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【読書記録】読んだ本まとめ(2024年5月読了分)

 できれば読んだ本は感想をnoteに記しておこうかと思っていたのだけれど、一つの記事で1,000文字以上は書くというマイルールを設定してしまったせいで、なんとなく書けずにいた。

 ということで、今回は2024年5月に読んだ本をまとめようと思う。リアルタイムの読了報告は、X(旧:Twitter)@yk_kurenashiをみていただければ書影付きで簡単にポストしている。

 個人的に、本の評価基準は3つ。※主観で判断します。
①内容
 
単純に内容が面白かったか否か。
②文章
 文章が読みやすかった、美しかったなど。
③再読
 
本棚に置いておきたい本かどうか。何度でも読みたい、本棚にコレクションしておきたいなど、本棚を整理するときの判断基準。借りた本であれば、購入して手元に置きたいか否か。


『なぜ働いていると本が読めないのか』/三宅香帆

読了日:2024年5月1日
①内容:★★★☆☆
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★☆☆☆

あらすじ

「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。
「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。
自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。
そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは? 
すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか/三宅 香帆 | 集英社 ― SHUEISHA ―

感想

 タイトルにある通り、「働いていないころは読書できていたのに、どうして働きだすと読書ができなくなるのか?」というテーマを、労働と出版の歴史をたどって紐解いていく。

 結論は、働きすぎだからもっとゆるく働こうとのこと。確かに、働いていると読書をする気力がわいてこない。メンタルが弱ると字の上を目が滑っていく感覚がするので納得したが、今の状況では結局「本は読めないまま」と思うばかり。

 労働環境と出版・本の流行の歴史はとても面白く、参考になった。自己啓発やビジネス本の意義や、流行の背景も参考になる。話題書なので、読んでて損はないかな、という印象。

『猫を抱いて象と泳ぐ』/小川洋子

読了日:2024年5月2日
①内容:★★★☆☆
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★★☆☆

あらすじ

「大きくなること、それは悲劇である」──この警句を胸に11歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指す。その名もリトル・アリョーヒン。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、自分の姿を見せずに指す独自のスタイルから、いつしか“盤下の詩人”と呼ばれ奇跡のように美しい棋譜を生み出す。架空の友人インディラとミイラ、海底チェス倶楽部、白い鳩を肩に載せた少女、老婆令嬢……少年の数奇な運命を切なく描く。小川洋子の到達点を示す傑作。

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』裏表紙(文春文庫)

感想

 淡々とした文章で、少年の日常を描写されるとともに、少年の思い浮かべる空想の世界が鮮やかでよかった。最初に少年が死体を発見した時は、多少驚きはしても心の動きが少なかったのに、マスターの死に直前した際は生々しい心情が描写されていて、胸が締め付けられる。

 屋上の象、壁の間のミイラ、猫のポーン、少女の肩の上の鳩、盤下、リトル・アリョーヒンという名の絡繰り人形など、印象的なアイテムがたくさん登場する。少年の大事なものが増えていく中で、結局大事なものは何一つ手に入れられなかったのに、心に大事なものを抱えている姿が印象的だった。

 登場人物たちの「仕方ない事情」、自分に与えられた場所や役目を受け入れる姿に諦めが見えて悲しくなったが、その場所でしたたかに生きている姿が素敵だった。ラスト、叶わなかった決意に悲しくなったが、少女の少年への愛が心に染みた。

『本心』/平野啓一郎

読了日:2024年5月3日
①内容:★★★★☆
②文章:★★★☆☆ 
③再読:★★★★☆

あらすじ

母を作ってほしいんです――AIで、急逝した最愛の母を蘇らせた朔也。孤独で純粋な青年は、幸福の最中で<自由死>を願った母の「本心」を探ろうと、AIの<母>との対話を重ね、やがて思いがけない事実に直面する。……格差が拡大し、メタバースが日常と化した2040年代の日本を舞台に、愛と幸福、命の意味を問いかける傑作長編。

平野啓一郎『本心』裏表紙(文春文庫)

感想

 平野啓一郎作品は、『日蝕』『一月物語』『ドーン』を高校生の頃に読んだだけで、ずっと積読にしていた。本作『本心』を読んだ最初の感想は「読みやすくなった」。近未来の日本を舞台にAIで作りだした<母>を通じて、主人公の周りに散らばる謎を紐解いていくストーリー展開がよかった。

 視点が主人公に固定されているため、他の登場人物の本心は想像するしかない。しかし主人公を含めて、基本的には純粋な人々が多いため、彼らの本心は想像しやすい。一方、自由死を望みながらも交通事故で死んでしまった母親の本心への興味が、謎に包まれているせいで引き込まれた。

 テーマとして「愛」「幸福」「AIは心を持つのか」の3点が交差している。経済的豊かさは愛も幸福も引き寄せはするが、母が死ぬまで主人公は母親との生活に幸福を感じていた。
 一方、三好はお金があればもっと自由に好きなことができ、幸福になれると信じている。イフィーは経済的にも恵まれ様々な人から求められているが、身体的なハンデを抱え、両親との関係も良くないために真に幸福とは言えない境遇にある。

 個人的にオチはよくある展開かな、と思ったが尊厳死やAI、経済的格差、教育、自己責任論など様々なテーマについて考えるきっかけとなってよかった。正直、この本は1冊でnoteの記事1つ書けると思う。

『十角館の殺人』/綾辻行人

読了日:2024年5月4日
①内容:★★★★★
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★★☆☆

あらすじ

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

綾辻行人『十角館の殺人』裏表紙(講談社文庫)

感想

 王道の海外ミステリ好きは大興奮しながら読んでいるのでは?と思わせるような、随所に散りばめられたミステリ作品の欠片たち。ミステリに明るくない私でも知っているアガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』を想起させる状況に、一気に引き込まれた。

 ストーリーが、孤島の洋館(十角館)と本土(九州)で繰り広げられるため、謎解きが2つの空間でそれぞれ繰り広げられるのもとても良い。読み手(探偵)に全ての情報が明かされているのも、推理小説のルールに乗っ取っているし、これは「小説」でなければ表現が難しくないか?とも思えてよかった。
 映像化しているらしいけど、どうやってうまく”あの1行”の衝撃を表現しているのかが気になる。

 私は推理小説を推理しながら読めないタイプのいい読者なので、しっかり”あの1行”に驚いて、膝を打った。

『楽園のカンヴァス』/原田マハ

読了日:2024年5月5日
①内容:★★★★★
②文章:★★★★☆ 
③再読:★★★★☆

あらすじ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

『楽園のカンヴァス』 原田マハ | 新潮社 (shinchosha.co.jp) 

感想

 父からおすすめされた1冊。キュビズムに影響を与えたとされるルソーがテーマの作品とのことで、京セラ美術館で開催されていた「キュビズム展 美の革命」を見に行く前にと一晩で一気読みした。

 美術が好きな人間には垂涎の一冊。ティムと織絵の、芸術を愛する者としてルソーの作品を愛する者としての興奮や葛藤が肌に伝わってくる。様々な思惑が二人を取り囲んでいたけれど、一番に感じたのは「美しい芸術を前にした、芸術を愛する者として真摯にありたい」という願い。

 原田マハさんの作品は『楽園のカンヴァス』以外、まだ読んだことはないが、他にも美術に絡めた作品を多く執筆されているとのことなので読んでみたい。

『夜の樹』/トールマン・カポーティ

読了日:2024年5月11日
①内容:★★☆☆☆
②文章:★★☆☆☆ 
③再読:★★★☆☆

あらすじ

ニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、〈ミリアム〉と名乗る美しい少女と出会った……。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子大生の不安を描く「夜の樹」。夢と現実のあわいに漂いながら、心の核を鮮かに抉り出す、お洒落で哀しいショート・ストーリー9編。

『夜の樹』 トルーマン・カポーティ、川本三郎/訳 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

感想

 大学生時代に購入し、挫折した1冊。哀しみや孤独感、不安を抱えている人々を丁寧に描いているという印象を受けた。海外文学の翻訳は、まどろっこしいことが多くて苦手で、今回も挫折しそうになった。

 9編の中で一番好きだったのは「夢を売る女」。金持ちの男に夢で見た内容をいくばくかで売る女が、同じく夢を売っていた男と出会い、不思議な友人関係(恋愛かもしれない)を育む。ふわふわと地に足がついていないような文章とストーリーの中で、多くを持たない男と女の悲しみや、どうしようもなさが美しく描かれている。

 全体を通して、貧困にあえぐ市民や下町に生きる人々の生きづらさに対する描写が多く、読んでいて暗い気持ちになる。けれど、誰もが一度は感じたことがあるであろう孤独や空虚さが、胸にぐっときた。

『赤と青のガウン』/彬子女王

読了日:2024年5月12日
①内容:★★★★☆
②文章:★★★★★ 
③再読:★★★★★

あらすじ

 ドアを閉めた瞬間に涙がこぼれた。思えば、あれが留学生活最初で最後の「帰りたい」と思った瞬間だった。
 本書は2004年から5年間、英国のオックスフォード大学に留学し、女性皇族として初めて海外で博士号を取得して帰国された彬子女王殿下の留学記。女王殿下は2012年に薨去された「ヒゲの殿下」寬仁親王の第一女子、大正天皇曾孫。
 初めて側衛(そくえい)なしで街を歩いたときの感想、大学のオリエンテーリングで飛び交う英語がまったく聴き取れず部屋に逃げ帰った話、指導教授になってくれたコレッジ学長先生の猛烈なしごきに耐える毎日、そして親しくなった学友たちとの心温まる交流や、調査旅行で列車を乗り間違えた話などなど、「涙と笑い」の学究生活を正直につづられた珠玉の25編。

赤と青のガウン | 彬子女王著 | 書籍 | PHP研究所

感想

 SNSで話題になっていて気になったので購入した本。皇族である彬子女王の留学記は雲の上のこと過ぎてついていけないのではないか、と思っていたけれどいい意味で裏切られた。雲の上の話だけれど、大学生を生き生きと楽しみ、課題に苦しむ姿は、皇族の方も同じだった。

 最初の留学では掴みとれなかったことを、2度目の博士号を目指した留学で掴みとろうと懸命に努力される姿や、留学仲間と旅行したり、LCCに乗ったりと楽しまれる様子に驚いた。軽やかな文章で綴られる様々な事件に、一緒にわくわくした気分を味わうことができ、「早く読み進めたい!」と必死にページをめくった。

 読後はすごく満たされた気持ちになったとともに、周囲の方々への感謝を忘れない姿に「私もこうありたい」と思えた。そして、こんなにも素敵な方が皇族としていらっしゃることに、勝手にうれしくなった。何度でも読み返したい一冊。

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』/村上春樹

読了日:2024年5月27日
①内容:★★★★☆
②文章:★★★★★ 
③再読:★★★☆☆

あらすじ

多崎つくる鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。
何の理由も告げられずに――。
死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。

文春文庫『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS (bunshun.jp)

感想

 村上春樹作品にチャレンジしては失敗を繰り返す身として、ずっと本棚にあったけれど読み進めていなかった。村上春樹とは、いつも分かり合えないのだけれど、定期的にわかりたい(チャレンジしたい)時期が来る。今回もそんな感じで読み始めた。

 美しく読みやすい文章としなやかな比喩表現は、さすがとしか言いようもない。読みやすいのに読むのをやめたくなってしまうのはなぜなのか……。

 主人公の多崎つくるの心の暗い部分の描写は引き込まれた。ストーリーも面白い。一方、言語化できない「なんか違うんだよなぁ」がついて回る。面白かった!でも村上春樹とは、今回もわかりあえなかった!!

5月の読書まとめ

 読書メーターの集計を見てみると、5月は合計8冊、計3,226ページ読んだらしい。読書メーターには漫画とweb小説は含んでいないから、実際にはもう少し多い量を読んでいるはずだ。

 ジャンルは、新書、ミステリ、純文学、エッセイとうまくばらけていて、個人的には満足している。私は、一度ハマると似たようなジャンルばかり読んでしまう傾向があるから、今後も偏らないように気を付けて読む本を選んでいきたい。

 また、5月に読んだ8冊は全て紙の本だった。kindle Unlimitedに加入したので電子書籍も積極的取り入れていきたい。電子は嵩張らなくていいけど、スマホで読んでいると疲れてくるので、専用端末も検討中。

 読書は楽しい趣味だから、あまり気張らずに楽しくマイペースに、積読本の海に沈まない程度に読んでいきたい。


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