makishi

フォトグラファー。 偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現…

makishi

フォトグラファー。 偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」を捉え、アーカイブズ学的な視点で撮影している。 https://singularityjourney.org/

最近の記事

  • 固定された記事

『葦嶽山と巨石群』- 奇想の宗教家が発見した古代の聖地

偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は 広島県庄原市にある『葦嶽山と巨石群』を取り上げる。 『葦嶽山』とは神武天皇陵説のある別名「日本ピラミッド」 『葦嶽山』とは広島県庄原市の東部、本村町にある標高815mの低山。登山道は初級と中級程度のコース分けがあり、道も程よく整備されてあるため登りやすい。どの方向から見ても三角形に見えるその神秘さから、地元では神武天皇陵説が伝承しているが、考古学的な証

    • 『特異点紀行』- 偽史、フェイクロア、創られた伝統を巡る旅路

      はじめまして。私のnoteは各地の偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を巡り、撮影した写真を投稿しているフォトグラファーです。しかしながら、それらは中々聞きなじみのない言葉かと思います。ですので、簡単な説明を行うとともに、なぜ私がそのような撮影を行っているかを述べたいと思います。 偽史とは偽史とは、偽りの内容、歴史でありながら、史実として語られ伝承してきた出来事や文献、史跡などです。例えば近年話題となった、近畿一円に頒布している『椿井文書』。江戸時代

      • 『信州上田・塩田平のレイライン』- 文化庁認定のオカルト町おこし

        偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は長野県上田市の『信州上田・塩田平のレイライン』を取り上げる。 『信州上田・塩田平のレイライン』とは長野県上田市が発信している、地域の歴史・風土にまつわる説 『信州上田・塩田平のレイライン』とは、長野県上田市にある信濃国分寺、生島足島神社、別所温泉に至るまでが、一直線上に配置されているという説のこと。そしてその線は「レイライン」という、夏至と冬至に太陽が照

        • 『肘神神社』- これから伝統を創るかもしれないニューカマー神社

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は岐阜県高山市本町にある『肘神神社』を取り上げる。 『肘神神社』とは2018年創建の「肘神様」を祀る神社 『肘神神社』とは、2018年というかなり新しい時代に創建された神社である。祭神はその名の通り、肘の神様が祀られている。概要だけ見れば、一風変わってはいるが、そういう由緒の神社もあるかと思われる人もいるかもしれない。しかしこの神社最大のポイントは、その由

        • 固定された記事

        『葦嶽山と巨石群』- 奇想の宗教家が発見した古代の聖地

        • 『特異点紀行』- 偽史、フェイクロア、創られた伝統を巡る旅路

        • 『信州上田・塩田平のレイライン』- 文化庁認定のオカルト町おこし

        • 『肘神神社』- これから伝統を創るかもしれないニューカマー神社

          『楊貴妃の里』- 限界集落を救う傾国の美女が眠る地

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は山口県長門市油谷向津具下久津にある『楊貴妃の里』を取り上げる。 『楊貴妃の里』とは楊貴妃が難を逃れ漂着したとされる場所 『楊貴妃の里』とは、世界三大美人の一人である楊貴妃が流れ着き、その後息を引き取ったとの伝説がある地。歴史上では、中国が唐の時代(618~907年)、755~763年にかけて中国で起こった安史の乱にて没したとされている。しかし実は、そこで

          『楊貴妃の里』- 限界集落を救う傾国の美女が眠る地

          『湊川神社』- 信仰心と国家思想が交差した近代神社

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は 兵庫県神戸市中央区にある『湊川神社』を取り上げる。 『湊川神社』とは明治に創建された、楠木正成を祭神とする神社 『湊川神社』とは、鎌倉末期~南北朝時代に活躍した武将である楠木正成を祭神とする神社。兵庫県内有数の参拝客を誇り、特に初詣は多くの人で賑わう神社だが、創建は1872年と歴史としては新しい。 楠木正成の戦没地が湊川だった そもそも、湊川の地と

          『湊川神社』- 信仰心と国家思想が交差した近代神社

          『平安神宮/平安遷都紀念橖』- 近代国家が創造した伝統的モニュメント

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は 京都府京都市左京区にある『平安神宮』と『平安遷都紀念橖』を取り上げる。 『平安神宮』とは明治に創建された、平安遷都1100年を記念する神社 『平安神宮』とは、1895年に平安遷都1100年を記念した「平安遷都千百年紀念祭」に際して創建された。祭神は、遷都を行った桓武天皇と、生涯を平安京内で暮らし崩御した孝明天皇である。 『平安神宮』が建つ前の京都市街

          『平安神宮/平安遷都紀念橖』- 近代国家が創造した伝統的モニュメント

          『伝説の森 モーゼパーク』- 町おこしの資源となった聖者が眠る地

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は石川県羽咋郡宝達志水町河原にある『伝説の森 モーゼパーク』を取り上げる。 『伝説の森 モーゼパーク』とは聖者モーゼが葬られたという伝説が残る場所 『伝説の森 モーゼパーク』とは、古代イスラエルの指導者、モーゼが葬られたとされる宝達山の三ツ子塚古墳群を整備した公園である(入場無料)。 モーゼは神から、奴隷として虐げられていたユダヤ人を、エジプトから脱出し

          『伝説の森 モーゼパーク』- 町おこしの資源となった聖者が眠る地

          『太郎稲荷神社』- 熱狂的な信仰を集めた名もなき神

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は番外編として、東京都台東区にある『太郎稲荷神社』を取り上げる。 『太郎稲荷神社』とは江戸時代に、病除け・病気平癒の神としてブームとなった神社 『太郎稲荷神社』とは、東京都台東区入谷にある神社。浅草田圃(浅草新吉原にあった水田地帯)にあった、九州・柳川藩立花家の下屋敷の鎮守として、国元から勧請された。 ここは江戸時代、疫病に対する除けや平癒を祈願する場所と

          『太郎稲荷神社』- 熱狂的な信仰を集めた名もなき神

          『はりつけ松跡』- 創作の悲話が伝承する跡地と地域振興

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、兵庫県丹波篠山市にある『はりつけ松跡』を取り上げる。 『はりつけ松跡』とは明智光秀の母親が殺された場所 『はりつけ松跡』とは、戦国武将・明智光秀の母親、牧が殺害されたという場所。兵庫県丹波篠山市の高城山の山中にある。ここは、室町~戦国時代にかけて築かれた「八上城」が存在した場所で、波多野氏が本拠地としていた。 波多野氏の降伏条件として人質となったお牧

          『はりつけ松跡』- 創作の悲話が伝承する跡地と地域振興

          『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』- まちづくりの核となった偽の絵図

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、滋賀県湖南市にある『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』を取り上げる。 ※2024年5月20日、文化財の指定解除となる報道が出ました。本記事はそれ以前に撮影・執筆したものです。 『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』とは中世にあった少菩提寺の姿を描いた絵図 『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』とは、室町時代、近江国甲賀郡菩提寺村(現在の滋賀県湖南市菩提寺)にあった少

          『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』- まちづくりの核となった偽の絵図

          『伝王仁墓』- 偽文書が紡いだ伝承と日韓交流

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、大阪府枚方市にある『伝王仁墓』を取り上げる。 『伝王仁墓』について王仁とは 王仁(わに)とは、4世紀末から5世紀初め、応神天皇の時代に朝鮮半島の百済から、日本へ『論語』や『千字文』をもたらしたとされる人物。『古事記』『日本書紀』『続日本紀』といった史記に、王仁に関する記述はあるが実在したかは疑問視されている。加えて、『千字文』は4世紀には存在しないとさ

          『伝王仁墓』- 偽文書が紡いだ伝承と日韓交流

          『伝 阿弖流為 母禮之塚』- 由緒不詳の首塚に生まれた虚構の伝承

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、大阪府枚方市にある『伝 阿弖流為 母禮之塚』(通称アテルイの首塚)を取り上げる。 阿弖流為(アテルイ)と母禮(モレ)アテルイとは、8世紀末から9世紀初頭に、陸奥国胆沢(現在の岩手県奥州市)で活動した蝦夷(えみし)の族長である。モレとは、アテルイと同時期に蝦夷の族長の一人であったとみられている。 蝦夷とは、本州東部や以北に居住し、政治的・文化的に、大和朝廷

          『伝 阿弖流為 母禮之塚』- 由緒不詳の首塚に生まれた虚構の伝承

          『継体天皇樟葉宮跡伝承地』 - 創作された伝承地という特異点

          『継体天皇樟葉宮跡伝承地』とは『継体天皇樟葉宮跡伝承地』とは、大阪府枚方市にある交野天神社の境内にある、末社貴船神社が鎮座する小丘周辺のことを指す。ここは、継体天皇が即位した樟葉宮跡の伝承地として、大阪府指定史跡にもなっている。以下は、枚方市ホームページの引用である(2024/1/18現在)。 交野天神社について 交野天神社は、京阪電車「樟葉駅」から徒歩20分程度の距離にある神社である。閑静な住宅街の中に突如現れる原生林に覆われた境内一画は、そのコントラストからどこか非

          『継体天皇樟葉宮跡伝承地』 - 創作された伝承地という特異点

          「創られた伝統」として見る初詣

          「日本の伝統」の正体2023年末、興味深い書籍に出会った。藤井青銅氏の著書、『「日本の伝統」の正体』である。この本によると、我々が伝統だと認識している日本の文化の中には、意外と新しい時代に創られた伝統があるようだ。 その中で目を引いたのが、「初詣」という文化が確立されたのは、明治時代以降であること。 初詣以前は何だったのか 初詣には、その起源となる「年籠り」、「初縁日」、「恵方詣り」といった「初詣に似た伝統」が江戸時代以前からあった。 鉄道の開通とその宣伝・集客広告

          「創られた伝統」として見る初詣