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#ホラー
異形の匣庭⑬-2 【穢】
無威徳(六道の内の1つ、餓鬼道に産まれた飢えと乾きに苦しむ人)がそのままこの世に這い出たかと見間違う様相を呈していた。
打ち捨てられた納屋よりも風吹けば崩れそうな家。口にはしなかったが、本当に人が住んでいるとは思えなかったのだ。
村へ入るとそれらから群がる蟻が如く何かが出てきて、思わず慄いた。
眼は落窪み頬に張り付いた■■は褪せ痩け、今にも引き裂けそうな程。肉付きの全く無い手足は枯れ枝のよ
異形の匣庭 第二部⑬-1【穢】
自分の叫び声で起きるのはこれで二度目だ。
途轍もなく高い崖の上から落下して、落下し続けて、どんどん暗闇に飲み込まれていく夢。非現実的な夢なのに嫌に生々しく、風やとっぷりと闇に浸かる感覚がまだ体に残ってる。それに最後に僕の背中を押し、来るなと言ったあの声……屋敷にいたあの女の子の物の気がする。ベスに追われるとか屋敷から抜け出せないとか色々見そうなのがある中で、そんなに印象に残っていたってことなの
ムシ ムシ ムシ 第五話【終】
「日本の食料自給率は先進国の中でも低い」
という話を皆さんもどこかで聞いた事があるのではないだろうか。
日本の食糧事情は輸入品に支えられている。台所の61パーセントは輸入品で構築されている訳であり、和食から洋食への移行が主な原因でもある。肉や油の需要が格段に増え、かつ外国製品の低価格に押されて、国内の生産は着実に落ち込んだ。とは言えども、米を先頭に国内生産される穀物や野菜、魚介類なくしては日
ムシ ムシ ムシ 第三話
シンクロニシティ 渡り鳥は隊列を作り集団となって飛ぶ。先頭の鳥の羽ばたきが空気の渦を作り出し、後方の鳥達が少ない力で飛べる様になるからだ。列の順番を順繰り入れ替え飛ぶ事で、先頭の負担を減らし長距離を移動する。
飛行力学を本能的に理解し適用出来るのが、渡り鳥が群れである利点といえる。
逆に鷹や烏、カワセミ等は基本的に単独で行動する。勿論番いになれば別だが、それでも寿命までの大半は単独だ。
彼等
異形の匣庭 第二部⑪-3【囲われた火種】
夜の8時を回り商店の殆どがシャッターを下ろし、街灯だけが等間隔に道路を照らしていた。観光客も地元の人らしき人も数える程しかおらず、勢溜(せいだまり)から宇迦橋にかけてゆっくりと歩き、出雲大社前駅を目指す。路地裏を覗けばいくつか灯りが灯っているけれど、寝台列車が出る出雲市駅まで行かないとそれらしい飲食店は見つからないだろう。列車の時間は勿論だが、そもそも電車の時間もかなりぎりぎりだ。もし逃そうもの
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「今からもう10年も前になりますか……当時燈がアルピニストとして働く傍ら私の仕事を手伝っていたのは話しましたが、道や家、物に関する怪異は勿論ですが、こと山においてその才能を発揮していました。山が好きだというのもあるでしょうし、山に関する怪異が多いのもあるでしょう。とにかく燈の才能は目を見張るものがあり、それを見込んでその日も一件の依頼が舞い込んできました。、どういう死に方だったのかは余りにも惨い為
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