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3行日記(卓球大会、山葵、セクシーサンタ)

十二月十日(日)、晴れ。

朝、卓球大会に参加する妻の応援へ。バスに乗って二十分ほど、川の近くにある広い運動公園の一角にある体育館。体育館の二階の手すりに、学区の名前の旗が下げられている。妻はダブルスで出場した。昨年の大会に参加していらい、一度もラケットを握っていないとは思えないほど、サーブもレシーブもきちんと返せていた。団体戦の最後の試合は、うちの学区が七十代くらいに見えるおじいさん、相手は二十代後半か三十代前半くらいの男性、年の差の戦い。おじいさんは足腰こそ弱って膝が曲がらず、ほとんど足を動かせないものの、なぜかスコアを見ると点を重ねて、最初のセットをものにしてしまった。見ていると、相手のミスだけでなく、なぜか手元に吸い寄せられるように球が返ってきて、迫真のスマッシュというわけではないのだが、手首のスナップを効かせた鋭い球が的確なコースにズバンと決まった。

昼、そのまま歩いて淀へ。競馬場のファンが通う老舗の定食屋へ。おねえちゃん乗ってる馬、まなみちゃん、おれ応援してんねん。店主のおじさんがそう言うと、カウンターを陣取る若い女性が返す。どうかな、ちょーっと勝つには厳しいなー。まあ、お父ちゃんの金やから、好きなの買うたらええやん。店主が続ける。やけどあの子、まなみちゃん、人気あんで。前に行ったら勝てる。逃げと先行や。やけど追い込みはあかん。後ろからは無理やねん。追い込みは無理やねん。まなみちゃん。女王までいったらうれしいで。カウンターの裏で店主を支えるお母さんが、昼飯なのかパックの寿司をおもむろに開けて、脇に添えられた山葵の封を切って親指でむにゅーっと押し出して、寿司の上にべったりと塗りつけていた。

その足で競馬場へ。きょうは開催日ではなく、車も歩行者もそれほどいないにもかかわらず、入口のまわりに交通整理の人が二十人以上も立っていた。ヨドバシのスマホコーナーの店員くらいの密度で立っていた。

夕方、帰り道、晩ごはんはひき肉を使ったうどんだと話しながら歩いていると、公園から、ひき肉です!と歌う女の子の声が聞こえてきた。公園の近くにベーグル屋を発見。中に入ると、奥に子どもの靴が十足くらい散らばっている。奥で習い事でも開いてるんですか、と店主の女性に訊くと、遊びにきてるだけです。

夜、チャックの散歩、市役所をかすめて南へ。公園の出口にある黄色い実をつけた樹の幹に「木に傷を付けないで下さい。泣いてます。」と張り紙があった。

妻が家のドアに、クリスマスのリースを飾ってくれた。足を悩ましく組んだセクシーなサンタが十人もくっついている。

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