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雪雪
2022年9月26日 20:45
谷崎潤一郎の『鍵』は当時大ベストセラーだったそうで、センセーショナルな内容も相まって刷りまくったそうだが、これと同じようにカタカナだけを使用した文体の『瘋癲老人日記』は不人気なのかあまり感想を書く人がいない。新潮文庫では確か同じ単行本に収められているので、合わせて読むべき作品なのかもしれない。『瘋癲老人日記』は晩年の谷崎の私小説的な内容で、老いてなお性欲、それも『足』に対しての異常なフェティッ
2021年11月13日 19:10
青い雨が地面に散らばる様に、夜を思い出した。私には、夜天こそが本当である。ソファで眠たい目を軽く擦ると、きらきらと、息子が笑いながら握りしめて見せてきたのは、妻に贈ったラピスラズリのネックレスだった。どこから持ってきたものか。ラピスラズリの鉱石は、金を散りばめた夜天そのもので、私はそれを持つ息子に御仏を見た。ガンジス川の真砂(まさご)よりあまたおわする仏たち。九条武子の『聖夜』を諳んじ