見出し画像

最強のラブコメヒーロー『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

はじめに

 現在、絶賛大ヒット中の映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に備え『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を見ました。この作品、とんでもないクオリティの最強ラブコメヒーロー映画でした。

【あらすじ】
 夏休みのヨーロッパ研修旅行でMJに告白することを決意するピーター・パーカー。でも彼はスパイダーマン。旅行中だとしても、突如襲い掛かる水圧オバケ(海坊主みたいなものです)相手に、正体を隠しながら闘わなければならない。そんなときにもMJに近づく恋敵。でも闘わなければならない。
 いざ、戦闘に苦戦するピーター・パーカーだったが、ミステリオというオトナな新参ヒーローに助けられる。恋の相談にも乗ってくれるミステリオに惹かれていくピーター・パーカーは、自分じゃなくて彼こそがポストアイアンマンだと思うようになるのだった。
 そして、ポストアイアンマンの仕事と権限をミステリオに一任し、肩の荷が下りたピーター・パーカーは、ついにMJに告白しようとするのだったが……。

 まず、率直な感想として、家で映画を見てこんなに笑ったのは本当に久しぶりでした。こんなに胸が熱くなったのも久しぶりでしたし、キュンキュンしたのも久しぶりでした。エンターテインメントとしてこれ以上の体験はないんじゃないかと思えるほどの素晴らしい視聴体験。見終わってからもしばらく興奮が冷め止むことがなく、すでに最新作への期待度がぶちあがっています。

 では『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』がこんなにも素晴らしかったのは何故だったのでしょうか? その理由は完璧な構成にあると思います。この作品、前半はラブコメに徹し、後半はヒーロー映画に徹するという見事な構成になっているのです。

圧巻の構成

 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』はラブコメとして物語が始動します。スパイダーマンの中の人であるピーター・パーカーMJという同級生にをしています。そして夏休みの旅行中に告白することを決意します。

 こうして物語ははじめ「どうやってピーター・パーカーはMJに告白するか?」というミッションを軸に走り出すのです。が、このミッションは当たり前ですがそうはうまくはいきません。物語上非常に巧みに様々な足枷が設定されています。整理するとこのようになるでしょうか。

【ミッション】
 ・旅行中にMJに告白
 ・スパイダーマンだとバレてはいけない


【足枷】
 ・スーツを家に置いたまま集団で旅行に出てるっていうシビアなシチュエーション
 ・シビアなシチュエーションで次々やってくる強い化け物という障害物

 旅行は楽しむつもりで出ているので、ピーター・パーカーはスパイダーマンのスーツを持っていませんでした。そんな状態で化け物と出会えば、素顔をさらしながら戦わなくてはいけません。しかし、MJには自分がスパイダーマンだとはバレてはいけません。それはバレてしまえば彼女にも危険が及ぶからです。

 そもそもスパイダーマンシリーズは、ラブコメとしてのポテンシャルを相当に秘めているシリーズだと言えます。それは「MJにスパイダーマンであることをバレてはいけない」という設定があるからです。この設定はそのまま

 こちらの記事にも出てきたラブコメ二大設定「主人公が、恋の相手に対し、嘘をつかなくてはいけない状態に陥る」に当てはまります。嘘がバレないように四苦八苦する主人公の滑稽さがコメディを生み出す。スパイダーマンシリーズはそういったラブコメ的設定をすでに備えているという意味でラブコメ演出と非常に相性が良い作品なのです。このファー・フロム・ホームは過去一番その設定を活かした作品と言えるでしょう。

 そう考えると、旅行先のピーター・パーカーはあまりにもシビアな状態です。素顔をさらしたまま戦うとMJに正体がバレてしまう。でも次々現れる強い化け物。犠牲者は増えるばかり。さあどうすればいいのでしょうか。このようなシビアな状態でバレないように四苦八苦するピーター・パーカーも一つの映画の見所になります。

 一方で、旅行中にMJに告白するためにとれる戦略は「バレないようにこっそり化け物と戦う」だけではありません。化け物なんかそっちのけで無視してMJとイチャイチャしてしまうという戦略もあります。

 もちろんアベンジャーズの一員であり、サミュエル・L・ジャクソンの監視下にあるピーター・パーカーにとってこの戦略も非常に困難な道のりになるのですが・・・・・・。このあたりののらりくらりヒーローとしての重責から逃れようとしてしまう、恋にうつつを抜かそうとしてしまう、ピーター・パーカーの可愛さもまた本作品の見所となります。

 このように、前半は王道ラブコメとして素晴らしい完成度となっています。本作がもし、このラブコメ的面白さを最後のシーンまで引き延ばしたような100%ラブコメ作品だったとしても楽しめる作品になるでしょうし、評価は高かったのではないでしょうか(むしろ100%ラブコメ版スパイダーマンをスピンオフでやってほしいくらい)。しかし、この作品はアベンジャーズシリーズの作品。そうは問屋が卸しません。後半から風向きが変わってきます。

後半の胸アツ展開の妙

 恐ろしいくらい完璧なラブコメ設定を備えているスパイダーマンシリーズ。その持ち味を存分に生かし、MJに告白するために孤軍奮闘するピーター・パーカーのおかしさ・滑稽さ・可愛さを存分に描いた本作品の前半は、驚きの展開で幕を閉じます。ネタバレになるので言いませんが、見事に次の展開へと進んでいくことになります。

 具体的に言うと、ストーリーのロジックが「バレずに告白大作戦」から「いかに愛する人を守るか」というものに華麗に変化していくのです。この流れはあまりにもスリルフルでサスペンスフルで本当に面白い。思わずため息をついてしまうほどでした。

 そしてこの「いかに愛する人を守るか」というストーリーのロジック、これは完全にヒーロー映画の一丁目一番地に違いありません。こうして本作は後半、ラブコメ作品からヒーロー映画に脱皮し、観客のボルテージをマックスまで上げにかかってくるのです。

 これは同時に、ポストアイアンマン重責を抱えてそこから逃れようとすらしていたスパイダーマンが、一皮むけ本物のヒーローへと一歩踏み出したことを意味します。恐ろしいくらいに完璧な構成です。前半のラブコメ展開はそれだけですら面白いという完璧な代物なのに、後半のスパイダーマンの成長を際立たせるフリにもなっていたとは。

 スパイダーマンがいかにこの困難を乗り越え、愛する人を守り抜くのか。いかにヒーローへと成長するのか。これが後半の大きな見所となります。ほかにも、トムホランドやゼンデイヤのキャラクターの魅力も非常に大きい!!! とにかく、この映画は是非みんなにも見てほしいです。非常に自信をもっておすすめできる作品となっております。何卒是非みてください!!!



この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?