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【具体事例からわかりやすく紹介!】誰もが悩む「地の文」テクニックをレクチャーします!


書き始めてすぐにぶち当たる壁。それは地の文をどう書くか。
ここではアマチュアが陥りやすい点を4つ挙げ、こう書いては? という修正案を示します。

Q1:セリフ内の説明

台詞があって、その台詞の中に、説明しないと意味が分からないところがあったので説明を書きましたが書き出したら長くなって…。
文章が下手なのは置いておくとして、説明文を入れるタイミングが良くわかりません。

【原文】
私は圭子と会うことにし、メールした。品川には十時頃着くが、駅の近くにホテルを知らないかと。圭子からメールが来た。
「東京のことはまだわからないの」
四軒あった。
圭子夫婦は沖縄で暮らしていたが、十年前に夫だけ東京に単身赴任になった。圭子は沖縄で子育てしていたが、今春、娘の進学を期に一緒に上京した。念願の東京デビューを果たしたというわけだ。
ホテルは一軒に空きがあった。
「ありがとう。ホテル取れました」

【修正案】
圭子夫婦は沖縄で暮らしていたが、十年前に夫だけ東京に単身赴任になった。圭子は沖縄で子育てしていたが、今春、娘の進学を期に一緒に上京した。念願の東京デビューを果たしたというわけだ。
私は圭子と会うことにし、品川には十時頃着くが、駅近くにホテルを知らないかと書いてメールした。ほどなく返信があった。
「東京のことはまだわからないの」
それでも四軒書いてあり、一軒に空きがあった。メールでお礼を言う。
「ありがとう。ホテル取れました」

「東京のことはまだわからないの」が唐突だったので、その説明を入れたわけですね。説明文の分量は問題ないと思いますが、流れが止まりますので、メールとメールの間ではなく、どこか落ち着いた場所に移動してはどうでしょう。今回はとりえず前のほうに移動させました。

Q2:人物の説明

主人公が旧友と会うシーンがあり、旧友がどんな人か説明を書きました。必要な情報は過不足なく入れたつもりですが、読み返してみると、われながら面白くもなんともなく、情報も頭に入ってこない感じです。
こういうとき、どうすればいいでしょうか。

【原文】
帰省したとき、霊園の駐車場で幼なじみの晴美と会った。
昔、晴美とカラオケに行ったことがある。それ以来、晴美とは会っていない。晴美のいとこの結衣とは今も会う。私と結衣は東京で働いている。晴美は青森だ。
私は同窓会には一度も出席したことがないが、晴美と結衣は同窓会で何度か顔を合わせているそうだ。

【修正案】
帰省したとき、霊園の駐車場で幼なじみの晴美と話した。
「昔、カラオケに行ったよね」晴美は懐かしそうに言い、あなたと結衣は東京だからいつでも会えるわねとこぼした。晴美は青森だ。
結衣というのは晴美のいとこで、私は今も会うが、晴美とはカラオケに行って以来、会ってない。
「結衣とも会ってないでしょ?」
私の問いに、晴美は即答した。
「同窓会で何度か会ったわ」
二人は同窓会に出席していると言う。私は出席したことがなかった。

A2:「読者は物語が読みたいのであって、説明が読みたいわけではない。説明過多になってはいけない」と言いますが、プロは説明すらも面白く書きますね。面白ければ説明過多でもいいと思いますが、単なる情報の羅列はつらいです。セリフを交えるなどして説明を小出しにしては?

Q3:「ふと」は都合が良すぎてNG?

ある場面で、〈ふと、熊本でうどん店をやっている知人を訪ねてみようと思い立った。〉と書いたところ、小説の合評会で、「そんなに都合よく『ふと』思うものですか。『ふと』は禁句では?」と言われてしまいました。「ふと」は禁句なのですか。

【原文】
熊本市内に入る途中に「道の駅」があった。とくに買うものもなかったが、健三は自分にできる支援は物産を買うことぐらいだと思い、特産品を物色してまわった。
そのとき、ふと、熊本でうどん店をやっている知人を訪ねてみようと思い立った。

【修正案】
熊本市内に入る途中に「道の駅」があった。とくに買うものもなかったが、健三は自分にできる支援は物産を買うことぐらいだと思い、特産品を物色してまわった。
施設内を一回りし、反対側の外に出ると、うどんの粉を販売している一画があった
そういえば熊本でうどん店をやっている知人がいたなと、にわかに懐かしさに駆られ、健三は知人を訪ねてみようと思い立った。

A3:
現実に「ふと思う」こともよくありますし、自然に「ふと」と書いてある分にはいいと思います。
ただし、それを小説の中でやったとき、いかにも作者の都合でそう思わせた感が出てはまずいです。何か思い出すきっかけを与えてはどうでしょうか

Q4:時間経過の見せ方

小説を書いて家族に見てもらったところ、「この場面だけど、今、喫茶店に入ったと思ったら、もう出るんかい」と突っ込まれてしまいました。
〈二時間経った。〉と書いたからこれでいいと思ったのですが、〈二時間経った。〉という説明だけではだめだったのでしょうか。

【原文】
秋野は買い物帰りのマリを見つけ、喫茶店に入った。コーヒーを飲みながら話した。時間はかつて付き合っていたときに戻っていた。二十年が過ぎても、マリは少しも変わっていなかった。二時間経った。
「私、そろそろ帰らないと」

【修正案】
秋野は買い物帰りのマリを見つけ、声をかけて喫茶店に誘った。店内にはクラシック音楽が流れ、アンティークの壁時計は三時を指していた。この店、よく来たよね。君、二十年前と変わってないよ、などと話が盛り上がり、注文するのを忘れたほどだった。二人ともかつて付き合っていたときに戻り、時間が経つのも忘れて話し込んだ。
時計を見ると、もう五時だった。
マリもスマホで時刻を確認している。

すでに主婦の顔だった。
「私、そろそろ帰らないと」

A4:〈二時間経った。〉と書けば、作中の時計を進めることはできますが、読んでいる人も二時間経ったような気にさせたいです。そのためには心情を書いたり、「二時間の変化」(時計の針が進むなど)を書くといいです。普通はもっと字数が必要ですが、やるだけやってみましょう。

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