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読書感想文【ツァラストゥストラ】フリードリヒ・ニーチェ著

こんにちはコウカワシンです。

今回は、フリードリヒ・ニーチェさんの著書【ツァラストゥストラ】から学ばせていただきます。

上記の本だけでは内容が難しいので、下記の解説本も利用しました。

【ツァラストゥストラ】をわかりやすくしたマンガ版がコレ!

ニーチェをよく知るために必須の本がコレ!

これらの本を読んでわかったことです。

【ツァラストゥストラ】は、ズバリ!「何も信じなくていい。あなたはあなたを信じなさい」と、気持ちを前向きにしてくれる本です。

本書の著者フリードリヒ・ニーチェ(以下ニーチェ)さんは、1844年生まれのドイツの哲学者です。

小さいころから神童として有名で、25歳の若さでパーセル大学の教授になられました。順風満帆な人生かと思いきや、出す本は売れず、意中の女性にはフラれ、一生独身、精神異常が災いしてか55歳の若さで亡くなったのです。

そんなニーチェは、この【ツァラストゥストラ】に「創造的に生きよ!」という強いメッセージを込めました。

ツァラストゥストラとは?

【ツァラストゥストラ】は、「人類への最大の贈り物」「ドイツ語で書かれた最も深い作品」とニーチェが自負する永遠の問題作といわれています。

本書の主人公は題名と同じ「ツァラストゥストラ」という山から下りてきて人々に説教をする「隠者」です。

いわば、ニーチェの分身ともいえる人物ですね。

冒頭の「神は死んだ」で度肝を抜き、キリスト教の道徳を激しく批判し、おごそかさや重さをせせら笑い、歌い、踊るといった常識離れの様相をこの物語では流れるように進めていきます。

このふつうではない物語にニーチェの主張が色濃く描かれているのです。

【ツァラストゥストラ】の骨組み

この【ツァラストゥストラ】には、人間だったら誰もが経験したり頭の中で浮かんだり考えたりするであろう理想や妬み、絶望といった一連の行動が記されています。

それは次のようなことです。

ルサンチマン

ルサンチマンとは、弱者が敵わない強者に対して内面に抱く、「憤り・怨念・憎悪・非難・嫉妬」といった感情を指します。

それを踏まえ、弱い自分は「善」、強者は「悪」とする「価値の転倒」のことでもあります。

たとえば小説や演劇、テレビドラマや映画などでルサンチマンがよくみられます。

あの池井戸潤(いけいど・じゅん)さんの下町ロケットでは、強者である大企業が弱者である中小企業をねじ伏せようとする構図により大企業が「悪」、中小企業が「善」であるとするのが典型的なルサンチマンといえますね。

ニヒリズム

ニヒリズムとは、本当に信頼できる真理や価値などは何もないとする考え方や精神状態を指します。

虚無(きょむ)主義ともいわれます。

ニーチェに言わせれば、ニヒリズムは、「絶対的な価値が消失すること」「絶対的な目的がなくなること」「絶対的な意味がなくなること」とし、これにより「生きる意味なんて存在しない」となるのです。

「生きる意味がない」のに、生き続けるということは、何の理想や希望もなく生きることであり、これではいけないというのがニーチェの意見です。

そういうニヒリズムにとらわれた人生を歩むと人は徐々に「末人」(まつじん)になってしまうとニーチェは言います。

末人(まつじん)

末人とは、ひたすら安楽を求める人を指します。

社会において最高価値が信じられなくなりニヒリズムが広がってくると、人々は頑張らなくなり創造性を欠いた安楽を求める人間ばかりになります。

末人というのは社会において生きる大多数の中流市民がそうです。争いや摩擦を避け次第に主体性さえもなくしていきます。

誰もが平等であり、誰もが平等を望む社会ということでもあるのですが、ニーチェは主体性のない人間ばかりになってはいずれ滅びてしまうとまで言います。

ではどうするか?

それは「超人」(ちょうじん)になることだとニーチェは言います。

超人(ちょうじん)

ニーチェが言う超人とは、ひとことで言えば「世間一般的な人物ではない人」となります。

つまり「常識人間ではない人」ということなのでしょう。

ツァラストゥストラは民衆にむかってこう言います。

「人間とは、動物と超人のあいだに張りわたされた一本の綱なのだ、~深淵のうえにかかる綱なのだ。

人間における偉大なところは、それが橋であって、自己目的ではないということだ。人間において愛されるべきところは、かれが移りゆきであって、没落であるということである」~と。

【ツァラストゥストラはこう言った(上)】

これだけでは意味がわからないですよね。

ニーチェが言いたいのは、人間は現状維持ではダメで、人間のままでいることが目的であってはならず、超人になるべきであり、それができない場合には、超人の素質を持った者が超人になれるように橋渡し役を務めること、ということだそうです。

第一部、第二部では「超人のために没落せよ」という言葉が何度も繰り返されます。

これは「あなたが超人になれなくても、超人の素質のある人のために努力して死んで行け。自分のあとに超人が生み出さればいい」ということです。

つまり人間というものはそのままでは価値がない、価値があるのは超人のみだということです。

永遠回帰(えいえんかいき)

永遠回帰(えいえんかいき)とは、この世界は、全てのものが、まったく同じように永遠にくり返されるとする考え方です。

キリスト教では、神の国を目指して過去から未来への直線的な世界観があります。

それは死んだら天国か地獄へ行き、そこで永遠に暮らすことになるという考えです。

でも、ニヒリズムにとらわれた人生がそのまま続くのは、なんとも苦痛ではないでしょうか。

そこでニーチェは、永遠回帰のニヒリズムを断ち切る勇気をこの【ツァラストゥストラ】に込めたのです。

以下がその部分です。

まことに、わたしがそこに見たものは、かつてわたしの見たことのないものであった。

一人の若い牧人がのたうちまわり、息をつまらせ、けいれんをおこし、顔をゆがめて苦しんでいるのを、わたしは見た。

その口からは一匹の黒くて重たい蛇が垂れ下がっていた。

これほどの嫌悪の情と蒼白の恐怖が、人間の顔にあらわれたのを、わたしは見たことがなかった。

中略

わたしの手は蛇をのどから引きだすことはできなかった。わたしはわれを忘れてそのとき絶叫した、「噛むんだ!噛むんだ!頭を噛み切るんだ!」

中略


牧人は、わたしの絶叫のとおりに噛んだ!かれは蛇の頭を遠くへ吐き出した、~そして飛びおきた。

もはや牧人ではなかった。もはや人間ではなかった、~一人の変容した者、光につつまれた者であった。

【ツァラストゥストラはこう言った(下)】

以上が【ツァラストゥストラ】の骨格であり、ニーチェ思想ということです。

それでは、現代においてどのようにとらえ、ニーチェ思想を生かしていくかを考えてみたいと思います。

「人生の意味」は、本当にないのか?

【ツァラストゥストラ】の冒頭で言い放つ「神は死んだ」というのは、そもそも「人生の意味」はないということです。

それには次の理由があります。

  • 今の「常識」とか「良い人間」という価値観は、ルサンチマン(弱者の嫉み)からきているから

  • 「人生の意味」だけ問う人は、必ず絶望し、それが命尽きるまで続くから

  • 絶望に陥った人生はニヒリズムにとらわれ「永遠回帰」により、同じことを繰り返すようになるから

そもそもわたしたちは、何かにつけて「神頼み」をしますが、それにより救われた経験もあれば、報われない経験もしてきたのではないでしょうか。

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がわたしはとても好きなのですが、それだって自分がやれる準備をしっかりしてきたからだと思います。

つまり主体性がないまま何かに依存するというのはダメということですね。

良い人生にするために何が必要か?

自分の人生は、自分で良くしていくしかありません。

それに必要なことは次のようなことです。

  • これまでの常識や価値観を疑ってみる思考

  • 現実を直視する力

  • 末人から超人思考に切り替える能力

いろんな社会の変化から、わたしたちにとって生まれてからこれまでに変わることのなかった常識や価値観はなかったはずです。

それなのに「常識はこうだ」「○○だからこうするのは当然だ」といったものにとらわれ支配されてきたのです。

そこから解き放されなくては、超人にはなれないでしょうね。

どのようにしてイキイキした人生を取り戻すのか?

次に挙げるのは、あくまでもわたしの意見です。

  • 宗教、恋愛、仕事、人生の支えになる「あらゆる価値観に絶対はない」という思考を持つ

  • 今このときを充実させる努力をする

  • イヤなことを文句も言わず受け入れる思考を捨てる

ちょっと極端ですが、この世に絶対はありません。

ある宗教を一心不乱に信心していても心変わりをすることだってあるし、恋愛にやぶれ、仕事で失敗し、人生の支えがなくなることだってあるでしょう。

「今苦しくとも未来はきっとよくなる」というのも、考えるだけでもむなしいものです。

だからといってニヒリズムにとらわれてしまっては、せっかくこの世に生を受けた意味がありません。

「人生の意味」とは、神から受けるものではなく、神に問われているのだと先日の【夜と霧】の記事で書きました。

まさに自分の人生を主体的に生きることこそが「人生の意味」というものでしょう。

そのためにも「今このときを充実させる努力」を自分なりに考えて実行すべきです。

そういった意味でもこのニーチェの残してくれた名著【ツァラストゥストラ】は、読んでおいて損がないといえます。


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