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アンビバレンス

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どんな形容詞も邪魔だ。
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#恋

好きな人が恋する表情を絶望と思わないくらい忍耐と友になってしまった。それでもそれでも、それでも好きだ。貴女の顔は哀しいほど美しい、それを知るのは俺だけだ。

#短文 #恋

理性の二律背反を実感する瞬間とは、好きな人に 君はいい友達だね、と告げられるときではないでしょうか。

#短文 #恋

この詩集、言葉で表すには難しくて雲の上で宙返りするみたいな感覚になるよ、と言いかけたのがすべて引っ込んでしまった。お気に入りの詩集をプレゼントした瞬間、じゃあ今度感想言うわ、と笑顔で見つめ返されたら、今度を楽しみに待つしかないじゃないか。

#短文 #恋 #詩

それ寒くないのと聞く私に、雪の季節だからこそアイスが美味いんだよと笑いかけた彼は、雪の持つあたたかさを常に既に知っていた。私の胸があつくなるのを知らなかったにしても。

#短文 #恋

貴女からの贈り物

貴女からの贈り物

よく実った良質のコーヒー豆を二年以上自然乾燥させ、熟成させたオリジナルのブレンドコーヒーを使用しております、と、和紙に似た質感の、茶色い紙に書かれている。トラファルガー色に一滴、ベージュを垂らしたような、落ち着いた茶色だ。つまり、死を告げるような冬の落ち葉色よりは、ずっと明るく穏やかだ。

その上質さ満点の説明文をひっくり返すと、そちらの面は伝票になっていた。カレーセット、コーヒーは食後、トータル

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プラネタリウムを背負って歩いているのだと錯覚するほど星が綺麗で、夜空が僕だけのためにあると夢見ることができたから、彼女が僕の知るはずのない好きな人とクリスマスを過ごすとわかっていても、嫉妬が0.1ミクロン和らいだ。

#短文 #恋

愛人という言葉が現実で使われるのを、彼女を好きになって、深く知って、初めて耳にした。アイジン。彼女の発した単語はあまりに大人で、宇宙語で、僕は目が回って発狂寸前だった。僕がその歳上男性だったら貴女をそんな風にはしない、と言うのは傲慢か。

#短文 #小説 #恋

普段飲まない彼女が「酔った」と呟いた晩、地球上の海をすべてひっくり返したように僕が悶え苦しんだのを、君は想像できるか。涙すら流されて息ができなかったんだ。
#短文 #恋

待ち惚け

スマホによる連絡を重視しない。
僕の好きな人がそうした人だということは、彼女自身の口から聞いていた。

そして彼女は嘘偽りなく、そうだった。連絡を重視しないのだ。

彼女に会うことの出来ない夏休みは無駄に長く、だからと言って痺れを切らして不適切なタイミングで誘ってしまわぬよう、毎日自分に忠告した。スケジュール帳が秋へのカウントダウンをし始めた頃、ようやく彼女へ連絡を入れてみた。
携帯電話の

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