眠るリラ 眠るさくら 眠るにくほね の上にねむる ひとびと
引っ越してきたばかりの土地を歩いていた春です。
*
どんな土地にもむかしがあって、
むかしむかし誰かが住んで暮らして、つまり生きて愛して死んだりしていた。
太古のむかしからのところだってあるし、人が住むようになってうんと短い、ほんの数十年、もしかしたら私がしらないだけで、もっと短いようなところだってあるかもしれないけれど。
それぞれの場所で歴史があって、
歴史というにはあまりにささやかな、過ごしてきた時間なんかあって、
ひとやその他 生き物が生きてきた。
つまり、死はかならずあって。
だれかや、なにかの。
日常の延長にあるようなそれだったり、たいへんな惨禍を伴うものだったり。
それぞれだけれど、
死のうえになりたっていない地面なんかなくって。
逆に言うと生のうえになりたっていない地面なんかなくって。
過ぎ去ってしまった感情も 消えてしまった存在も 土はさらさらと淡々と包むようにきっと覚えていて。
*
土の持つ記憶なんてものから遊離したようにさえ見える、のっぽなコンクリートのビルディング。
そういうのなんかのなかでねむっているひとびと、でさえも、
そんな 記憶を持つ地面のうえでねむっているのだなあと思いました。
つまり、わたしたちみんな。
眠るリラ 眠るさくら 眠るにくほね の上にねむる ひとびと
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