見出し画像

読書記録:ロバート・A・ハイライン『夏への扉』

古典SFに久しぶりに挑戦。今回はロバート・A・ハイライン 著、福島正実 訳『夏への扉』(ハヤカワ文庫SF)を読みました。

ぼくの飼い猫のピートは、冬になると「夏への扉」を探し始める。家にあるドアのどれか一つが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、冷凍睡眠で未来へと送りこまれてしまったぼくは……永遠の名作を新版で刊行。

ハヤカワオンライン 商品ページより

1956年に発表されたこの作品、舞台は1970年と2000年です。コールドスリープが物語のカギとなっていて、未来に対して割とポジティブなスタンスが面白く感じました。最初は主人公の不器用さにイライラして積読リストに入ってしまいそうになりましたが、中盤からはイッキに読んでしまいました。

これまで読んだ古典SFはディストピア系が多く、1900年代後半は核開発や冷戦など、ネガティブな世界を思い描きやすい時代だったのだろうなぁと思います。この作品でも核爆発によって放射能汚染された街が存在していて、アメリカ人がアメリカ本土にそういった街を抱える未来を想像していたことそれ自体も興味深く思います。

しかし物語全体に未来は科学技術の進化によって明るいものであるという雰囲気があるのも、それはそれで当時の感覚を反映しているでしょう。コールドスリープは未だに実現していませんが、この作品に描かれている技術のほとんどが実現、あるいはすでにそれ以上の進化を遂げていて、著者の想像力に感服するばかりです。

では私自身、未来を明るく想像してみようと思っても、これが意外に難しい。例えば自動車を考えてみると、空を飛ばすのはまぁ現実味がないとして(気象条件もろもろの影響をより受ける方向にもっていく必要がないと思っている)、完全な自動運転技術はほぼほぼ出来上がっているようです。無事故で、二酸化炭素を出さない動力で、リビングでくつろぐような状態で連れて行ってもらえる、私が老人になるまでにはそんな域まで到達してしまいそう。

スマホもいずれホログラム的なかんじで手をかざして使う未来がくるのでしょうか。体に埋め込まれているチップで支払いを済ませるなんて、もう実現しているわけだし。

あまりに科学技術が進化してしまって、もはや私が想像つくようなことは、調べるとほぼほぼ現実になってしまっています。思考は宇宙へ飛び出すしかないのでしょうか。SF映画も最近は宇宙モノが多くなっている気がするし。月や火星をテラフォーミングして、戦争をする必要がないくらい食糧も資源も満ち足りて、、、明るい未来を描くには世界の範囲を広げる必要があるのかもしれません。

著者のメジャーな作品も宇宙に関係するSFが多いようです。私はあまり好まないジャンルなので、進んで読むことはないでしょう。宇宙旅行がどんなに手軽になっても、私は行くことが無いと思います。だって宇宙、怖い。

古典SFもまだまだ読むべきものがありそうですが、あまりに現代のSF小説から遠ざかっているのも気がかりです。もうそろそろバランスを取る必要もあると思うので、最新科学に触れられるようなものも近々読みたいと思います。

今回も読んでいただきありがとうございました!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?