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輪廻の風 第1章

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輪廻の風 (18)

「お、おい金髪…ここで何してんだ?」

男の声は震えていた。
この4人はマフィアというだけあって、中々の強面だった。体格もがっちりしている。

しかし、カインに対して得体の知れない恐怖感を抱き、まるで蛇に睨まれた蛙の如く畏怖し体が硬直してしまっている。

「ちょっと、何の騒ぎ!?」
大きな声でそう言いながら、少女がずかずかと部屋に入ってきた。

「ジェシカさん!こいつらここで暴れてたみたいで、一体

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輪廻の風 (16)

夕日が沈み、外はあっという間に真っ暗になった。

エンディとカインは物陰に隠れ、密漁船の様子を伺っている。
船上から魚網を引き上げている人影が見えた。

「よし、あそこまで泳いでこっそり忍び込もう!」

「待てよ、よく見ろ。」

カインに言われた通り船の近くに目をやると、海面に人影が浮かんでいるのがうっすら見えた。

どうやら魚網を持って素潜りをしいる乗組員がいるようだ。

もしこのまま泳いで船に

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輪廻の風 (14)

円柱型の巨塔はかなり年季の入った建物だった。

周辺には浮浪者のような見た目の男たちが数人、土木工事や湖の除染作業を行なっている。

彼らは所謂、奴隷のような存在なのだろうとラーミアは直感した。

大きな扉が開き建物に入ると、中にはダルマインが引き連れている兵隊たちと同じ戦闘服を着た者が何人もうろうろしていた。

「お疲れ様です!提督!」

「うるせえな、別に疲れてねえよ!」

ダルマイン一行の帰

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輪廻の風 (3)

そんなことをぼんやりと考えていたら、気がつくとパウロの家に招かれていた。

大地主というだけあって、立派な屋敷だった。

牧場の様な広い庭で、農家の人々が家族を連れて50人ほど集まった。小さな子供も数人いた。エンディもその輪に入れてもらい、みんなでバーベキューをした。

「さあ、どんどん食え!小僧、お前は町を、何よりこのわしの命を救った英雄だ、今日はみんなで盛大にもてなしてやるわ!」

「おおーー

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輪廻の風 (2)

「逃げるな!みんな!」
「何言ってんだよパウロさん!あんたも逃げろ!」

土の香りがする広大な麦畑やオリーブ畑の周辺を歩いていると、遠くで2人の男性が声を荒げているのが聞こえた。

何事かと思い、声のする方に目をやると、40人弱の農民たちが悲鳴をあげながら一目散に畑から逃げるように走っていた。

彼らが走ってきた方向に目をやると、パニックになっている原因が分かった。巨大なクマが畑を荒らしていたのだ

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