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中編

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少し長めの怪談です。
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#ホラー小説が好き

或る部屋

或る部屋

これは数年前、知人のKから聞いた話である。

Kの実家は京都の中央区にある二条駅から歩いて10分程度行った所にあるらしく、軽く築100年は越えているそうだ。昔ならではの瓦屋根に木で出来た門戸、色褪せた塗り漆喰の壁が古き良き時代を感じさせる。

 そんなKの実家の2階には、半ば開かずの間と化した8畳程の部屋があると言う。そこには掛け軸があり、どの角度から見ても描かれている女と目が合ったり、誰もいない

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固くもなく柔らかくもない「何か」【オカルト】

固くもなく柔らかくもない「何か」【オカルト】

夕暮れ。まだ夏の装いから衣替え途中の山々が、熱くも冷たい風を運んでくるくらいの時節だった。
その日は週末で仕事も終わり、近所の子供達が遊ぶのを眺めながら一人のんびりハイボールを呑んでいた。
毎週ではないが、こうやって一人で呑むのが楽しみでもあり、逆に言えばそれくらいしか楽しみが無いとも言える。ただ、季節の移ろいを肌で感じられるのは、この上ない幸せだった。

子供達がサッカーをしていて、確か5年生く

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海浜公園【怪談】

海浜公園【怪談】

これは私が中学校にあがり、新しく出来た友人達と近くの海浜公園まで遊びに出掛けた時の話です。
家から公園までは2駅と程近く、海開きに合わせて出来たレジャー施設の事もあってそこに行くと決まりました。何処まででも続きそうな海岸線と小さい子供も遊べる遠浅が目玉で、毎年と言っていいくらいテレビで報道されていました。
私達は海に着くなり必要無さそうな浮き輪とカラフルな水鉄砲を取り出して、宿題も学校のあれこれも

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