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固くもなく柔らかくもない「何か」【オカルト】


夕暮れ。まだ夏の装いから衣替え途中の山々が、熱くも冷たい風を運んでくるくらいの時節だった。
その日は週末で仕事も終わり、近所の子供達が遊ぶのを眺めながら一人のんびりハイボールを呑んでいた。
毎週ではないが、こうやって一人で呑むのが楽しみでもあり、逆に言えばそれくらいしか楽しみが無いとも言える。ただ、季節の移ろいを肌で感じられるのは、この上ない幸せだった。

子供達がサッカーをしていて、確か5年生くらいだと思うが、その子が明後日の方向に飛ばしたボールを、下級生と思しき子供が取りに行った時だった。

音にするならボムンといった感じだろうか。
ボールを取りに行った子供が突然何かに弾き飛ばされた。まるで目の前に大きな木でもあるかのように、走っている方向とは逆に体が飛んだ。
私は目を疑った。子供達との距離は50メートルも無い。ガラスでもあるのならそれが認識出来ないわけが無い。勿論その空間には何も無いし、ぶつかった子供も何が何だかと呆然としている。暫くしてボールを拾ってきた上級生から詰め寄られ、しどろもどろに返答し、立ち上がる。それに合わせて私も自然と立ち上がっていた。

何やら言い合いになっている様だったが、口の動きで「まさか」と言ったのが分かり、上級生はその何かがある場所へと手を伸ばした。
「うおぉっ!?」
と、声を上げた事で、確証へと変わった。

そこに見えない何かがある…… 

吸い寄せられる様に私はその「何か」の元へ歩いた。

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