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ろんぐろんぐあごー

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デビュー以前に書いた素面では到底読めない作品をひっそりと公開。
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#本格ミステリ

フォスター・チルドレン 90(終)

フォスター・チルドレン 90(終)

エピローグ 事件から一年が過ぎた。
 今、僕と蘭はリカードに会うため、ボリビアへ向かっている。まさかこんなに早く、リカードと会うことになるとは思っていなかった。
 きっかけは僕の作った曲だった。
 再びチャレンジした「ロック天国」のチャンピオン戦で、僕は一連の事件によって悟ったことを歌にした。親が自分の子供に愛しさを伝える歌なのだが、子供のいない僕はリカードを思い浮かべながら、曲を書いた。
 僕は

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フォスター・チルドレン 89

フォスター・チルドレン 89

最終章 ありがとう、さようなら(7)3(承前)

 ふと上着のポケットに手をやると、カセットテープが一本入っていた。親父の荷物の中に入っていたカセットだ。どうせこれも演歌だろうと思いながら、セットしてみた。
 再生してもなかなか音楽が始まらないので、僕は応接間を離れて、居間に手紙の束を置いた。
 郵便のほとんどは香典返しの商品を売りこむダイレクトメールだったが、その中には僕宛ての封筒も混ざっていた

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フォスター・チルドレン 88

フォスター・チルドレン 88

最終章 ありがとう、さようなら(6)3

 蘭と別れたあと、僕は一人、バイクを飛ばして南へ走った。
 親父が交通事故に遭った日――それは「ロック天国」初戦を勝ち抜いたことを祝うためにやってきた店の前で、僕がバンド仲間と喧嘩をした日と同じだった。
 そうだ。あの日、僕らがやってきた店は「愛夢」だった。僕らが喧嘩をしていたその店の中に親父はいたのだ。
 僕はそこからまっすぐ海へ――南へと走った。ひょっ

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フォスター・チルドレン 87

フォスター・チルドレン 87

最終章 ありがとう、さようなら(6)2(承前)

「そんな……」 
 僕は愕然とした。朋美は殺されたわけではなかった。殺されそうになったのは僕であり、朋美は僕を殺す凶器となって死んでいったのだ。 
「投げ落とす瞬間、朋美はつかんでいた消火器を離し、俺の足元に転がした。そして俺にいったんだ。『ありがとう……さようなら』って微笑みながらな。
 ……あいつはそのまま地面に叩きつけられた。俺が殺したんだよ

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フォスター・チルドレン 86

フォスター・チルドレン 86

最終章 ありがとう、さようなら(5)2(承前)

「だから朋美を殺したのか?」
 僕は口をはさんだ。
「朋美が邪魔で……」
「そうじゃない! 俺は朋美に殺意を抱いたことなど一度もなかったさ!」
 葉月が右足でフェンスを蹴飛ばす。フェンスはガンッと派手な音を立て、少しだけ外側に曲がった。
「正直、殺意を抱けるほどの気持ちを持っていたなら、俺はもっと早く朋美を捨てていたよ。そうじゃないんだ。朋美には殺

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フォスター・チルドレン 85

フォスター・チルドレン 85

最終章 ありがとう、さようなら(4)2(承前)

 僕は高鳴る鼓動を抑えつけた。口の中はからからに乾いている。
「どうして朋美を殺したのか、その理由をまだ聞いていない」
 心臓は張り裂けんばかりに激しく波打っていたが、意外なほど、僕は冷静さを保ち続けていた。朋美を殺した男を目の前にしているのに、なぜか心は穏やかだ。
 なぜだろう?
 自問して見たが、答えはすぐには返ってこない。
「俺は朋美を好きに

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フォスター・チルドレン 84

フォスター・チルドレン 84

最終章 ありがとう、さようなら(3)2

「葉月……」
 蘭が喉から声を絞り出していう。僕は声を出すことすらできなかった。
「いつからそこにいたの?」
「おまえの彼氏が熱弁を始める前から、ドアのそばで聞いていたよ」
 葉月は僕を見て、ふんと笑った。
「残念だけど、あんたの推理は間違ってる」
 彼はそういうと、肩をすくめ、おどけた口調で、次の言葉を続けた。
「朋美を殺したのは――俺だ」
 隣で、蘭が

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フォスター・チルドレン 83

フォスター・チルドレン 83

最終章 ありがとう、さようなら(2)1(承前)

 蘭は不可解な表情を浮かべた。
「どういうこと? あたしにはちっともわからない。犯人は別にいるのに、朋美はなにか勘違いをしていたってこと?」
「……そうじゃないんだ。親父の死は事故だよ。でも、朋美はそうは思わなかった。自分が親父を殺したのだと感じてしまったんだよ。そして、それはあながち間違ってもいないんだ」
「あたし、あなたがなにをいいたいのかさっ

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フォスター・チルドレン 82

フォスター・チルドレン 82

最終章 ありがとう、さようなら(1)1

「屋上へ行かないか?」
 僕は蘭の肩に触れた。
「俺たち、まだ朋美にさよならさえいってないだろう?」
「そうだけど……どうしたのよ、急に?」
 僕は蘭の質問には答えず、ベランダを離れ、朋美の部屋を出た。
 階段を昇り、屋上へ向かう。屋上のドアには「立入禁止」の札が貼られていたが、僕はそれを無視して屋外に出た。風が強く、砂埃が舞い上がっている。
 刑事がいっ

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フォスター・チルドレン 81

フォスター・チルドレン 81

第6章 私の願いを聞いてください(15)4(承前)

「樋野君」
 電話ボックスを出ると、目の前に蘭が立っていた。額に汗をかき、息を切らせながら苦痛の表情を浮かべている。
「……蘭」
「やっと追いついた。あたしもガソリンスタンドへ行って、それから葉月のアパートにも行ってみたの。……どちらにもいないとしたら、次はきっとここだろうと思って……」
「駄目だ。ここにもいないよ。部屋には鍵がかかってる――」

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フォスター・チルドレン 80

フォスター・チルドレン 80

第6章 私の願いを聞いてください(14)4(承前)

 朋美のアパートに警察の姿はなかったが、建物の裏側にはロープが張り巡らされ、今もまだ事件の生々しい雰囲気を残していた。
 当然のことなのだが、朋美の部屋には鍵がかかっていて、中に人の気配はないようだ。葉月を捜す糸口が完全に絶たれてしまい、僕は急に襲いかかってきた疲労感と脱力感で、へたへたとドアの前に座りこんでしまった。
 自分の足元を眺め、ため

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フォスター・チルドレン 79

フォスター・チルドレン 79

第6章 私の願いを聞いてください(13)4

 葉月に会うつもりだった。蘭は朋美の飛び降りる直前、屋上あたりに葉月らしき姿を見かけたといっている。そういえば、僕もそのとき「……殺してやる」という声をかすかに耳にした。
 今思えば、あれは葉月の声だったのではないだろうか?
 とにかく――真相を握っているのは彼だと思った。
 僕は葉月が勤めているガソリンスタンドまでバイクを飛ばした。
 蘭の泣き顔が浮

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フォスター・チルドレン 78

フォスター・チルドレン 78

第6章 私の願いを聞いてください(12)3(承前)

「……昨日の夜、朋美は僕と蘭のキスを、偶然目撃したんじゃないかな? それを見て、発作的に飛び降りたとは考えられない?」
「ごめん――それはあり得ない。絶対にあり得ないの」
 そう答えたあと、蘭はぎゅっと唇を閉じて、僕を睨みつけるように見上げた。
「どうしてそう断定できるんだ?」
「怒らないで聞いてくれる? 昨日、樋野君とデートして……あたし、や

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フォスター・チルドレン 77

フォスター・チルドレン 77

第6章 私の願いを聞いてください(11)3(承前)

 朋美の笑顔がよぎった。メモ用紙に描かれたクマのイラストは、朋美が好きでコレクションしていたキャラクターだった。 
 蘭はメモ用紙をペンダントから取り出すと、何度も朋美に謝りながら、それを広げた。
 蘭の後ろから紙片を覗きこむ。
「……間違いなく、朋美の字だ」
 遺書と同じ丸文字が僕の目の中に飛びこんできた。

 私がずっと、あなたの心の中に住

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