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7月26日の新聞1面のコラムたち

 涌井慎です。趣味は新聞1面のコラムを読むことです。今日の読売新聞『編集手帳』は祇園祭の山鉾巡行について書いていました。正岡子規ちゃんが夏目漱石ちゃんと一緒に訪れたのは、明治25年7月のこと。

祇園会や二階に顔のうづたかき

見物客のようすを写した句を詠んでいます。山鉾巡行は今年、鷹山が196年ぶりに復活しました。今年は3年ぶりの巡行となりましたが、大きく話題になったのが、鷹山の復活。どの山鉾もそれぞれが素晴らしい「動く美術館」とも呼ばれる山鉾巡行ですから、鷹山ばかりでなく、他の山鉾についても、ある程度、平等に取り上げてほしかったりもするんだな。それを義務付けてしまうと政見放送みたいな体たらくになってしまいそうですが。

その祇園祭の舞台、京都の新聞、京都新聞の『凡語』はイギリスのジョンソン首相の後任を決める与党・保守党の党首選挙についてでした。インド系のスナク元財務相と女性のトラス外相の2人に候補が絞り込まれました。二人とも40代ですから、私とさほど年齢は変わりません。ほぼ涌井世代から首相が誕生することが、日本ではあまり想像できませんが、イギリスではブレアちゃんもキャメロンちゃんも40代で首相に就任していますし、フィンランドやニュージーランドでは、30代で就任した女性首相が活躍中です。30代なんて還暦越えた人から見たら「いまどきの若いもん」ですよね。文句ばっかり言ってないで、未来を託す懐の深さを日本の偉い人にも見せてほしいけど、この国の人たちは死ぬまで自分がいちばんカワイイのです。それは私もそうですけれど、幸いにして私はあまり偉くない。

それにしても日本は投票率が低い。他の国のことを知りませんが、紅白歌合戦の視聴率じゃないんですから50%とかではいけないでしょう。どうすれば、みんな選挙に行くのでしょう。ここで大事になってくるのが、知らずうちに「行こう」という気にさせるやり方であり、これは英語で「そっと突く」という意味の「ナッジ理論」にヒントがあるように思います。朝日新聞『天声人語』には「ナッジ」について書かれていました。尾瀬国立公園にはトイレが18カ所ありますが、下水道がなく、汚泥を乾かし、空輸するんだそうですが、1カ所につき年1千万円かかるらしい。1回100円を集める箱を置いたところ、センサーで数えた使用者から割り出した支払額は1回平均24円。4人に3人が支払っていないことになります。そこで女児のつぶらな瞳を大写しにしたポスターを貼ったところ、平均34円まで跳ね上がったんだそうです。これが「ナッジ」です。利用者が「他人の目、特に次世代の目を意識したのかもしれない」とは尾瀬保護財団事務局長の石井年香ちゃん。そのポスター、選挙のときにも貼れんかしら。選挙だと貼っても意味はないかしら。だって私たち、死ぬまで自分がかわいいんだもの。嘆かわしや。

産経新聞『産経抄』は桜島の噴火について。桜島の「大正噴火」は、大正3年1月12日に発生しました。鹿児島県内には、大正噴火の惨禍について記した石碑が60以上も建ってあり、その一つ東桜島小学校の校庭に建つ「桜島爆発記念碑」の碑文には、「住民ハ理論ニ信頼セズ」の一節があります。当時地震が頻発していた桜島でしたが、村長の問い合わせに対して、地元の測候所は「噴火はない」と回答していました。これを信じて島外への避難を思いとどまった住民が大きな被害を受けたわけです。碑文の「理論」というのは、測候所の予測の誤りを指しています。いまに活きる教訓といえましょう。気象庁の予測でも「空振り」と「見逃し」という言い方があります。例えば大雨注意!避難すべし!と発表しておいて「降らへんやないかい!」というのが「空振り」。逆に「噴火はない」と言った測候所のおっさん(おっさんかどうかはわかりませんが)のやったのが「見逃し」です。どちらがマシかといえば「空振り」ですが、空振りも繰り返しすぎると狼少年になってしまいますから難しいところです。信頼に足る組織であるかどうかが大切なのは、測候所や気象庁に限った話ではないでしょう。お金の使い方をよくわかっていない政府のことを、どうして信頼できましょうか。

お風呂が気持ちいい、というくらいの信頼感が欲しいものです。毎日新聞『余録』によると、今日7月26日は「夏風呂の日」らしい。読売新聞『編集手帳』にも名前が出てきた夏目漱石ちゃんもお風呂好きだったらしい。学生の町、京都には銭湯が多い、と思いきや、それでも総数は随分減っているらしい。全国的にみても、1968年の1万7999軒から減少が続いていて、今年4月には1865軒にまで減ったそうです。高度経済成長期に風呂付き住宅が増えたとか、若者のシャワー志向とか、いろいろ原因が書かれていますが、私は、銭湯の常連たちが作ったよくわからない謎ルールに反発する新規の利用者が離れてしまったのも、実は大きな原因なのではないかと睨んでいます。閉鎖的で知らん顔が入ってくるのを常連ちゃんたちどころか、番台に座ってるおっさんですら嫌がってる銭湯もありますからね。ああいう銭湯は無くなってくれたらいいのに。無くなってほしくない銭湯だけ無くならないでほしい。

1回目の東京オリンピックは1964年ですから、その頃には銭湯はきっと今の10倍くらいあったんでしょうね。50年以上の時を経て、何もかもが変わってしまった日本・東京。ちょうど1年前、日本卓球界に初の金メダルがもたらされました。東京オリンピック、卓球混合ダブルス決勝で、水谷隼ちゃんと伊藤美誠ちゃんが中国のペアに勝利しました。あれから僕たちは何かを信じてこれましたかね。大会の経費は1兆4千億円余り。余計な経費だったのか、必要なお金だったのか。ちゃんとお金を使える人にお金を使ってほしいと願うばかり。負の遺産は銭湯の常連ちゃんの作った謎ルールだけで十分です。

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