仲良くしてくれるギャル
最近友達が1人増えた。
大人になるとなかなか増えない "友達" であるが、なぜ友達が増えたかと言えば社員旅行だ。
同年代、そして女性が数少ないうちの会社。
たくさん店舗があるが私の知り合いで同い年の女性なんて、私の同期が多店舗にいるだけだった。
そんな中、店舗混合の社員旅行のホテルの2人部屋の部屋割りで一緒になったギャル。
最初は顔も名前も知らなかったが、私と同じ部屋になるとは一体どこの誰なんだ。と心臓をバクバクさせて過ごした。初日の旅行中に周りを見ると女性社員が少ないから目立つ。なぜだか年齢だけは私と同い年だと知っていたから、確信する。
「あのギャルだ…」
ギャルが嫌いな分けじゃない。だけど、陰キャの私は怯える。そして変わり者の私は、もう一言も話さずに過ごしてやる…なんて意地を張る。一言も話してないのに。
明らかにウェイ系の、顔が無茶苦茶可愛くて明るいギャル。見てる分には良いんだけど、私が実際に関わっているところが全く想像できない。不安が募る中、ついにホテルにチェックインの時間になった。
移動のバスを降りて、チェックインするためのカードキーをバスガイドさんから受け取る。2人部屋なので、2人分のカードキーを代表して私が受け取った。ヒィ…あと数秒でギャルと会ってこれを渡して部屋に移動するのか…考えるだけで心臓がバクバクした。緊張感に包まれる、私。
もう良い大人(23)なんだからと自分を奮い立たせて(こんなことに労力を使うのがなんとも私らしい)ギャルの方へ身を向かわせる。
「◯◯さん…、ですよね?これ…(カードを渡す)」
無事に "初" 対面を乗り越えた。
カードを受け取ってもらい、重たいキャリーバッグをお互い引きずらせながらまずはエレベーターに向かう。
緊張と、無駄に関わるのはやめようとしていた私は普段はフレンドリーなフリをして明るく振る舞ってしまうところ、無言で過ごしていたらギャルは言った。
「同い年……だよね?」
むしろ気を遣ってくれているような話し方で言われた。私は少し驚いて答えた。
私「同い年…!」
ギャル「だよね!あんまり同い年の子いないから嬉しい!よろしくね!」
う、嬉しい…。まさに陰キャが陽キャに触れ合って陰キャが調子に乗る図にしか思えないが、まあそんな印象で読んでくれたら私の当時の様子はわかるだろう。
私「めっちゃ…ギャルだよね…(笑)」
本音を伝えて緊張を解くこと、私。
本心を二言目で伝えた。
それを言うには早いだろ、と満場一致の答えがでてくるものの、ギャルは明るく親しく答えてくれて、なんだか仲良くなれそうかもなんて思いながら部屋まで辿り着くことができた。
その後は何かあった時にとLINEを交換したり、待機時間に話をしたり、苦労してるんだなって過去を知ったり。夜寝る前には恋バナをしてこんなことまで話すかぁなんてことまで語り合ったりを2日繰り返した。
バスでの移動中の小休憩には、誘ってもらって売店のアイスを一緒に食べながらしゃべったりもした。
仲良くなれた。旅行中。ここまでかと思ってた。
旅行が終わり解散した数時間後には、
「◯◯ちゃんがいてくれてまじよかった!ありがとう!」
というLINEが来て、上司に家まで送ってもらう車の後ろの席で1人通知を見てニヤニヤしたりしていた。外は暗いけど、ほどよい疲れと、不思議な引力で仲の良いお友達までできてしまったなという優越感に浸りながら外の黒を眺めていた。
その後も毎日LINEが続いている。数えてみるともう3ヶ月は超える。
苦じゃない。
ご飯に誘われたりしたんだけど、予定が合わなくて、やっぱりギャルは予定詰め詰めだ。でも断ることも明るく言うから私にはその性格が合っている。
高校生の時はギャル高にいたが、ギャルに気に入られる性分だった。それが大人になった今でも変わらないのであろう。
ただ、どうして私なんかと仲良くしてくれるんだろう。なんて気持ちはずっとある。素直に、疑問だ。
とはいえ、嬉しい気持ちが勝つ。むしろ、こんなギャルに仲良くしてもらえている自分に少し自信を持てる瞬間があったりする。そこも含めて、嬉しい。
ひょんなことから出会い、最初は拒絶しかけていた私だったけど、人は知らないと分からない。
人生って面白いんだなと思ったりしました。
こんな自分でも、仲良くしてくれる人がいるだけで、私は心の寿命を延ばされたりしている。