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穴の中の君に贈る 第1043話・12.6

「いよいよだな」班長は目の前の横穴の最も奥にある壁をみて満足そうにつぶやく。

「はい班長、次の発破で反対側とつながります。計画から十年、ようやくトンネルの開通ですね」副班長の言葉に班長は何度もうなづいた。
「山に囲まれた村がこのトンネル開通で一気に便利になる。これまでは1時間以上かけて峠を越えたものがトンネル開通で10分かからないだろう」

「君たちいよいよじゃな」ふたりの後ろから声がする。「あ、村長!まだ」「いや、わかっている。じゃがこのトンネル建設のために予算を県に掛け合った日々が懐かしくてな、開通の瞬間を見たかったんじゃ」ヘルメット越しに白い髪が見える作業服姿の村長は壁に視線を向けた。

「発破の準備!」班長の命で準備が行われ、みんな少し離れる。そして号令の下、大きな爆音が響き、一瞬砂ぼこりが舞ったが、直後にその先の反対側が見えた。「やった!開通だ、素晴らしい贈り物だよ」穴の中にいるみんなが一斉に叫んだ。

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シリーズ 日々掌編短編小説 1043/1000

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