Aimai 第853話・5.26
「あれ、2日も何してたんだ」俺は記憶を失っていたらしい。なぜ記憶を失ったのかは覚えていないが、まだ頭がくらくらしている。だた日付が丸2日ずれていた。だが記憶がない。丸2日間も眠っていたのだろうか?
俺は、起き上がった。「ここはどこだろう」部屋は自宅に似ているが微妙に違う気がする。俺は確か集合住宅の5階に住んでいるのに、なぜか平屋の家のようだ。外に出た「あれ?」俺はこの風景を見て焦る。知らない世界が広がっていた。と言いつつもこれはデジャブというのであろうか?どこかで見たことがあるような気がしてならない。でも知らないのだ。
少し歩く。別に何の変哲もないような町の中。やがて目の前に小さな劇場がある。今の公演は素人が演じているから無料だというので入ってみた。劇場自体は別にどこにでもありそうなもの。100人くらいの小劇場のようだ。
観客が数人しかいなくてガラガラだから適当な席に座る。
舞台では素人がいろんなコスプレをしていて、各々がパフォーマンスを繰り広げていた。所詮素人レベル旨いわけでも面白いわけでもないが、今の俺は、そもそも現状が不思議であいまいな状況。だからしばらく見ていることにした。
いったん幕が閉まる。このあと後半戦があるという。トイレ休憩があるが、別にトイレに行きたいわけではないので、席に座って待つ。再び幕が開くのかと思えば、時間になっても幕が開かない。「素人が段取り悪いのかな」などと思っていたら、幕が開かない代わりに女性が舞台に上がっている。怯えていて非常に不安そうな表情。でも何が起こっているのか誰もわからない。しばらくして関係者だろうか、ようやく異変に気付きその女性と接触していた。女性はその関係者と何か話をしているが、全く聞こえない。そもそもマイクもなく、かつ地声が小さいから何をしゃべっているのかわからないのだ。ただ顔の表情はわかるひたすら戸惑っている。
「もしかしてこれも舞台のパフォーマンス?」と俺は最初思っていたが、それは違ったようだ。
何か緊急事態が起こったようで、その関係者が女性とともに舞台の奥に向かった。すると席にいた人、せいぜい俺を入れて数名程度であるが、立ち上がり、みんな舞台に向かって歩いていく。「何が始まるんだろう」俺は様子を見ていたが客席にいた全員が舞台に上がるので、訳も分からずついていくように舞台に上がった。
舞台に上がり幕の中に入る。「おい、どうなっているんだ、これ」俺は意味が解らない。というより意識があいまいで何が何だかわからないまま。ただついていった。そこは楽屋だろうか十数人は待機できそうな大部屋がある。そこに女性がいて、「も、モニターが!」と大声を出しながら悲しそうな表情。関係者がその女性をだき抱えて「心配するな大丈夫だ!」と励ました。どうやらこのふたりは夫婦のようだ。さらに女性が小声でしゃべっている。あいまいだが意味が分かった。女性の親と兄弟がどこかに行ってしまったという。
「て、転送、い、異国に!み、みんな」狼狽した女性は意味の分からないことを口を震わせながら断片的に話している。
「この楽屋には監視カメラがあるぞ」男性はそう大声叫ぶ。別の関係者がいったん部屋を出る。すぐに戻ってきてUSBのようなものを持ってきた。「再生しましょう」
そう言ってモニター画面で再生をする。女性と舞台関係者、それからなぜか舞台を見ていた俺を含めた観客。いまだに何が何だかわからない。俺は帰ろうとか思ったが、ここで再生される動画の中身が気になって仕方がない。
動画が再生された。そこは先ほどまでコスプレを着ていた演者たちが映っている。ところがモニターへ次々と人が吸い込まれているではないか!だが吸い込まれているというより、みんな自分の意思でそこに向かおうとしている。女性のコスプレイヤーふたりが「きゃああああ」とディスプレイに吸い込まれながら声を出していた。だが恐怖や悲壮感というより驚きと新しい世界が見られるとばかりに喜んでいるようだ。その後ディスプレイのモニター画面にその女性が入り込んで笑顔で映っていた。さらに女性の肉親たち、親と兄弟?この人たちはコスプレイヤーではなく普通の格好をしているが、女性に対して「行くよ。はやくおいで」と手で招き寄せている。それを見た女性は何度も首を横に振って必死に否定。そこで動画の再生が止まった。
「イスラエルに転送されたみたい」再生後に女性がポツリと一言。俺は訳が分からないなりに、驚きの声を出しかけたが、誰も不思議そうではない黙ってうなづいている。「なぜ、みんな驚かないのか?」俺はなおも不思議であったが「そのうち戻ってくるよ」とみんなが女性を励まし合っていた。それは俺以外の観客もふくめてだ。実はこの観客たちも関係者だったのだろうか?
俺はこっそりその場所から抜け出た。普通に劇場の外に出て、とりあえずさっきまでいた俺が意識を取り戻した平屋の家・部屋に戻る。意識は相変わらずあいまいでぼやけているから「夢か幻か?」と思った。だけど確かめようもない。そのまま家に戻る。部屋の中には楽屋にあったのと同じモニターがあった。俺は気味が悪いからあわててモニターを裏返しにする。
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