に他なりません。

エンゲージメント向上とオフィス

エンゲージメントを高める方法は、いくつも提唱されています。
ここでは詳しく述べませんが、大別すると「企業の存在理由や価値を理解すること」であり、「働きやすい環境」であり、「円滑な人間関係」といわれています。

そして、オフィスには、エンゲージメント向上、特に、「働きやすい環境」や「円滑な人間関係」を実現するための道具という新たな役割が与えられます。
しかし、働きやすい環境、あるいは円滑な人間関係は、定量的に把握することは難しいことです。そのためエンゲージメント向上の効果検証には時間がかかります。

そこで、オフィスには、エンゲージメントについてモニタリングを行う役割が期待されます。物理的空間における人の位置や状態のセンシングから得られるデータに加えて、定期的にワーカーの満足度や快適度といった評価データを収集し、これを構造的な分析することで、エンゲージメントの傾向をある程度、定量評価することができます。

オフィスは、デジタルツインに変容しつつあります。新たに加わったデジタルオフィスでは、帰属意識(エンゲージメント)をはじめとした理解の難しい情況のモニタリングを行い、企業組織の健康状態を把握するという新たな役割が与えられつつあります。


次は、「それでもオフィスに行く理由」の続きで「7.会社の顔(象徴)となる」を上げる予定です。
どうぞよろしく。

(丸田一如)

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