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発狂した地球、あるいはひと夏の旅の物語
恒星間移民システム「クトゥルー」が大事故を起こした翌年の夏、わたしはなっちゃんと一緒におばあちゃんちまで歩いていくことにした。
『おはよ、マナ』
わたしが待ち合わせ場所の丘の上公園に着くと、透き通った青と赤紫が渦を巻く夏空の下、半分が触手状に変質した滑り台の横になっちゃんはいて、手を振ってこちらに近寄ってきた。
背後の木々の葉状器官の赤と橙のうねりが、なっちゃんの黒髪によく映えている。
「お
いい湯、悪い湯、奇怪な湯
バイト先の近所の銭湯がなんかヘンだ、と気づいたのはつい最近だった。
確かに以前から番台のお婆さんはやたらと顔が青白くて不気味だったし、
浴場自体も変に陰気で何か出そうな雰囲気ではあったのだけれど、
今みたいに、浴槽で毒々しい緑色の液体がゴポゴポいってて時折何かの咀嚼音が聞こえてくるとか、
入浴客がみんな四つんばいで白目剥いてやってくるとか、
煙突にどこからかやってきたらしい老人たちが群がってきて押
おまじないは皮を剥いて
最近うちの学校ではみかんの皮を使ったおまじないが流行っている。
まず、みかんを皮がヒトデ型になるように剥いて、内側にそれぞれの願いごとを書き込む。
そしてその皮の先端をおまじないに参加する人がそれぞれ持ち、願いを意識しながら引っ張って裂き、手元に残った皮の断片を乾燥させお守りにするのだ。
そうすると願いを叶える手助けをしてくれるのだという。
剥かれておまじないに使われたのは、みかんだけでなく
今なら10連でSSR1体確定!
それが最初に現れたのは、夕食を作ろうと冷蔵庫を開けたときだった。
ややしなびかけた大根の前に妙なボタンが二つ、宙に浮かんでいたんだ。
【1回ガチャる】【10回ガチャる】
なんだこれは?と思っておそるおそる1回の方に触れてみると、
突然大根が光りはじめ、何やら魔法陣やらよく分からない文字らしきものが浮かび上がった。
そしてキラリンッと音がしたあと光がさっとかき消えると、大根のあったはずの
教頭先生の秘密の楽しみ
「なあ、教頭のやつマジで育ててんのかな……?マンドラゴラ。確か禁呪種だろ?」
「静かに!気づかれちゃう」
アリッサに言われて俺は慌てて声を潜める。一応身隠しの呪文は効いているはずだが油断は禁物だ。
幸い教頭は気づいた様子もなく、恰幅のよい体を揺らしながら校舎裏の森へと歩いてゆく。
ねじくれた木々の合間の闇に完全にその後ろ姿が消える前に、俺たちは急いで跡を追った。
薄暗く曲がりくねった道をしば
テレポート・テレポート
「うぎょえっ!」
私の眼前の壁に突如中年男性の上半身が、アゴの下から犬の下半身を生やした状態で現れた。
ああ、この毛並みはポチかな、かわいそうに、転移先に居合わせちゃうなんて運が悪い。
「もぎょ、おうぇっ、おぴょ」
奇声を発する男の顔を、まだ生きているのか犬の足がげしげしと蹴っている。
「ふぎょっ」
ポチの爪が鼻に直撃した瞬間男はかき消えて、あとには私と男の胴体の形の穴がある血塗れの壁だけが残る。
クビナシコケコッコー
ニワトリって首切り落としても生きてるってことはみんな知ってっけどさー、実は人間も結構イケるって知ってた?
え?アタシ嘘なんかついてねーよ!なんなら確かめてみ?その辺歩いてるヤツつかまえて腐った生卵ぶっければ、当たりなら正体現すから、マジで!
そんなたくさん?いるよ、当ったり前じゃん!この世の人間の三分の一は頭から先ニワトリだよ、ニワトリ!
……何おどろいてんのさ、アタシさっき「ニワトリ
そして二人は一人になる
純白に染まった冬の森の中に、椿の花びらのように鮮やかな赤が点々と続いていた。
この様子なら日没までには仕留められるだろうか。山頂の方を眺め白く曇る息を深く吐き出すと、俺は追跡の足を速めた。
かじかんだ手足を必死に動かし、僕は少しでも先へ先へと進み続けた。組織を裏切ったのだ、怖い、どうされるかわからない、いやだ死にたくない、怖い、こわい。心の声に突き動かされるように、柔らかな雪をひたすら掻き分
恐怖!殺人ハムスター!
「チカちゃあああああん!」
ペットショップで金魚を眺めていた僕が金切り声に驚き振り返ると、上半身がクマのように肥大したゴールデンハムスターが半狂乱の女を叩き潰しているところだった。人の形に膨らんだほお袋からは、はみでた子供の足がぶらんぶらん。
蜘蛛の子を散らすように客が逃げ出す。当然僕も逃げる。
割れる水槽、飛び散る金魚。
ペシュッと妙な音と共に頬を何かが掠める。何だ?タネだ!ヒマワリのタネ!
まさか親父の前でこれ読むことになるなんて
「最強の暗黒騎士『ルシフェルたかし』は実は魔王の血を引いているため左目が紅に染まっており……うぁっ!」
能力発動途中、ムチのようにしなる髪の束に襲われ壁に叩きつけられる。
拍子に黒歴史ノートを落としてしまい慌てて手を伸ばすが、髪はそのまま僕の身体を締め付け高く持ち上げた。
「ワタシわぁァ、ふサフサなんダぁ!」
さっきまで父さんだったものは、リビングの中央で片手にカツラを握りしめたまま、耳や目から生