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【不定期更新】文芸コンテストニュース!2024/6/28版


文学賞発表情報

 毎月第2・第4金曜日に更新している「文芸公募ニュース」6.28分更新です。
 6.26、ついにガルシア・マルケスの『百年の孤独』が文庫化されました。文庫化されたら世界が滅びるという都市伝説がありましたが、皆さん、ご無事ですかー!

第44回横溝正史ミステリ&ホラー大賞

応募数399編。北方謙三、今野敏、今村翔吾、角川春樹の4氏の選考により、下記のとおり受賞者が決まりました。

受賞作
「真令和復元図」桜田光(佐賀県)

 選考委員の今村翔吾さんは九州さが大衆文学賞の受賞者でもありますが、受賞時、選考委員をしていたのが北方謙三さん。それが縁で表彰式のときに「長編を書いたらいい」と助言され、のちに長編を書いて角川春樹小説賞を受賞しますが、そのお二人が選考委員として肩を並べているというのも縁でしょうか。今度は今村さんに続く才能を発掘してほしいですね。

第2回三服文学賞

 和多屋別荘(佐賀県嬉野市)が主催する三服文学賞は、応募数1241編の中から下記のように入選者が決定しました。

入選作
大賞(エッセイ)「水のからだ」葦田不見
副島園賞(詩)「お茶時間旅行」中立明子
8cacao賞(短歌)「ひとりでに孵化」長谷川彩香
Yohaku賞(エッセイ)「光る朝」南極まほ
D&S賞(小説)「あの子を知りたい」紫冬湖
選考委員賞 染谷拓郎 推薦(小説)「十分間のお茶会」井上茉莉衣
選考委員賞 深井航 推薦(詩)「本の声」かまきり
選考委員賞 堤優衣 推薦(選書文)「この一冊をどうぞ」shin

 7つのテーマにまつわる作品であれば、ジャンルはエッセイ・小説・詩・短歌・俳句・川柳なんでもいいというユニークな公募。
 小説と短歌はどのようにして優劣を決めるんですかね。まるで空手vs相撲といった異種格闘技戦みたいですね。次回は皆さんが参加してみてください。

第14回集英社みらい文庫大賞

応募数340編の中から、下記のように入選者が決まりました。

入選作
大賞「赤い契約書 -怪異対策コンサルタント・木更津志穂-」(日部星花)
優秀賞「99通目のラブレターソングをきみへ」(道具小路)

 集英社みらい文庫は、青い鳥文庫や角川つばさ文庫と並ぶ児童文庫のレーベル。児童文庫は児童文学よりライトというか、基本はエンタメですね。公募ガイドでは連載もしていただいていた『黒魔女さんが通る‼』の石崎洋司さんに取材したとき、「児童文庫は独特なんだよね」と言っていました。表紙を見ればわかりますが、独特のほんわかした世界観があります。

 読者はおおむね小学生、特に女の子。受賞した日部星花さんも児童文庫をよく研究したようですが、児童文庫の賞に応募するなら、児童文庫を読んでいないとだめですよね。

メフィスト賞 2024年上期座談会

 下記の通り、2024年上期のメフィスト賞は、編集部の選考により、下記のような結果になりました。

受賞作
該当作なし

座談会対象作品
「火煙と血煙」(在嶋満)
「アシェフの日記と魔法使いヴォイジャに関する考察」(松舘峻)
「怪奇探索者」(一周八日)
「未解明報告書」(識村綜研)
「信長インペリオ」(稲葉大樹)
「エステート望月」(鈴木葉月)
「物をつくる、謎をとく」(大橋他)
「まやかし」(六平一太)
「彼女の終幕」(九能式尚)

 メフィスト賞は、編集部が選考する文学賞。京極夏彦さんの持ち込みをきっかけに始まり、森博嗣、西尾維新、辻村深月を発掘しているだけに、ミステリーの賞と思いがち。しかし、実際はエンターテインメント小説であればジャンル不問。というより、その人自身がジャンルというような傑作を発掘しようという気風を感じます。歴代の受賞作を見ると(全部読んでいるわけではありませんが)、変わった小説ばかり。そういう意味では今回の候補作はオリジナリティーが少し足りなかったのかもしれません。予選を通過していますので秀作ぞろいだとは思いますが、そこからが大変なんでしょうね。

文学賞NEWS

ご当地文学賞 勝手にランキング

 数ある文学賞の中には、自治体や地方新聞社などが実施する地方文芸が多々あります。その中から、「これはオススメ」という9賞をピックアップした。

文句なし、地方文芸のBIG3

全国公募、賞金100万円、テーマ自由という3賞を紹介!

第59回北日本文学賞
主催は北日本新聞。テーマ自由、枚数30枚、賞金100万円という優良公募。選考委員は宮本輝。1次選考通過者からWEBで確認できるのがいい。締切8/31。

第33回樋口一葉記念やまなし文学賞
主催は山梨県立文学館。テーマ自由、枚数30~80枚、賞金100万円。選考委員は町田康、堀江敏幸、青山七恵と全員芥川賞作家。締切11/30。

第11回林芙美子文学賞
主催は北九州市立文学館。テーマ自由。枚数70~120枚。賞金100万円(佳作10万円)。選考委員は井上荒野、角田光代、川上未映子。資格不問。締切9/13。

BIG3にひけをとらない注目文学賞!

賞金は100万円とまではいかないが、全国公募で、賞金も高い文学賞を紹介!

第21回坊っちゃん文学賞 ショートショート募集
主催は松山市。テーマは自由だが、田丸雅智さんはショートショートを「短くて不思議なお話」と定義している。字数は4000字以内。賞金50万円。締切9/30。

第20回木山捷平短編小説賞
主催は笠岡市教育委員会、ほか。木山捷平を顕彰して創設。テーマ自由。枚数50枚以内。賞金50万円。選考委員は佐伯一麦ほか。締切9/26。

第23回北区内田康夫ミステリー文学賞
主催は東京都北区。ジャンルはミステリー。枚数40~80枚。賞金100万円(特別賞10万円)。前回応募数は182編。穴場! 謎解きプロパーでなくていいと思うが、受賞作は舞台化するのでエンタメではありたい。締切9/15。

題材が合えば優良公募

地元を題材にするという条件はあるが、全国公募、高額賞金の文学賞を紹介!

彩の国 埼玉りそな銀行 第55回埼玉文学賞
主催は埼玉新聞社。県外者は埼玉の風土、歴史、人物などを題材にする。枚数50枚以内。賞金100万円。詩、短歌、俳句の部門もあり。締切8/31。

第28回伊豆文学賞
主催は静岡県、ほか。県内の自然、歴史などを素材に。枚数30~80枚程度。賞金100万円。随筆、紀行文、掌編小説もあり。締切9/30(掌編9/16)。

第5回京都文学賞
主催は京都文学賞実行委員会。京都を題材とする。枚数は2万8000字~16万字。賞金100万円+出版化(優秀賞50万円)。読者選考委員も公募。締切2025/5/9。

文芸トレンド

 芥川龍之介賞、直木三十五賞は受賞するとテレビで報道され、大変な注目を浴びることから、プロを対象とした文学賞はこの2賞しかないと思っている方もいる。

 同賞は日本文学振興会主催だが、実質的には文芸春秋主催であり、競合他社も自前で文学賞を持ちたいと思うのだろう。そこで創設されたのが、三島由紀夫賞と山本周五郎賞で、主催は新潮文芸振興会(実質、新潮社)だ。
今回は、この三島賞と山周賞の結果をお知らせしよう。
 なお、芥川賞・直木賞について詳しく知りたい方は、こちらの「芥川賞・直木賞」をご覧ください。

第37回三島由紀夫賞決定

 第37回三島由紀夫賞は、大田ステファニー歓人かんと『みどりいせき』(集英社刊)に決まった。
 『みどりいせき』は、第47回(2023年)すばる文学賞受賞作で、2024年2月に集英社から刊行されていた。
 大田ステファニー歓人さんは日本映画大学卒、在学中に関川夏央さんの指導を受けている。受賞作は闇バイトに巻き込まれる高校生を描いた作品で、フリージャズのようにして書いたという独特の文体を持つ。勝手な印象だが、どことなく金原ひとみさんのデビューを彷彿とさせる。
 選考委員は、川上未映子、高橋源一郎、多和田葉子、中村文則、松家仁之の5氏。

第37回山本周五郎賞決定

 第37回山本周五郎賞は、青崎有吾『地雷グリコ』(KADOKAWA刊)が受賞した。
 青崎有吾さんは、2012年に鮎川哲也賞を受賞してデビュー。本格推理の旗手。『地雷グリコ』は山本周五郎賞のほか、第77回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉と第24回本格ミステリ大賞(小説部門)も受賞しており、5月の1週間で3賞を受賞。現在、直木賞の候補にも入っており、受賞すると4冠となる。
 選考委員は、伊坂幸太郎、江國香織、小川哲、今野敏、三浦しをんの5氏。


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