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食べることと飲むことが好きな30代。既婚、子供はまだ無し。思いついたことを気ままにつづ…

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食べることと飲むことが好きな30代。既婚、子供はまだ無し。思いついたことを気ままにつづるエッセイと読書記録を書いています。

最近の記事

読書記録:中野京子『印象派で「近代」を読む』

私が初めて西洋絵画を鑑賞したのは遠足で訪れた上野の国立西洋美術館だった。中学生のときだっただろうか。聖書の内容など何も知らないので宗教画は何が何やら理解できず、静物画は何が良いのかもわからず、少し疲れてきたときに印象派のコーナーに入った。単純に綺麗だと感動した。普段見ている空や草花をこのように絵にすることができるとは、という驚きもあった。 その後のコーナーはキュビズムなど理解できないものばかりで、唯一の収穫といえば人生ゲームで何度も買わされてるピカソの絵ってのはこういうやつ

    • 読書記録:高橋繁行『土葬の村』

      古い記憶、おそらく10歳前後のことだっただろう。私の家族はその頃、祖母の家に間借りして暮らしていた。祖母の家といっても祖母自身もその家には引っ越したばかりで、誰も縁もゆかりも無い、知らない土地だった。祖母は家庭菜園に憧れて庭の広い平屋の一軒家を探しあてて、長年暮らした街のとなり町ではあるけれども、田んぼと畑に囲まれた静かな田舎に越してきたのだった。 その日は隣家のおばさんが訪ねてきていた。隣家との間には田んぼとビニールハウスと畑があり、ちょっと散歩するには程よい距離だったの

      • 雑記日記:初夏の京都で緑に浸る

        少し遅くなりましたが、ゴールデンウィークの話をば。ゴールデンウィークはがっつりお出かけしました。前半は私の両親と弟夫婦と3家族連れ立って東京ディズニーシーとランドを楽しみました。前半の三連休はそれほど混んでおらず、両親も久しぶりのディズニーを楽しめたと思います。 あいだの平日期間は、夫がもともと休みの職種なので私も便乗して休みをとり、京都に行くことにしました。しかしなんとなく「久しぶりに京都でも行くか〜」と決めてしまったので、何かしたいことがあるわけでもなし。以前に関西に住

        • 読書記録:ロバート・A・ハイライン『夏への扉』

          古典SFに久しぶりに挑戦。今回はロバート・A・ハイライン 著、福島正実 訳『夏への扉』(ハヤカワ文庫SF)を読みました。 1956年に発表されたこの作品、舞台は1970年と2000年です。コールドスリープが物語のカギとなっていて、未来に対して割とポジティブなスタンスが面白く感じました。最初は主人公の不器用さにイライラして積読リストに入ってしまいそうになりましたが、中盤からはイッキに読んでしまいました。 これまで読んだ古典SFはディストピア系が多く、1900年代後半は核開発

        読書記録:中野京子『印象派で「近代」を読む』

          雑記日記:方言に戸惑うひとへ

          4月になり、通勤電車がぎゅうぎゅうの満員になりました。新生活が始まったひとも多いのでしょう。名古屋駅でスマホと案内表示を見比べて立ち止まってるひとの多いこと。ほんとにこの駅は動線が何にも考えられてないんだなぁと気づくのに3ヶ月、行きたい場所への最短距離を把握するのに1年はかかると思います。頑張れ。 うっすら警戒していた夫の転勤もなく、私は今年も相変わらずの生活を続けていくことになりそうです。今の家が気に入ってるからあんまり引っ越したくないのよね。 4月というと思い出すのは

          雑記日記:方言に戸惑うひとへ

          読書記録:星野源『そして生活はつづく』

          星野源さんを初めて知ったのはいつだろうかと振り返ってみると、おそらくNHKの『LIFE!』というコント番組だと思うから、2013年頃でしょうか。逃げ恥のドラマが2016年なので、大ブレイク前から知っていたということにはなるのだけど、まぁだから何だという。改めて略歴などを読むと、それ以前から各所に引っ張りだこであったようですし。 私はファンを自称するほどのファンではないと思います。CDを買ったことも無いし、逃げ恥以外で俳優をしているところも見ていないし、ラジオも聞いていない。

          読書記録:星野源『そして生活はつづく』

          読書記録:カズオ・イシグロ『日の名残り』

          たまには重厚な文学を読みたいな、と手を取りました。カズオ・イシグロ 著、土屋政雄 訳『日の名残り』(ハヤカワepi文庫)。著者の作品を読むのは初めてで、ノーベル文学賞を受賞した際に紹介されていたプロフィールを流し読みした程度の知識しかありません。 舞台は1956年のイギリスです。老執事の独白によって語られる、ダーリントン卿の邸宅『ダーリントンホール』で働いた日々。文章自体は読みやすく、しかし読みながら考えることは多くて、ときに主人公の不器用さにイライラさせられるものの、読書

          読書記録:カズオ・イシグロ『日の名残り』

          読書記録:リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』

          宗教について学ぼうという流れから、ちょっと寄り道をして無神論についての本を読みたいなぁと思い手に取りました。リチャード・ドーキンス 著、大田直子 訳『神のいない世界の歩き方 「科学的思考」入門』(早川書房)。 本書はニ部構成になっており、第1部では主に旧約聖書と新約聖書について、神やキリストの教えは信仰するに値しないのではないか?ということを過激に論じていきます。第2部では進化論を丁寧に説明しつつ、宗教的ではなく科学的に思考することの大切さを説いています。 キリスト教の家

          読書記録:リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』

          読書記録:諸田玲子『其の一日』

          短編小説を何か、と思って手に取りました。諸田玲子『其の一日』(講談社文庫)。 江戸時代の史実からある一日を切り取って想像を膨らませ、主人公の心情を綿密に読み取るような一編一編になっていました。お受験的な日本史しか学んでいない私には知らないことばかりで、読んだあとに主人公とその周辺について調べては思い巡らすのも楽しかったです。 私は歴史上の人物について、勝手な印象を抱いていることが多いように感じます。暗殺されたということは悪いこともしていたのだろう、とか。井伊直弼についての

          読書記録:諸田玲子『其の一日』

          読書記録:フランツ・フェルディナンド『オーストリア皇太子の日本日記』

          皆様、新年いかがお過ごしでしょうか。1年の始まりに痛ましいニュースが続き、私は何となく前向きになれないままに日々が始まってしまったように感じています。今年はもうこれ以上、災害が起きませんようにと祈るばかりです。 さて、去年のうちに読み終わっていたのに感想を書くのを後回しにしていました。以前に読んだイザベラ・バードの日本の旅行記と似たようなものを読みたい、と今回はこの本を手に取りました。フランツ・フェルディナンド 著 安藤勉 訳『オーストリア皇太子の日本日記 明治二十六年の夏

          読書記録:フランツ・フェルディナンド『オーストリア皇太子の日本日記』

          読書記録:マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』

          この1年、争いは絶えず、終わる兆しも見いだせないまま新たな年を迎えようとしています。今年読んだ本のラインナップを見返してみると、そういう問題に対して消極的になっているかもしれないと気づき、ずっと読んでみたかったこの本に挑戦することにしました。 マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。 正義をキーワードにして哲学を学んでいくという発想が面白く、実際の社会問題に照らしながら解説してくれるので読みやすさ

          読書記録:マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』

          雑記日記:夢をみて、魔法にかけられ元気になる2日間

          11月23日の祝日に東京ディズニーシーへ、24日に東京ディズニーランドへ夫とふたりで行ってきました。訪れるのは約2年ぶり、もろもろの制限が無くなって満員御礼状態のディズニーリゾートは5年ぶりです。 いやはや、覚悟はしていたのですが、どのアトラクションも1時間前後は並ばなければならない、人気アトラクションは3時間待ちという状況。有料のプライオリティ・パスは開園早々に売り切れてしまって買えなかったので、シーではソアリンに170分、ランドでは美女と野獣に160分並びましたよ。

          雑記日記:夢をみて、魔法にかけられ元気になる2日間

          読書記録:宮部みゆき『あやし』

          秋の夜長にもホラー小説を、しかもお江戸のお話をいかがでしょう。宮部みゆき『あやし』(角川ホラー文庫)。短編集で、1話ずつじっとりとしていて読みごたえがありました。それぞれ「誰に語らせるか」というのもよく練られており、著者の読ませる力に感服しながらイッキ読みです。 ホラーというよりは怪談といったほうが良いでしょうか。舞台は江戸の商店、店主やそこに仕える奉公人たち。蠢くのは人ならざるものなのか、それとも誰しもが持つ闇が顕現しただけなのか。 9編あるなかで私のお気に入りは『安達

          読書記録:宮部みゆき『あやし』

          スポーツ所感:想像の先か、想像の外か

          プロ野球もメジャーリーグも残すはチャンピオンを決める戦いとなり、スポーツは冬のシーズンに入ろうとしている今日この頃。5月に書いて以来、スポーツについて語っていなかったのでツラツラと思ったことを綴りたいと思います。 昨日、テレビ朝日のタモリステーションという番組で大谷翔平選手の特集を見ました。この2ヶ月余り、彼の活躍による胸の高鳴りがなかったもので、久しぶりにホームランの爽快感と芸術性に酔いしれました。 興味深かったのは、彼が理想とするのはバントでホームランを打つことだ、と

          スポーツ所感:想像の先か、想像の外か

          読書記録:須賀敦子『遠い朝の本たち』

          幼い頃から本を読むことが好きだった。小学生のとき、居候に近いかたちで住んでいた家の四畳半の一角に二段ベッドが置かれていて、寝相の悪い私は下の段、高いところが平気な弟が上の段を使っていた。ベッドの枕元には必ず数冊の本を置いていて、休日の朝は目が覚めても起き出さずに読み耽った。 部屋は北側で、昼間もあまり日が入らず、おまけに二段ベッドの下の段だから文字を読むには暗かった。そんなところで読書をしては目が悪くなると大人たちに叱られてもやめないので、デスクライトの根本がクリップになっ

          読書記録:須賀敦子『遠い朝の本たち』

          読書記録:ブライアン・フェイガン『海を渡った人類の遥かな歴史』

          海なし県で生まれ育ったからか、私にとって海とは観光地であり、日常からは切り離された存在だ。そのせいだとは思うのだけれど、古代に人類がどのように広がっていったのかと考えを巡らせるときに、海をどのように渡ったのかという重要な事項が思考から抜け落ちてしまいがちである。 知識としても弱いところなので、今回はその視点をじっくり学ぼう。ブライアン・フェイガン『海を渡った人類の遥かな歴史 古代海洋民の航海』(河出文庫)は、人類学者・考古学者である著者の豊富な航海の経験を交えつつ、古代の人

          読書記録:ブライアン・フェイガン『海を渡った人類の遥かな歴史』