現代俳句 作品集 １２ 〜春の滝〜

「 春の滝 」
～現代俳句集〜

百吹いて夕ぞらひとつしゃぼん玉

研ぎといで鉛筆画家よ木の芽どき

ねむらせておけねこの子と浅間山

鳥かえる空にもみちがあるように

人びとはあゆみをとめず彼岸西風

蝶また蝶ブルーベリーの花ざかり

侵攻といちりんの黄のたんぽぽと

たんぽぽ吹く表も裏もある路地で

アフリカ象アフリカ知らず春の雪

◇

花虻につねにいちりん揺れやまず

チューリップ故郷をしのぶ異国人

ふりあげてへいわのくわよ畑打つ

せんそうをじだいおくれにして桜

ともに行くこころひとつよ鳥雲に

一人静咲けばかまくらものがたり

できることいたく少なく花種蒔く

きこえくる和歌よ囃子よかざり雛

生きてみせまた死んでみせ涅槃仏

◇

はるの鐘ときにへいわの鐘となれ

難民のにしへにしへとかげろうか

都市の空はるばると越え黄砂降る

かまめしよまるごと一尾さくら鯛

咲きのこる一つ二つよわすれな草

川の瀬もしろじろとして雪解けか

ゆうぐれてぴたりと静よ雪やなぎ

はじけてはいまを昔にしゃぼん玉

雁かえる北はさびしくうつくしく

◇

うぐいすよ鳴く程にまた鳴く程に

灯台よ瀬戸いっせいにはるのくれ

平和デモ路じょうに残る雪踏んで

ひとすじよこだまの奥にはるの滝

摘む指も夕映えているつくし野よ

おおさかにいてしずかさよ春の雷

街じゅうのネオンともども朧の夜

さす傘につもりつもらずぼたん雪

家いえよいちおくにんにはるの月

２月２０日〜３月１４日

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