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消雲堂綺談

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私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
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#幽霊

百物語9「見知らぬ人」

百物語9「見知らぬ人」

夜に散歩をしていると見知らぬ人から話しかけられることがある。2日前に船橋の裏道を歩いていると、自転車に乗った同年代くらいの女性に話しかけられた。

街灯が少し離れたところにあって薄暗かったので女性の顔ははっきり見えなかったが笑っているようだった。

「あたしさ、昔、この辺りに住んでいたんだけれど、道に迷っちゃってさ、ここ、なんて街だかわかる?」

昔住んでいたのなら街の名ぐらいわかるだろうに…と思

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百物語4「上の音」

百物語4「上の音」

僕は3階建ての古いアパートの3階に住んでいる。古いといっても、昭和40年代に西洋風建築を取り入れた鉄筋コンクリートづくりで、造りはしっかりしている。そうはいっても、やっぱり古い。

少し前からおかしなことが起きている。昼夜構わず天井の上で子どもが走っているような音がするのだ。僕の部屋は最上階の3階だから天井の上ということは屋根の上を走っているということになる。ベランダに出て屋根の上を観察してみるが

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「彼女」

「彼女」

都会生活が嫌になって、流行の田舎暮らしをしてみようと関東近郊のC県の山奥に建つ古民家を買って住んでみた。その古民家は約100坪の土地付の100万円という値段だけあって、屋根以外、ほとんどがボロボロの荒ら屋だった。それを毎週末に通って少しずつ修理して、半年ほどで暮らせるようになった。

それでも実際に移住するまでは1年半ほどかかった。田舎暮らしには時間がかかる。まずは住居まわりの雑草を抜き、大量の砂

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夢日記「隙間」2021/9/23

夢日記「隙間」2021/9/23

ひとりで雑誌の編集をしている。押入れの右端が少し空いて中から荷物がはみ出しているが、上の30センチほどの隙間がある。隙間から何か出てきそうだ。恐怖しながら、その隙間を凝視していると目が覚めた。

新撰組異聞「幽霊」4

新撰組異聞「幽霊」4

2日後…。

「原田、近藤さんの部屋まで一緒に来てくれ」
「は…」どういった風の吹き回しだろう…と思いながら土方のあとについていく。
近藤の部屋の前まで来ると「近藤さん、ちょいといいかい」と土方が声をかけた。
「歳三か、どうした。ああ、原田も一緒か、ふたりとも入りな」と手招きした。
土方が先に部屋に入って近藤の前に座りながら「ふう」とため息をついた。
「どうした」
「あの幽霊のことさ」
「常陸で殺

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新撰組異聞「幽霊」3

新撰組異聞「幽霊」3

「芹沢が故郷で殺した女の霊が、常陸からわざわざ京までやってくるもんですかね」と言いながら沖田が笑った。

「俺たちが清川(八郎)や山岡(鉄舟)と、江戸から中山道を京まで歩いてきた時に一緒にくっついて来たんだろうさ」珍しく土方が冗談を言って笑った。土方は躁鬱が激しい。

「幽霊は疲れないんですかね」

「足がねぇから疲れねぇだろう」と言って土方が笑った。今日はよほど機嫌がいいらしい。

すると沖田が

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東京万景 総理公邸の幽霊

東京万景 総理公邸の幽霊

週刊文春を買ってきました。今は週刊誌400円の時代。高いですね、週刊誌なんてよほどのことがなければ買う気にならないのですが、読みたいというか見たい記事があったからです。

その記事は「菅首相長男「違法接待」本誌が掴んで書かなかった全情報“新音声を入手”」です。菅さんの長髪喫煙アゴマスク写真が見たかったのです。SNSには出回っていますが、どうもSNSは信用ができないのです。誤った情報を引用すれば恥ず

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消雲堂綺談「隧道」

消雲堂綺談「隧道」

もう30年以上前になる。当時、同棲していたU子から不思議な話を聞いた。

その年の夏、U子は岩手県にある実家に里帰りし、高校の同窓会に参加した。同窓会には彼女が高校時代に交際していた及川嘉男も参加する予定だったが、会場には彼の姿が見えなかった。

「嘉男君はどうしたの?」U子が親友のS子に聞くと、好奇心が動いたのか全員がこちらを見て何か言いたそうな顔をした。U子は嘉男に何かあったのだろうと感じた。

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