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現代語 俳句集 〜200句〜


現代語を基本にした、現代俳句集です。

現代語・現代仮名づかい・現代的切れ字を基本にして詠んだ句を集めました。

現代俳句 作品集 〜700句〜

の句の中から、短篇として200句を選出してまとめました。

お時間があるときにご覧になってみてください。

下記の古典語や歴史的仮名づかい・古切れ字を使っていないことなどもご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・し・き・等々

※作品はすべて既発表句です




現代語 俳句集
〜200句〜

◇ 春の部 ◇

つぎつぎとそら染めてゆく紅梅か

伊勢神宮おおきな春の日だまりに

木々の芽のひとしずくずつ雪解よ

大ぞらを描いている画家春が来る

おおごえで売っているのは春告魚

さんじゅうは咲きでてくるか庭椿

コンビニがうつくしい夜ぼたん雪

北を見ればどこまでも北鳥かえる

ふるさとにふるさとが咲く白梅よ

家族写真とおいむかしの春のまま

凧の空この村はまだだいじょうぶ

じんるいのゆめのはじめの畑打よ

かがやかに少女嘘つき木々芽吹く

イヤホンにぽんと触れれば春の歌

草もちのよくのびてこそひとり旅

かもめとぶ沖にまで春およんだか

ひと吹きでもう晩年よしゃぼん玉

春満月そうつぶやいてしまうほど

飾り雛流行りやまいもなんのその

海女ひとりふたり歴史の波の間に

鳩の空いのち見あげるあたたかさ

しずかさよまわりにぎわう花の宴

おんならのきょうがふぶくか花衣

どの人も花とふぶいていることよ

無になってながめる花よ花のなか

花見してはるばると時こえゆくか

ふるさとの山ふるさとの山ざくら

八重桜世がながながとあかるいぞ

じんるいのゆめのはじめの畑打よ

あかん坊がはっと泣きやみ春の雷

旅びとをとおくへつれてゆく春か

むこうに富士むこうに筑波草の餅

オカリナか山河にひびく春のおと

千ねんとむきあう京ののどかさよ

春ショール天の香久山とおく見て

地球から借りたからだで野に遊ぶ

変わらずに変わりつづけよ春山河

そのはてにわらいがでたか卒業生

世をつつむはるゆうやけの安心が

ロケットが飛びたった空まさに春

ライオンが恍惚といるのどかさよ

おぼろとはこの世のことか歓楽街

この町よ春そのままにコーヒー店

マンションの春灯やがて星のなか

風になること雲になること遍路杖

歳月を忘れながらよたんぽぽ吹く

豊じょうのゆめひとにぎり春の土

路じょうでも屋じょうでもよ春茜

今日までのじんせいすべて春の月

ほしぞらよちきゅうひとつが遠蛙


◇ 夏の部 ◇

明あかとあけてゆく世の赤富士か

鯉のぼりあおい山河をおよぐ日よ

咲きみちてあじさいいろの鎌倉か

なんという空のひろさよ田植あと

いち族の写真いちまいほたるの夜

降りしきる音のおもさよ梅雨の家

おおぞらをとおくきよめる風鈴よ

若草か野はらから立ちあがるひと

顔あげていた夏ブルーインパルス

遠くからながめる富士の涼しさよ

そのなかに揺れるみらいよ香水瓶

寝ころんでうちゅうに一人夏座敷

目つむれば閑のせかいよ蝉のこえ

日本じゅうおなじじだいを夕涼み

おのみちは会釈の町よせみしぐれ

家二軒ひびきあうかにふうりんよ

衛兵がすっくすっくとあるく夏至

ハンモックわかる地球の大きさが

地の声よ刈ってもかっても夏の草

聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ

富士の山すえひろがりの涼しさよ

京ふうりん一代ごとのものがたり

この世から消えてもきえず京の虹

すずしさのまんなかにたつ銀閣か

蓮いちりんいのり代表するように

通天閣おおさかいちのすずしさよ

縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ

しずかさをひびかせている風鈴よ

せんねんがきこえくる寺蝉しぐれ

草笛は吹いてこそ野は晴れてこそ

人として梅雨のなかゆく熊野古道

故郷までつらなって山ほととぎす

これ以上踏みいらず山ほととぎす

そのはてに都市いくつもよ夏の河

飛びこんでちいさなしぶき太平洋

平およぎ海をひらいてゆくことよ

とびうおが飛んできらきら一億年

八雲立ついずも八重がき虹ふたえ

かぶと虫角振りながら生まれるか

麦笛よあしたへつづくじんるい史

やわらかに日焼を洗いながす手よ

一人一人孤独でアイスコーヒーで

ひまわりに凝縮されるいちにちよ

いちぞくとそらへだててよ夕涼み

ひとびとがうつくしいのは祭の夜

のれんかけて時ながれだす鰻屋か

ケルン積んで山のむこうも青い山

人類のまつえい一人キャンプの火

火の歴史明るく暗くキャンプの夜

うちゅうにもある物語ふうりんよ


◇ 秋の部 ◇

大ぞらのどこからとなく小鳥来る

スカイツリー空新涼ということか

秋風鈴かぜになりつつあることよ

野菊摘む天地のことば摘むように

月を見て三日こころのしずかさよ

しずけさのきわみに夜の団扇置く

なにもかもひかりに消えた原爆日

原爆ドームその日を語り続けるか

よさこいの踊子としてひるがえれ

たましいが呼びあってこそ迎え盆

生きわかれ死にわかれてよ盆の月

そのしたにかおかおかおよ大花火

あかるくてこの世あの世の大花火

どのひともいつか灯となる流灯よ

ひとり行く花野いつしか夢のなか

つぎの代つぎの代へとばった飛ぶ

赤とんぼどれも夕陽ののこり火か

さまざまななやみのこたえ朝顔よ

ほんとうはしずかな地球虫のこえ

にわにすむこおろぎも子々孫々と

生きること死ぬこと天の河のした

たなばたよ恋でさかえてきた地球

ほがらかにわらいだすのが今年酒

自転車のひとりひとりがあきの雲

空よりもしずかに銀杏散ることよ

手にすくう近江のけしきみずの秋

たかだかとこころがのぼる名月よ

また一人あかるみに出て十五夜よ

応援団長天よりたかいこえをだせ

ずっしりとあきのそらとぶ熱気球

あきの雲旅はなににもこだわらず

親のことおもいはじめる十六夜よ

フライパン火にかけどおし豊の秋

中年の笑顔くしゃくしゃぬくめ酒

住む街が問いかけてくる秋の灯よ

ひとり来てひとりのままの秋の浜

京よりも奈良のふかさよあきの色

ほんもののひびきか奈良の秋の鐘

虫鳴いて生死の果てのかぜのおと

船に風まったくもってさわやかよ

たくさんの船たくさんの秋の暮れ

百ねんは生きていられず草絮吹く

なが生きの幸よ不幸よけいろう日

すすき原ふりかえってもすすき原

露踏んで西へひがしへじんるい史

ゴスペルにブルースレゲエ長い夜

じぶんへのいのりしすかに星月夜

待たされて月スクランブル交差点

にっぽんのおおかたは山虫のこえ

夜顔よかたりつがないものがたり


◇ 冬の部 ◇

冬かもめ花咲くように飛びたつか

つむじかぜそのままそらへ神の旅

一日をまっしろにしてしぐれるか

たい焼きとかわりつづける日本と

くじらゆくはてない海の淋しさよ

目つむってこたつは心羽ばたかす

ゆくみちのままにそだてよ七五三

さいげつをながめ見てこそ大枯野

ふたとって鍋ぐつぐつとにほん海

踏みしめてひとりのおとの落葉道

ちんもくが初雪になるふるさとよ

てのひらへなんどきえても雪の花

はつゆきよ筑波は筑波富士は富士

湯ざめして星がかがやきだす故郷

ほしぞらよ砂浜にあるくじらの死

町じゅうがおおひなたぼこ鎌倉よ

五重の塔しぐれていても静かさよ

この星をあたたかくするしら息か

コンビニの一灯ふゆにまむかうか

ボイジャーは今どのあたり冬銀河

さいげつをみおくることが落葉焚

また一人湯をぬぎすてて冬至風呂

おでん酒自分が見えてくることよ

どのひともうしろすがたの年末よ

釣鐘は打つもの雪はたまわるもの

あおぎみるひとりひとりが雪の花

嶺に雪死ぬも生きるも身をもって

さいげつよ押し黙るとき年の暮れ

ゆったりとたどりついたか大晦日

一人一人世にあらわれて初日の出

踏みひらく一歩いっぽよ初もうで

しんねんをおおきくひらく朝刊よ

てっぺんに富士あるそらよ正月凧

このためのさんぽだったか福寿草

焼き芋屋この世のひとはすべて客

ヘッドフォン雪舞う空の静かさよ

だれひとりたどりつけずよ寒夕焼

とおい島寒ゆうやけとともに消え

プロキオンカペラシリウス庭焚火

あかるさよはるかに滅ぶふゆの星

顔あげて地きゅうもろとも冬銀河

寒がらす人の世もっとさびしいぞ

焚くひとも落葉も地球しずけさよ

母というひかりがそこに日向ぼこ

あかん坊の這い這いの旅春まぢか

ロボットがひょこひょこ歩く春隣

いちりんの冬のすみれの一途こそ

ひとひらのふたひらのゆめ風花よ

せつぶんのまめのちからか百一歳

探梅の目がいっせいに見ひらかれ


いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


改訂日
2021年12月17日





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