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日々掌編短編小説(そよかぜの千夜一夜物語)

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2020年1月1日から、ほぼ毎日掌編小説を執筆中。東南アジア小説をはじめ、興味のあるあらゆるジャンルをネタにして作品を発表しています。ちなみにこちらには「書き下ろし」としてしばら… もっと読む
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2022年3月の記事一覧

立ち入り禁止の先にあるもの 第797話・3.31

「あ、やっぱり来ない方が良かったかしら」ここは暗闇が続く場所。私は立ち入り禁止エリアの先…

山の中の猛獣 第796話・3.30

「おい、あれ見ろよ」山の中で突然長嶋が指をさす。「あれは...…え? なぜこんなところに...…

ハウスの誘惑 第795話・3.29

「そうよね、やっぱり違うわ」見学の帰り道、私は周囲にだれもいないことをよいことに大きくた…

迷うこと 第794話・3.28

「さて、お昼が問題か」私は朝の出勤時、満員電車から解放される最寄り駅のプラットホームに降…

バスに乗り遅れる 第793話・3.27

「じいちゃん、ああバスが!」大学生の大樹は、すぐ目の前をエンジン音と共に過ぎ去るバスを寂…

脱出 第792話・3.26

「ねえ、マジで本気なの?」「もう後には引き下がれない。君と生涯一緒に過ごしたいんだ」  …

平成のマネキン人形 第791話・3.25

「この連休が終われば、私も処分されるのね」ここはあるショッピングセンターが閉店した後の深夜。もう4年ほど前、世間ではちょうど平成から令和に変わったタイミングの話。婦人服売り場にはマネキン人形が置いてあるが、その中の女性の形をしたマネキン人形一体は、不思議なことに意識がある。 「そうか、世間では令和という時代になったのか、30年以上、ちょうど平成の時代をずっとマネキンとして生きてきた私もお払い箱。もうこの顔もついた全身タイプの人形もこのショッピングセンターでは私だけだよね。み

不思議な遊園地 第790話・3.24

「ちょっと、洋平さっきから道に迷っていない?」「大丈夫だ、これ舗装されている道じゃないか…

呼び出された理由 第789話・3.23

「突然こんなところに呼び出して悪いね」会社の上司が野太い声で、私を誘ってきた。ここは会社…

劇場の幕の中 第788話・3.22

「地下の劇場かあ」小生は文化人である。趣味は映画観賞や劇場鑑賞。それから少しだけ絵もたし…

 なんかつまんない 第787話・3.21

「なんかつまんない」いま私は2年ぶりにこの言葉をつぶやいた。「あ、懐かしい。そうそう、あ…

ワインを#呑みながら書きました 第786話・3.20

「ちと渋み?いや、いいや」俺はあろうことか仕事の最中なのに、赤ワインのボトルを開けてしま…

手が髪から取れない 第785話・3.19

「あれ?どうなっているの」私は突然のことに戸惑った。何気なく髪を触っていたが、突然髪と手…

月夜に起こったこと 第784話・3.18

「ふう、」中田月奈は月を見てため息をつく。この日は満月。「月を見ているときが一番ほっとするわ。私の名前に月がついているからよね。多分」 月奈は疲れていた。日々の仕事に忙殺されている。それも精神的に疲弊する仕事だ。 「見えないからって、本当に言いたい放題ね」いわゆるコールセンター業務を行っている月奈。相手からの問い合わせを受ける仕事であるが、無理難題を押し付ける人も多く、それが毎日のように続く。「私、本当はメンタル強い方だったのに...…」  あまりにも相手の言い分がきついこ