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『正しい女たち』千早茜が、正論に隠れた女たちの歪みを暴く!不倫や結婚、セックスなどを生々しく描いた短編集

誰しも、人生の節々で、周りの人間に対して「嫉妬」「怖れ」「焦り」を感じたことってあるのでは。

そんな、飼い慣らすのが難しい感情たちを、今回ご紹介する千早茜さんの『正しい女たち』では、心の奥から引きずり出して、生々しく描いています。

正論に隠れた、女たちのグレーな感情を引きずり出した1冊


さいきん紹介する本、こういうジャンルばっかり?すみません、選書はそのときの感情を暴くようです。いまのわたしは、闇の時期です。

20代~30代における、女の付き合いって難しい


もちろん、個人差や地域差があるけれど、だいたい20代~30代って、いちばん多くのライフイベントが待ち構えているのではないか。結婚どうするかとか、仕事での昇進とか。

とくに女性は、妊娠、出産を考えると途端に考えることが多くなるし、周囲の人との環境の違いに、敏感になりがちだと思うのです。

わたしも、20代後半はいろいろ悩んで、闇の時代だったなぁ。Facebookで知り合いの近況を見てはダメージを受けるので、Facebookを削除するという暴挙に出たもん。

なんか、そういう気持ちって、仲の良い人にも打ち明けられない部分だったりしませんか?闇が深すぎて。

何の話?って思った方失礼しました。伝えたかったのは、この『正しい女たち』は、そういう気持ちをすくい上げて、すすいでくれるような本だったな、ということでした。

さまざまな人間関係に揺れる女たちを描いた、6編の短編を収録


収録されている物語は、以下の6つ。

・温室の友情
・海辺の先生
・偽物のセックス
・幸福な離婚
・桃のプライド
・描かれた若さ

どの作品の主人公も、それぞれ環境が異なるので、どこかに引っかかる部分があるんじゃないかなと思います。わたしは、『温室の友情』がいちばん心をえぐられるような痛みを感じて印象に残った。

さいごに、その『温室の友情』から印象的だった一節をご紹介しておわります。

正論を言っては駄目なのだ。伝わらないし、溝をくっきりさせるだけになる。
女の友情はもろいから、ちょっとした環境の違いでひひが入るから、こうやって同じように進んでいくのが一番正しい道。そうしなきゃ、一人ぼっちになってしまうから。

同じように進めたら、どんなにいいだろうかと思うけれど、同じタイミングで進んでいったところで、きっと汚い感情は消えずに残るんだろうなぁ。

こういう本音の部分って、人間関係に疲れてしんどくなったときには、読んでいて不気味な魅力があるものです。ぜひ。

■次はコレ!この本が好きなら、これも好きなはずシリーズ
『終点のあの子』柚木麻子――憧れのあの子と、なりたい自分。とある女子高の女の子たちの成長物語
『踊る彼女のシルエット』柚木麻子――既婚と独身は仲良くできない?アラサーの女友達を取り巻く呪いに立ち向かう、2人の女性の物語
『ナイルパーチの女子会』柚木麻子――人との距離感に悩むすべての人に読んでほしい1冊

↑女同士のイヤーなところ、タブーな部分を描いたものを選んだら、柚木麻子さんの作品ばかりに!

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