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新撰組異聞「幽霊」4

2日後…。

「原田、近藤さんの部屋まで一緒に来てくれ」
「は…」どういった風の吹き回しだろう…と思いながら土方のあとについていく。
近藤の部屋の前まで来ると「近藤さん、ちょいといいかい」と土方が声をかけた。
「歳三か、どうした。ああ、原田も一緒か、ふたりとも入りな」と手招きした。
土方が先に部屋に入って近藤の前に座りながら「ふう」とため息をついた。
「どうした」
「あの幽霊のことさ」
「常陸で殺された女の幽霊か」いつの間にか常陸の女の幽霊だということになっている。
「近藤さん、このままにしちゃおけねぇぜ」
「ああ、幽霊はおっかねぇや」
「違うよ、幽霊を利用して芹沢をやっつけちまおうって話さ」
「おいおい、そんな物騒な話を、こんなところでするな…。おい、原田、廊下を見てくれ」
「はい」原田が立とうとすると土方が制して「大丈夫だ。今日は皆見回りに出かけている」と言った。

「沖田も永倉もか」

「永倉は芹沢と一緒さ。そういえば沖田は…姿が見えねぇな」

「沖田ならいいさ。そこら辺のガキと遊んでいるんだろう。そうそう、近藤さん、幽霊祓いをやってみようぜ」と言った。その言葉を聞いて近藤は大きな口を開けて惚けたような表情になった。原田も土方らしくない言葉に驚いた。

「何ですか、それは…面白そうだなぁ」いつの間にか部屋の入り口に沖田が立っていた。
沖田の声を聞いて近藤と土方が飛び上がらんばかりに驚いた。
「馬鹿野郎!」
「そこにいるなら声をかけろ」近藤と土方が本気で怒鳴った。
「何ですか…わたしに聞かれちゃ困る話ですか。幽霊祓いって言うんですから、幽霊を見たわたしにも関係があるんでしょう…」
「ったく…仕様がねぇなぁ」近藤と土方が顔を見合わせてため息をついた。
「でも、幽霊祓いなんて、どこに頼むんですか」沖田が近藤と土方を
「異能さんだよ」
「異能…ああ、六角獄舎の近くにある神主の異能清春(いのうせいしゅん)さんのことか。彼にできるんですか」
「奴は、京都で代々、陰陽師を生業にしてる家の跡取りらしいぜ」土方がそう言って笑った。

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