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【万人ではなく特定少数の共感を】心を揺るがす文章を生み出す方法


「剌さる」が人を選ぶのはなぜ?

心の中の負の部分が「剌さる」を発見する

 なぜ、ある人には刺さり、ある人には刺さらないという現象が起きるのでしょう。それは、ある人に目につくものは、その人の内面そのものだからです。

周囲の外的なものに無関心であるような「内的人間」innermanにおいて、はじめて風景がみいだされる。風景は、むしろ「外」をみない人間によってみいだされたのである。

(柄谷行人『日本近代文学の起源』「風景の発見」)

 風景は誰にでも見えるものではなく、目の前で葉が風に揺れても、花が咲いていても、見えない人には見えません。
 風景は、内面が発見するものだからです。

 だから、抱えている問題が違えば、何が刺さるかも変わってきます。置かれている環境や年代によっても変わってきます。心模様が違えば、剌さるものが違うのは当然です。

年代別「剌さる」ものと原因

20歳前後

 心の問題の中心は、就職・恋愛・人間関係。好みはシンプルなラブストーリーまたはファンタジー。映画なら『君の名は。』、小説なら朝井リョウの『何者』が刺さる。

30歳前後

 心の問題の中心は、恋愛・結婚・出産。きゅんきゅんする話や自立ものに弱い。ドラマなら『東京タラレバ娘』。育児中の人はのぶみの絵本『うんこちゃん』シリーズが刺さる。

40歳前後

 心の問題の中心は『人生このまま終わっていいのか、でも老いというには若いぞ』問題。ドラマなら『カルテット』、小説なら平野啓一郎の『マチネの終わりに』が刺さる。

50歳前後

 心の問題の中心は癒し。子も巣立ち、夫婦間も冷え、老後を一人でどう生きるかが問題。刺さるものは孫とペットとゆるキャラ(とくにフナッシー)。そして病気。

「剌さる」の本質

「剌す」は心の叫び、「剌される」は弱った心

 「売れている」と「刺さる」を比べると、「刺さる」は必ずしも万人ウケはしないものの、ある程度限定された人たちの心を鋭く突くという特徴に至ります。

 「刺す」ほうには、本人の胸の内だけに留め置けず図らずも噴き出てしまった切実さがあり、それを受け取るほうもそれ相当の問題を抱えている。それらが激しく共鳴し合ったもの、それが「剌さる」の正体ではないでしょうか。

「剌さる」五か条

  1. 「剌さる」は、本音である。

  2. 「剌さる」は、真理である。

  3. 「剌さる」は、告白である。

  4. 「剌さる」は、弱い部分を突くものである。

  5. 「剌さる」は、人を行動させるものである。

刺さる文章の書き方を解説!
特集「刺さる文章」
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※本記事は「公募ガイド2017年4月号」の記事を再掲載したものです。

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