いい湯、悪い湯、奇怪な湯

バイト先の近所の銭湯がなんかヘンだ、と気づいたのはつい最近だった。
確かに以前から番台のお婆さんはやたらと顔が青白くて不気味だったし、
浴場自体も変に陰気で何か出そうな雰囲気ではあったのだけれど、
今みたいに、浴槽で毒々しい緑色の液体がゴポゴポいってて時折何かの咀嚼音が聞こえてくるとか、
入浴客がみんな四つんばいで白目剥いてやってくるとか、
煙突にどこからかやってきたらしい老人たちが群がってきて押し合いへし合いしながら登りだすとか、
そんなことはなかったはずだ。
一度、番台のお婆さんに聞いてみようとしたけれど、お婆さんがいつの間にか五つ子に増えてて一斉に同じ動きをしていたので、怖くなってやめてしまった。

何よりヘンなのは、他の人たちはこの事実を当たり前のこととして受け入れているようだということだ。
しかも今まで銭湯に縁の無かった人たちまでやって来つつある。
何とかしないとと思い、僕は調査を始めることにした。

(続く)

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

みかん