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日本に来る難民と入管行政の問題点:まとめ

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#日本の社会問題

「不法滞在者は犯罪者」という言説―”不法”の原因は厳しすぎる制度

最近の入管法改正に関するトピックが多くなるにつれて、ニュースのヤフコメやTwitter等の投稿で、「不法滞在者は、不法に入国・在留している時点で犯罪者なので、国外追放するべき」といった意見が散見されます。

中でも、現在入管法の改正で問題にされている(収容中で送還忌避している人と仮放免の人の合計)3,000人くらいといわれる「送還忌避者」のことは特に注目を集めているところだと思います。

参考)出

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なぜ日本の難民認定率は低いのか?(4/25追記しました)

そもそも、入管行政の問題の根幹にかかわる部分として、「なぜ、日本の難民認定率は低いのか?」について。

難民認定の厳格性-不信の文化日本の入管は、国境の管理によって自国民をテロやいわゆる偽装移民等から守る「国境の番人」としての役割にメンタリティが強く働き、入国阻止政策へと政策の方向性が向きやすいようです。

入管当局の最大の使命は国境の管理であり、当然ながら、疑わしき外国人の入国・在留には警戒的な

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読順②「人数」で見る入管行政の問題

2019年ベースでの人数把握のため、データをまとめました(たまに2017年や2018年のデータですが…)。これで、この問題の規模感が分かると思います。

2020年からのコロナの影響で収容者数が減り、仮放免者が増えたそうですが、その実数のまとめはまた後ほどしようと思います。

申請者総数約1万人・認定率0.42%2019年に日本で難民認定申請をした人は10,375人、難民として認定されたのは44人

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読順④入管行政の最近の動き(報道)~2020年10月現在~

入管行政の最近の動きについて、まとめます。(報道の掲載された時期については順不同で記載しています)

強制収容トルコ人男性と国が和解 朝日新聞「入管が異例の「謝罪」」(有料記事 2020年10月1日掲載)https://www.asahi.com/articles/ASNB173LYN9ZPTIL00D.html

大阪入管と男性とで和解との報道。和解金を国が支払い、和解条項に謝罪が盛り込まれると

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用語 まとめ①「全件収容主義」「第三国定住」「ノン・ルフールマン原則」

全件収容主義在留資格がない人や超過滞在者など、入管法に違反していれば、難民申請中といった個別の事情や、その人が逃げる可能性があるかどうかを考慮せずに収容してよいとする入管側の解釈を指す。

過大すぎる入管の「裁量」。政府からも法改定による見直し案も出されたこともあるが、現在も入管行政による「裁量」に任されている。

<根拠法>

a.収容令書による収容(30日以内、延長可):入管法第39条第1項、

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用語 まとめ②「出国命令」「退去強制令」「収容令」

「出国命令」(入管法24条の3、55条の2から6)

不法残留者が、帰国を希望して自ら入国管理局に出頭した場合は、以下の五つの要件をすべて満たすことを条件に、出国命令という制度により、入国管理局に収容されることなく出国することができる。

①速やかに出国することを希望して、自ら入国管理局に出頭したこと

②不法残留している場合にかぎること

③窃盗その他一定の罪により懲役刑等の判決を受けていないこ

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読順⑤ソーシャルワークとの関連(その1)社会福祉士(会)との関連

社会福祉士との関連

難民(アサイラムシーカーズ含む。以下略)支援について、支援者(団体)として挙げられるのが社会福祉士ですが、社会福祉士養成のカリキュラムに「難民」について取り上げられていないばかりか、外国人支援についての専門的な教育カリキュラム(例えば、「多文化ソーシャルワーク」のようなもの)はつくられていません。

しかし、社会福祉士には難民を含む外国人に対する支援に倫理的な責任があります。

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用語 まとめ④「アサイラム・シーカーズ」「在留特別許可」

「アサイラム・シーカーズ」自国を逃れて庇護や難民としての地位を求める人を、アサイラム・シーカーズ(Asylum seekers)と呼ぶことがある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR: United Nations High Commissioner for Refugees)ではアサイラム・シーカーズを「国際的な保護を求めており、難民としての地位を求める申請に対する認定がなされる前の個人」と定義

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読順⑥ソーシャルワークとの関連②難民申請者に対するセーフティネットの脆弱性(その1)

法からの疎外・貧困に陥りやすい難民申請者日本での難民申請者(法的には在留資格未取得者)のセーフティネットは法的保障はほとんどなく、社会的な地位はおろか、就労も禁じられたり、生活保護を受給することもでないといった厳しい制約の中で生きていかざるをえません。さらに、日本に居続けられないからといって本国に戻れないという状況を抱えた難民は、国と国との間の空白(法の支配の外)に落ちてしまったような状態といえま

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読順⑦ソーシャルワークとの関連②難民申請者に対するセーフティネットの脆弱性(その2)

(本文は、移住連編の『相談ハンドブック』(2019年)を多分に参照・引用して書いています。そちらもご参照していただきたいと思います)

行政サービスを受ける権利現在、日本において外国人であることを理由に制度の利用ができないという社会保障・社会福祉・医療制度は原則的にありません。これは、「難民条約」や「人種差別撤廃条約」、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)の「内外人平等原

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