千夜一夜しろ

俳句、短歌、詩、小説などをやっています。 書き物中の人や状況、設定は、 匂わせではなく…

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俳句、短歌、詩、小説などをやっています。 書き物中の人や状況、設定は、 匂わせではなく、 ただの偏愛するfictionです。 転載およびリンクの際は、作者名千夜一夜しろの旨お書き添えください。

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かすかな

ふるさとのなまりなつかし新幹線のワゴンのおねえさんコーヒーをひとつ 会社にいくひとと分かれてすすむ新大阪で 人混みがごった返してビビる京都駅はピカピカのガラス製 ミューズ来た薬用石鹸じゃない方 雪稜や窓閉めなさいと声あちら らむううるに包まれ急ぐツリー下のとこ 離れ雲近くに見えてまだ遠し 泥と花の矛盾を平気で持つ世界、の両手 に包まれてそっと (カノン)パッヘルベルの腹に響くは秩序としじま おかえり

    • 現代俳句 連作

      卒業と文字の泣いてる窓ガラス 朝の鳥鳴き交わしおるひかり無遠慮 ミルク跳ね王冠となる栄えあるらむ 車窓の雪原ミルククラウンうずまれり レールの音に卒業の二字雲りゆく 窓に書きし文字のみぞ泣く透明 瞳には表面張力で浮かせてるきみはピエロ 表面張力こぼるるは窓の水滴、と、

      • milkの王冠⑶

        揺れと暑さで眠気が来る。 かつて慣れ親しんだききすぎの暖房のせいだ。 窓が白く曇っている。 そこにいたずら書きをするのは、小さな子供が古今東西かならずやることであったろう。 まあ、大人なら、外の様子を見たいと思ったら、曇りガラスを適当な大きさに拭いて、のぞき窓をつくる。 すぐに消えるものだ。どんなに窓を拭いてこすっても、またじきに暖かさで曇って、外が見えなくなる。 いつからそこにいたのだろう。 札幌から乗車したときにはいなかった、制服にピーコートの女の子二人組がい

        • milkの王冠(2)

          桜の樹の下には屍体が埋まっているのなら、雪の下にはさしずめ、きらきらしい生が埋まっているのだろう。(だって阿寒に果つでは小生意気な女子高生画家が死んだくらいだし。彼女の死が生でなくてなんなのだ。)生きている側は、自分がとても生き生きと生きているなんて、思いもしないのだろう。 なんて考えながら、電車に揺られている。JR北海道のエアポート行き路線。ビル群のひしめきあう界隈を過ぎて、周辺にあるベッドタウンの住宅の屋根もまばらになってやや少し経ったころに、、忽然とあらわれ来る田園地

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        • 1分で楽しみたいひと用
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        記事

          短歌と文「 せぼね 」

          女子という記号からはみだすゆるふわカール 履き初むるハイヒールの下まだ硬い ヒール部にわたくし性を隠す サークルの勧誘の列をかき分けながらまあたらしいヒールの下に隠しているもの 笑ってるきみのまなこのその奥のかすかな硬い鉱物のひかり 王子さま糸つむぎ上手い姫をもとむそれ意味あるのかい トムチットトット unconditional loveがほしいといいだせば姫のしあわせ崩るる音のす (当てられるものなら当ててみよ)うっかりものの悪魔の名前のその奥の名など  トム

          短歌と文「 せぼね 」

          定型外短歌

          がんばって やればできるよ 元気でね 定型文のなかで生きる友をさびしむ いらっしゃいませあたためますかまたどうぞ定型文の、定型部 定形外のきみを好いとう僕なれどきみは必死で定型よそおう 放課後のおしゃべりは鎧 定形外のヒール部の中に背骨をかくして 桜の下で犬が寝ている えんぴつとシャーペンの音がさらさら 靴のおわりの接着部かかとと地面のあいだのヒール部の宙にういてる7センチのなかに背骨をかくして歩いています

          定型外短歌

          通勤電車より、OLレポート

             OLのみなさんこんにちは。  サトウチヤコ(仮名)のOLレポートです。  電車の中ででも暇つぶしに読んでね。  名前の下に役職名をつけるのってすごい変なかんじがしたんだ。でもそれにももう慣れたよ。  最初会社に入った時、なんでみんな疲れたカオしてんのーってびっくりしたんだ。  目線じっと動かさないでカラ元気でしゃべってんのね。すごい変だよ。なんでそこまでして働くのって思ったけど。  いまはあたしそんなカオで働いてんだろうなと思うよ。     ■   電

          通勤電車より、OLレポート

          時計の絵ばかり描いている

          (あるおじいさんより伝言) 最近時計の絵ばかり描いているんです。 ばあさんの古い抽斗からでできた、セミハードの折れたパステルで。 そっと指でぼかすと、見慣れた楕円の、振り子の、八角形の、それぞれの時計が再現される。 時計はいつも見ていた。部屋の風景に馴染んで、なんら特別なものと思ったことはなかった。 ですが、その時計が壁にかかっていたある一時期に、いつも見ていたものだったんですね。 ごはん、テレビ、送り迎えやパスタの茹で時間、出発までの何分かや、長電話にしかめっつ

          時計の絵ばかり描いている

          milkの王冠

          crownかclownか Lはピエロ。Rは王冠。 一文字違いでこんなにちがう。      ■ 鳥のさえずる声で若干うんざりしながら目が覚めた。 もう日差しは強くカーテンのわずかな隙間からまっすぐに射る。 鳥ならぬこちらはまだ眠いのだ。 誰もが朝型の生活をしていると思うなよ、と鳥のやつに悪態をついてみるが当然通じはしない。窓の外で、楽しげだ。食って寝るだけの生を満喫している。などと思うのは人間の思い込みかもしれないが。    ■ 遅い朝食はシリアル。新商品のベリー入り

          てのひらに重し檸檬のレモン色

          てのひらにおもしれもんのれもんいろ こんな世界を爆破するための 爆弾 にもならない檸檬を手に 鮮やかすぎて もう この屈託は。 その重み その重量 その冷たいでこぼこした手触り。

          てのひらに重し檸檬のレモン色

          冬眠は黒き丸き点あとは白

          あしたから社会が動き始めるという地域の方も多いと思います。 そんな折ですが、冬眠の気持ちをupしてみました。 雪一色になった外界に耐えるために、 目を閉ざして、 ねむるしかない。 そしてそれは、けして不幸なものではない(はず)。 ついでに胃袋も、活動停止。 すべての感情も、ねむらせて。静かな世界に入り。 無だけど、ほんとの無じゃない。 しんと、丸まって、白い世界をやりすごし、ほんとの春を待ちます。 inspired by 草野心平で以前につくったものですが

          冬眠は黒き丸き点あとは白

          曙の子

          大きな重たいドアから細く漏れる灯りは眩しかった。 隙間から見えるリノリウムの床に反射して白い。 ステンドグラスの色とりどりを擦り抜けて、光たちが着地して整列した。 赤、青、ばら色、黄色に、緑。めいめいが、お前の顔は赤過ぎるだの、そっちこそ、変な色だのと、たわいも無いことで騒いでいる。 ステンドグラスには神話に類する逸話が描かれてあった。三賢人が現れた場面のようであった。 椅子の上に着地したやつは、お爺さんが隣の席からはみ出させている膝に登ろうとして滑っている。 歌

          デュラスは言った

          「まだ書いていない本と一緒にいるのはつらいことよ」とデュラスは言った。 M.Duras。現在はモンパルナス墓地に眠る。閑静な公園みたいな、明るい美しいパリの墓地だ。 本名のM.ドナデューと刻まれた平たい墓石の上には、ファンからと思われる万年筆やペンが大量に供えられ、絶えることがない。いや、年々増えている。 日本ならば菊の花や、故人の好物を供えるところだ。 それが万年や筆ペンって。文章の上達を願ってだろうか。 それでは天神さま菅原道真ではないか。 学力上昇をねがって

          デュラスは言った

          un amour

          家族とう蜃気楼に抹殺されて君は愚か 君の夢が消えるまで

          眠るリラ 眠るさくら 眠るにくほね の上にねむる ひとびと

          引っ越してきたばかりの土地を歩いていた春です。 * どんな土地にもむかしがあって、 むかしむかし誰かが住んで暮らして、つまり生きて愛して死んだりしていた。 太古のむかしからのところだってあるし、人が住むようになってうんと短い、ほんの数十年、もしかしたら私がしらないだけで、もっと短いようなところだってあるかもしれないけれど。 それぞれの場所で歴史があって、 歴史というにはあまりにささやかな、過ごしてきた時間なんかあって、 ひとやその他 生き物が生きてきた。 つま

          眠るリラ 眠るさくら 眠るにくほね の上にねむる ひとびと

          芍薬やかたきつぼみのかたくなに

          芍薬の季節です。 小さくかたく丸まっていて、とても開きそうにない緑のつぼみが、 あんなに、あんなにも幾重にも重なるふわふわの花びらを身につけて、つぼみの何倍にも大きく花開くなんて。 お化粧、長いよ、と言いたくなる。 星の王子さまに出てくるあのワガママな薔薇の花だってビックリだ。(つぼみの中で化粧してからでてくるやつ。) しかも時々咲かないし。 あーワガママ。

          芍薬やかたきつぼみのかたくなに