【洋服屋の未来⑥】ファッションと言えば洋服と考えているならば業界に未来はない。

最近ヒシヒシと感じていることがあります。

みんななぜこんなコンクリートの建物の密閉空間の中で消費を繰り返しているのだろうか?

百貨店やショッピングモールなどで沢山の洋服が売られていますが、実店舗=器のあり方はこれまでと同じでいいのでしょうか?

コロナ禍を機に立ち止まって考える必要があるのは誰もがわかっているとは思いますが、出口はどこにあるのでしょう。

資本力のある大手アパレルは、遅ればせながらD2CやEC販売の強化に取り組みはじめました。売上が激減する中、新しいビジネスモデルも模索しながらの経営はイバラの道です。果たして旧態依然とした会社が答えを見つけ回復するメドをつけることができるかどうか見ものです。

さて、こんな混沌とした中でどうするべきか私なりに考えがあります。所詮田舎のアパレル人の意見など実効性に乏しいと思うかもしれませんが、参考までに読んでみてください。

最も大事なキーワードは「世界観」

世界観?漠然としているのでなんだと思いますが、今後のアパレル業界を考える上で不可欠です。

解説しましょう。

これまで、アパレル業界は実店舗を作る時、百貨店やショッピングモールの中の器を第一に出店することが主流でした。百貨店においては、スーツコーナーやキングサイズコーナーなど商品を陳列するだけの平場のケースもありました。ブランドのコンセプトなどまったく関係なく販売する場所を確保しただけのものです。

それは洋服が過剰供給されてはいない時のビジネスモデルであり、今日のように洋服が有り余る状況下ではまったく魅力がないものです。こじんまりと区切られた空間に付加価値を感じ、ワクワクするような高揚感をおぼえる人はもう既に少数派なのではないでしょうか。

そもそもファッションは、洋服や服飾に特化したものではないと思います。本来は、音楽などの文化を含め生活そのもののライフスタイルまで範疇に入れて考えるべきもの。よってブランドは、そのコンセプトを洋服だけでなく生活そのものにまで広げて提案する必要があるのです。

従来のブランドの中では、

ラルフローレンの表参道店
https://www.fashion-press.net/news/44856

ダンヒルの銀座店https://apparel-web.com/news/apparelweb/76424

無印良品の銀座店
https://shop.muji.com/jp/ginza/

などがライフスタイルファッションに踏み込んだ例と言えるでしょう。ここ数年ようやくその考えが広まってきました。しかしまだ十分ではありません。中途半端に終わっているブランドも多い。ライフスタイルファッションと言っても、洋服と雑貨や家具をおいて、カフェを併設させればいいと言う訳ではありません。そのブランドの世界観をどれほど表現できるかがとても重要で、日本ではまだその理解が浅い企業が多いのが実態です。

もちろん、百貨店やモールの一部のスペースでは限界があるのは当然なので、いわゆる路面店の形となるでしょう。現実的に、銀座や青山などの東京のホットスポットでその世界観を演出できるのは限られたブランドのみだと思います。

じゃあ無理なのか?

個人的に、全てのブランドが都心の一等地に実店舗を構える必要はまったくないと思います。と言うより、都心の一等地が世界観を演出する場所にふさわしいブランドなんてむしろ限られているのではと思っています。

もしかしたら、ブランドの世界観を表現するにふさわしい場所は、百貨店でも、モールでも、銀座でもなく、郊外の森の中や海岸にあるのかもしれません。

そうです。空気が美味しい、マイナスイオンいっぱいの場所や潮風がなびく波音が心地よい場所が最適かもしれないのです。近年ロンハーマンが逗子に店を構えました。ある意味ひとつのパターンだと思います。https://www.wwdjapan.com/articles/256763

しかし、サスティナブルやD2Cの概念が入っているものではありません。従来のセレクトショップの範囲に留まっています。今後アメリカではなく日本のアパレル企業がそのような消費者目線の新しいビジネスモデルに積極的になってほしいと思います。それぞれのブランドが世界観を大切にし、より臨場的に感じられる空間を創ってライフスタイルファッションを提案をしていくことが、今後のアパレルにとっての未来だと確信しています。

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