鉄から土へ。十三年ぶりの尾鷲
当時はたしか大宮大台で高速をおろされ、そこからひたすら国道四十二号線の峠道がつづいた。まだ運転が不慣れだったので、カーブがつづく山道やすれ違う車に気をつかい、そうとう疲れていたと思う。そうして最後の馬越峠をこえて下り道にさしかかったころ、とつぜん、木立に閉ざされていた視界が一気に開け、急に、建物が密集する巨大な町が目の前に現れた。火力発電所の鉄塔が天を突き、オセロの駒を積み重ねたような形をした石油タンクが並び、遠くに海がひろがっていた。
もう十六年前、赴任地が尾鷲に決まり、