Shinsengumi

 これは幕末、後に新選組(新撰組)と呼ばれる組織の初期のエピソード。
「筆頭局長を排除でござりまするか」
近藤勇は、会津藩から壬生浪士組の筆頭局長の芹沢鴨を排除したい意向を伺った。
「御三家の水戸藩出身のものゆえ、浪士隊の中でも、高い地位を任せておったが、最近の行状、目に余るものがある。商人から借金を重ねるとか、酒癖が悪いとか悪い噂が広まりすぎ。こういった素行の悪さについて、朝廷からも眉をひそめておられておるようだ」

 浪士隊内部の懸念に関わることであって、近藤に伝えている会津の関係者は、その姿がわからないよう、黒ずくめ。

「お考え承知しました。しかし果たして芹沢殿が簡単に同意するでしょうか? 何しろ剣の使い手。場合によっては、水戸派と我等の抗争になるかと。それでは本来の目的から大きく外れてしまいます」

「わかっておる。だから手段については、近藤に委ねよう。とりあえず、かの者たちの排除を願いたい」
 会津関係者は、それだけを伝えると改めて周囲を見渡した。そして即座に立ち去っていく。

 残された近藤は、自らの刀を抜いた。鞘から抜かれた刀は、妖しげな光を放っている。

 会津から芹沢の排除を依頼された近藤。確かに水戸グループは、はっきりしない者もいるが、基本的に武家出身と思われるものが多い。
「試衛館(しえいかん)を中心としたわれらとは違う。元農民で武士を志し純粋に幕府のため、剣で仇名す相手を成敗にかけている我らとは、少し感覚が違う気がしたが、そういうことか」
「会津からの使者でございますか?」「土方、芹沢派の粛正依頼であった」
刀を眺めながら答える近藤。腹心である副長土方の鋭い眼光が、刀に反射して映っている。

「それにしても、かつて清河八郎が将軍警護の目的で提案した、浪士たちを尊王攘夷に利用しようとしたとは言え、京都に留まったおのは、我らと芹沢たちなどわずか」土方の声は近藤以上に、迫力がある。
「そう、そして壬生浪士隊として、3月13日に会津様預かりになったことは今考えても大きい。だがいよいよ芹沢たちを闇に葬るときが来たようだな」「恩義ある、会津様からの依頼なれば」
「そう、土方頼んだぞ」近藤はそう呟くと、手にしていた刀を鞘に収めた。

 こうして近藤たちは、芹沢の暗殺を準備する。

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1863年9月
「さて、今宵の子は? クククック!」この日、自ら率いる水戸派のメンバーと島原角屋で宴会をした芹沢ら数名は、壬生の八木屋に来ていた。この時点でここにいたメンバーは相当酔っている。

 そしてここを急襲したのは近藤勇や土方歳三のグループ。剣の腕があった芹沢であるが、不意を突かれかつ酔っていたので逃げるのが精一杯。
 だが最終的に暗殺に成功する。このほか水戸派の主要幹部もここで近藤派に殺害されていく。
 この事件、表向きは対立する長州藩系の浪士たちの仕業となった。

 そして芹沢派が一掃され以降、近藤勇を局長、土方歳三を副長とする新体制を構築。
 またこの事件が終わった、9月25日、壬生浪士隊に変わって新選組に隊名を変えたと伝わっている。

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シリーズ 日々掌編短編小説 417/1000

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