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輪廻の風 第2章

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2021年10月の記事一覧

輪廻の風 2-10

エンディは、ドクンと自分の心臓の高まりを感じた。

このフードを被った黒装束の男は何者なのだろうか。

どこかで感じたことのあるこの空気感。
ひょっとすると、どこかでこの男と会ったことがあるのではないかと、エンディは思った。

「誰だろうね、あれ。」
ラベスタは黒装束の男を指差しながらエンディに向かってそう言ったが、エンディの耳にその言葉は届いていなかった。

「君、どういうつもり?」
バレンティ

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輪廻の風 2-9

「よし、決めた。」
狭い部屋でそう呟き、エンディは立ち上がった。

すると、コンコンと音が聞こえた。
誰かが部屋のドアを2回ノックしたようだ。

エンディは音に気が付き、急いで玄関に向かってドアを開けた。

ドアを開けると、そこにはラベスタが立っていた。

「あれ、ラベスタじゃん。どうした?」

「エンディ、突然ごめんね。ちょっと今後のことについて、エンディと色々と話し合いたいなと思って。」

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輪廻の風 2-8

翌日、ディルゼンの某広場でレガーロ国王の国葬が急遽執り行われた。

時刻は正午をまわっていたが、曇り空のせいで日中とは思えないほど外は薄暗かった。

レガーロの亡骸が納棺された真っ白な棺の前には遺影が置かれていて、そのまわりには花束が手向けられていた。

遺影に写ったレガーロは、生前の厳格さを彷彿とさせるような威厳のある表情をしていた。

広場に駆けつけた国民達は喪服を身につけ、総じて悲しそうな表

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輪廻の風 2-7

玉座の間は騒然とした。

いつも表情が全く読めないバレンティノが、この時だけは目を丸くして驚いていた。

「マルジェラって…たしか行方不明になっていた将帥の??」エンディが驚きを隠せない様子で言った。

「おい…まじか?」エスタがジェシカとモエーネの方に顔を向けて言った。

「分からない…私は近衛騎士団に入団する前にチラッと見たことあるだけだし、鳥の姿に至っては初めて見るわ…。」
ジェシカが恐る恐

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