マガジンのカバー画像

New

11
運営しているクリエイター

記事一覧

通勤電車より、OLレポート

   OLのみなさんこんにちは。  サトウチヤコ(仮名)のOLレポートです。  電車の中ででも暇つぶしに読んでね。  名前の下に役職名をつけるのってすごい変なかんじがしたんだ。でもそれにももう慣れたよ。  最初会社に入った時、なんでみんな疲れたカオしてんのーってびっくりしたんだ。  目線じっと動かさないでカラ元気でしゃべってんのね。すごい変だよ。なんでそこまでして働くのって思ったけど。  いまはあたしそんなカオで働いてんだろうなと思うよ。     ■   電

時計の絵ばかり描いている

(あるおじいさんより伝言) 最近時計の絵ばかり描いているんです。 ばあさんの古い抽斗からでできた、セミハードの折れたパステルで。 そっと指でぼかすと、見慣れた楕円の、振り子の、八角形の、それぞれの時計が再現される。 時計はいつも見ていた。部屋の風景に馴染んで、なんら特別なものと思ったことはなかった。 ですが、その時計が壁にかかっていたある一時期に、いつも見ていたものだったんですね。 ごはん、テレビ、送り迎えやパスタの茹で時間、出発までの何分かや、長電話にしかめっつ

milkの王冠

crownかclownか Lはピエロ。Rは王冠。 一文字違いでこんなにちがう。      ■ 鳥のさえずる声で若干うんざりしながら目が覚めた。 もう日差しは強くカーテンのわずかな隙間からまっすぐに射る。 鳥ならぬこちらはまだ眠いのだ。 誰もが朝型の生活をしていると思うなよ、と鳥のやつに悪態をついてみるが当然通じはしない。窓の外で、楽しげだ。食って寝るだけの生を満喫している。などと思うのは人間の思い込みかもしれないが。    ■ 遅い朝食はシリアル。新商品のベリー入り

曙の子

大きな重たいドアから細く漏れる灯りは眩しかった。 隙間から見えるリノリウムの床に反射して白い。 ステンドグラスの色とりどりを擦り抜けて、光たちが着地して整列した。 赤、青、ばら色、黄色に、緑。めいめいが、お前の顔は赤過ぎるだの、そっちこそ、変な色だのと、たわいも無いことで騒いでいる。 ステンドグラスには神話に類する逸話が描かれてあった。三賢人が現れた場面のようであった。 椅子の上に着地したやつは、お爺さんが隣の席からはみ出させている膝に登ろうとして滑っている。 歌

デュラスは言った

「まだ書いていない本と一緒にいるのはつらいことよ」とデュラスは言った。 M.Duras。現在はモンパルナス墓地に眠る。閑静な公園みたいな、明るい美しいパリの墓地だ。 本名のM.ドナデューと刻まれた平たい墓石の上には、ファンからと思われる万年筆やペンが大量に供えられ、絶えることがない。いや、年々増えている。 日本ならば菊の花や、故人の好物を供えるところだ。 それが万年や筆ペンって。文章の上達を願ってだろうか。 それでは天神さま菅原道真ではないか。 学力上昇をねがって

眠るリラ 眠るさくら 眠るにくほね の上にねむる ひとびと

引っ越してきたばかりの土地を歩いていた春です。 * どんな土地にもむかしがあって、 むかしむかし誰かが住んで暮らして、つまり生きて愛して死んだりしていた。 太古のむかしからのところだってあるし、人が住むようになってうんと短い、ほんの数十年、もしかしたら私がしらないだけで、もっと短いようなところだってあるかもしれないけれど。 それぞれの場所で歴史があって、 歴史というにはあまりにささやかな、過ごしてきた時間なんかあって、 ひとやその他 生き物が生きてきた。 つま

un amour

家族とう蜃気楼に抹殺されて君は愚か 君の夢が消えるまで

芍薬やかたきつぼみのかたくなに

芍薬の季節です。 小さくかたく丸まっていて、とても開きそうにない緑のつぼみが、 あんなに、あんなにも幾重にも重なるふわふわの花びらを身につけて、つぼみの何倍にも大きく花開くなんて。 お化粧、長いよ、と言いたくなる。 星の王子さまに出てくるあのワガママな薔薇の花だってビックリだ。(つぼみの中で化粧してからでてくるやつ。) しかも時々咲かないし。 あーワガママ。

はと

鬱屈。散歩をしていても、散歩に出ても、とげとげしているこころ。 うろついているうちにさしかかったのは、子供の遊具があるひろばの隅だ。柵の外に、白く動くものがある。生き物だ。ハトか。白は珍しいな。 小さなふくふくした生き物かそこにいるという思いは、ふっくらとした気持ちにさせた。 愛すべき生き物の存在ひとつで、こんなに救われるなんて。 すぐに気づいた。 ビニール袋だった。 がっかりした。 あったはずのいのちがそこにない感覚。 あるべきあたたかさが無機物だった空虚さ。

星の名を訊ねたし夜更の薬缶吹く

ほしのなをたずねたしよふけのやかんふく そこにあるはずなんです星は。曇ってても空の上に。ゆったり廻っているはずなんです。でもお湯なんか沸かしちゃって。なんかあったかいものでも飲もうとする夜。

強炭酸の泡がゆっくり上がってゆくボトルの中

死にゆくひとの書く記事をみつめる。 このひとの救ったひとと、突き落とした人の数 ぼんやり思ってみる。