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「表情」の重要性〜マスクに隠れてしまう大切なこと

 皆さんはLINEやメール、SNSなんかに顔文字や絵文字使われますか?

私は少ない方だと思います。
夫とは結婚前からずっと黒メール。
夫曰く「絵(顔)文字は言語化からの逃げだ」
まあ人それぞれです。
この“顔文字”、アメリカと日本では違うようですよね。

アメリカ(英語圏)の顔文字

 英語の顔文字、ご存知ですか?
知っている方も多いと思います。

:) 
:D
:(

初めて見る方へ。
これは横向きに見るもので、目が左、口が右にあります。
正面向いたまま頭を90°左に傾けて見てくださいね。

これが英語の顔文字。
なんだか日本的感覚だと表情が乏しい気がします。

日本との違い

 日本の顔文字は皆さんご存知だと思います。

(^_^)
(>_<)
(T_T)

英語圏と日本の顔文字の違い、何だと思いますか?
もちろん向きも違うんですが、もっと根本的に違うこと。

英語では口で表情を表して
日本は目で気持ちを伝えている

ということ。
なんなら、日本では口無しでもいけますね。
(^^) (><) (TT)

どこで気持ちを伝えるか

 もちろん比較の問題で、
英語にも目で伝えるものもありますし
( XD ←こちらから見た表情)
日本にも口で表すものはあります。
(・Д・)ノとヽ(・∀・) 

 でも初期の顔文字を見ると
英語は口で、日本は目で気持ちを伝えています。
英語圏では日本より口元から伝わるものが多いんですね。

口元を覆うマスク

 私の好きなアメリカのクリミナルドラマ、20年程続いていますが
コロナ禍前はずっとマスクを毛嫌いしています。
薬品がばら撒かれたり、病気が流行したりしても
主人公が他の人のマスクを外させちゃうくらい。

 気持ちの伝達で口が重要な役割を果たす国では、
意識していなくても口を隠すことに抵抗を感じる。
欧米でマスクが嫌われる要因の一つかもしれません。

声色やイントネーションにプラスα、
コミュニケーションに重要な部分があるようです。

ろう者にとって重要な部分


 コペルくんwithアヤ先生さんが以前こんなつぶやきをされていました。
このように観察して捉えてくださって、とても嬉しいなと思います。

 皆さんも、首相の会見のワイプ等で手話通訳者が(十分な距離を保って)マスクを外していたり、透明マスクやフェイスシールドで通訳しているのを見たことあると思います。
私も会見の通訳の際には、マスクを取っていました。

 ろう者にとってマスクは、聴者の読唇や表情を読み取る上で
更に手話を扱う上でも、とても“弊害”です。

 口が隠れるくらいで弊害?と思われるかもしれません。
手話では口だけでなく目も眉も、顔全体が重要となります。
それは“表情”とか“気持ち”の次元でなく、言語の一部だからです。

ろう者の言語、手話における顔の役割

口の形、目、眉で意味が変わる

 /得意/という手話があります。
(便宜上、“得意” というラベルをつけた手話単語です)

 /得意/を手で表しながら、
口をぎゅっと一文字にしたら、文字通り「得意」の意味になります。
口を“ポッ”と言う形にした場合、「なぜ?」という意味になります。
口の形で単語の意味が全く変わっていきます。

 そして同じ「なぜ?」でも、
目を目一杯見開いたら、驚きやポジティブな「えー!なんで?」になりますし、
眉をひそめたら、「は?なんで?」となります。
声色やイントネーションに近いかもしれません。

NMM(non manual markers)

 こうした手以外の顔の動きを、手話言語学の世界で
NMM(non manual markers、非手指標識) と言います。
アメリカ手話などでも言及される、手話言語の大事な要素です。

 NMMがないと、意味が通じなかったり
イントネーションのない棒読みやAI音声のようにも感じます。
手話は手と顔で一つの言語。
下手したら逆に顔だけで通じることさえあるほど。

 もちろん、前後の文脈等から推測できることもありますので、
全く通じなくなるということはありません。
それでも顔の動きは言語的に大事な要素なのです。

マスクに隠れてしまった大切なこと

 マスクをすると文化的、言語的弊害が出る国や人がいます。
NMMの他にもろう者の場合は、
マスクのせいで今話しかけられているかさえも見えない、
声色も分からないため、好意的か怒っているのかさえ、話し手の目だけでは量れません。

 もちろん命に関わることですので、マスクの要不要をここでは議論しません。
ただそういった方がいるということを頭に入れておくと、

 最初の挨拶の時、少しだけマスクをずらして(声を出さずに)顔全体を見せる
 筆談でもいつもより少し大きいリアクションを示す
 気持ちをいつも以上に言葉にする


など、見方やコミュニケーションの取り方を変えられそうです。
それはコロナ禍において、ろう者に対してだけでなく
お子さんや周りの方にも応用できることかもしれません。

 顔文字が無機質な文章へ気持ちを付加するように、
皆さんも感情の分かりづらいマスクの時には、
敢えて気持ちを付加したコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。



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