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オリジナル星座を考える 第961話・9.12

「夜空には、月以外の天体がたくさんあるのに......」
 夜空を見てその場で横たわりながら思わず息を吐く。満月の夜は嫌いである。横になりながら月の光が強すぎて、ほかの星が見えにくいなどと思っていた。だがいつの間にか眠っていたらしく、気が付けば月よりもはるかに明るい太陽が出ている。

 こうしていつもの一日が始まった。別に普段の生活に何ら不満はない。みんな愛してくれている。だけど、夜になると星空を見るのが好きであった。  
 今住んでいるところは、とある離島。そのうえ家があるのは、港から離れた小高い場所にある。そのため港や漁船の光もなく、夜になると本当に星が良く見えるのだ。

 昔から夜になって星を見るのがずっと好きだった。昼間は昼寝をすることが多いから必然と夜起きていることが多い。こうして夜空を眺めていると、星には大小さまざまな大きさのものが並んでいる。見れば見るほど、光の薄い星を見ようとするためか、目が空に吸い寄せられそうになることも多い。
 もちろん太陽も月も星だけど、そのふたつは極端に明るいので、好きではない。太陽が出る昼間はどうしようもないけど、月のように定期的に満ち欠けをして、それによって星が見えるのに影響があるから嫌い!
 周りのみんな満月を見ながら「スーパームーン」とはしゃいでいるが、それに対して距離を置き、冷静に見ている自分がいる。

「星は無限にある。だから魅力的なのにな」
 本当に星が好きだからこんなことを考えるのだろうか? 星をいつも眺めているから、いわゆる星座にも詳しい。有名な星座であれば暗記をしていて、即座に答えられるほどだ。
 だが恐らく半年くらい前からだと思うが、もう既存の星座に飽き足らず別のことを始めていた。それは自分で星座を創作し始めたのだ。

 これは夜空を見る。直感で目立つ星を意識して即座に記憶。記憶した星を点として、点同士をつないで何に見えるかを試すもの。
「星座そのものが、本来昔の人が星同士に点をつなぎ、さらにそれを骨格として絵をイメージして楽しんだ名残だ。絶対にできるよ」と思って始めてみたが、これがなかなか面白い。

 こうしてできたオリジナル星座。一度そう思い込んだら、それ以降は、夜空の星を見たとき、出来上がった星座の位置に無意識に線がイメージされ、それが記憶として見事に焼き付くのだ。最初はだれの目から見てもはっきりわかる大きな星だけを集めて行った。
 それが一通り終わると、やがて薄い星にもターゲットを絞る。薄い星は見えにくいし、最初見つけても、次見逃す恐れがありあり難しい。だがその分、想像できる点(星)の数が多くなるから、より複雑な形が頭の中で繰り広げられる。オリジナル星座の数もどんどん増えていった。

「いつかみんなに教えてあげたいが......」考えていくうちに自信作が生まれる。目に見える星は、恐らくどれかが〇〇座という既存の星座の構成要素になっているはず。だがその常識を覆そうというのだから、普通に説明できたとしてもみんなそれを受け入れられるかどうかわからない。
 いや受け入れられない方が可能性は高いだろう。それだけ昔からの星座の配列や位置に関してはあまり触れないようだ。

 だが、それでもそのタブーを冒してでもやって発表したい。次々と頭の中に浮かぶオリジナル星座の姿。どうやって伝えたらよいのか?星の見えない昼間は、むしろそのことばかり考えるようになってきた。

「せっかく月が欠けてきたのに、毎日雨と雲ばかり」満月から数日後の夜、またため息が出てしまう。満月の時にはあんなに天気が良かったのに、ここしばらくは天気が悪く、雲が空を覆って星が見えない。
 それに雨が降る日が多く、ときおり強い風が吹き付ける。それは離島の近くには台風が接近する時期になったためであるが......。
 だがあくまで頭の中ででのみ記憶するオリジナル星座、中には忘れてしまうものも多い。
「毎日晴れていて星が見えたら、またイメージ出来てそんな筈はないのだが」と思っていても、なかなか天候が良くならないのだ。
 もしあるときからまた天候が良くなっても、並行して月が満ち始めたら元も子もない。

「記憶に残せないのなら、何かの記録に残しておきたいんだ」本気でそう思っている。だが実行には移せない。残念ながらそういう行為ができないのだ!

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「困ったわね。最近満月に近づくといつも小屋の中に籠って出てこないの。何故かしら」女は目の前にある犬小屋を見てつぶやく。「狼男の逆バージョンみたいだな。こいつ満月を見ると変身でもするのかなあ?」
 女の悩みに男が放ったジョーク。それは女を不機嫌にするのに十分だ。
「オオカミと一緒にしないで!この仔はちゃんと血統書がついているの」「冗談だよ。ごめん」素直に謝る男。女は手を伸ばして小屋の中からかすかに見える頭をやさしくなでる。
「でも心配ね。病気じゃなければいいんだけど、最近は雨の日が多くてあんまり面倒見れあげられないし......」

 そういって飼い主の女は悩んでいた。そうオリジナル星座を考えていたのは、彼女たちに飼われている犬だったのだ。

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