【実例でわかりやすく解説】「書き出し」と「終り方」の妙とは?(2016年11月号特集)
エッセイには入り口と出口が必要です。そこでプロの物書きはどのように書いているのか、実例を通して解説します。
プロはどう書き出しているか、実例を見て参考にしよう!
ここでは、手元にあったエッセイの中から、先が気になるような書き出しをしているものを紹介します。
書き出しは凝らなくていい。「?」があればなおいい
書き出しは重要です。できれば、先が読みたくなるようなことを書きたい。
しかし、実際にプロが書いたエッセイの書き出しを見ると、思いのほか普通です。むしろ、普通すぎるくらい普通に書いています。そのほうが早く本題に入れるからだと思いますが、その中でも「いいな」と思う書き出しには「?」があります。
「いびきで殺される?」「犬がため息をつく?」「夏裁判って何?」などなど。
意外と少ないのは、セリフで始める書き出し。これはプロにはあまり実例がありません。たぶん、いきなりセリフから始まるのは、ある時代までは一種の禁じ手だったのではないかと思いますが、その禁を破った人がいて、それがインパクト大で、みんなまねするようになったのではないかと。
やっても問題ありませんが、説明なしにセリフに入ると「誰が誰にどんな状況でなぜ?」という疑問が出ますので、やるなら、セリフの直後にきちんと状況説明を入れましょう。
終わり方は器械体操の着地のようなもの
エッセイの終わり方は器械体操の着地のようなもので、ここがうまく決まるとすべていいような気になります。
いろいろなパターンがありますが、特徴的な実例を挙げてみましょう。
全体をまとめる
最後に全体を通じたまとめを書いて終わるパターン。まとめであると同時に、何か深いことを言っていると、「なるほど」となります。
書き出しに呼応
印象的な書き出しがあり、その後、本文の中ではそのことにはほとんどふれず、最後になって書き出しの内容に戻るパターンです。
最初と最後が呼応しているので「首尾一致」と言います。最後に強引に最初の話題に戻ると、意外とうまく決まります。
唐突に終わる
転が終わったら結なしで終わるパターン。文章としては完結していますが、最後にまとめがあるだろうと予想していたところ、それがないので、急に終わった感じがして余韻が出ます。
オチをつける
最後に笑いをとって終わるパターン。蛇足といえば蛇足ですが、楽しく終われます。
結は長くならないこと
テーマが浮かんでくるのでなければないでいい
エッセイの終わり方は、そこまで書いてきたことを総括して、「だから、こうだ」とまとめるパターンが定番です。
一番よくないのは、結で決めの言葉を書こうして、決めきれずに長くなるパターン。
著者としては何か言い足りず、これでもかと文章を連ねますが、起承転がしっかり書けているのに、結で同じことを繰り返せばくどくなります。
結が長くなりそうなら、結を見直すのではなく、その前段を見直しましょう。問題はそこにあります。
一番いいのは、まとめのようなことは書かず、さらっと終わること。結なしで終われるなら、それが理想的。
通常、エッセイの読み手は、「最後にまとめがあるだろう」と予想して読んでいます。だから、結がなく、出来事だけ書いて終わると、「著者は何が言いたかったんだ?」と勝手に行間を推測します。
結がなければ、代わりにテーマが浮かび上がってくるということです。
COLUMN
エッセイ以前の漢字表記
エッセイ以前の漢字の表記漢字の表記は、文芸作品では基本的には書き手の自由でかまいませんが、漢字使用の目安を示した常用漢字については知っておいてほしいと思います。
とくに最近はワープロ原稿が多いため、不用意になんでも変換してしまう傾向があります。
上記の作品でも「抉る」とありますが、難読です。漢語はなんとなく意味がとれるところがありますが、和語が読めないとどうにもなりません。
この漢字、読めるだろうか、読めなかったら困るのではないかという配慮があれば、「えぐる」と書くことを選ぶのではないでしょうか。
常用漢字については、文科省のホームページでも確認できますが、ものを書く人は必ず用語用字辞典を入手し、難読ではないかな、送り仮名はこれで合っているかなと思ったら、必ず確認するようにしてください。
最初は面倒ですが、半年もすればだいたいのものは覚えてしまいますし、覚えてしまえば一生の財産になります。
そのうえで、常用漢字ではないけど、あえて使うと判断する分には個人の好みでよいと思います。
エッセイ以前の表記の統一
エッセイなど文章を書く場合は、表記を統一します。最初に「私」と書いて、次は「ワタシ」、その次は「ぼく」と書くような不統一は避けます。
ただ、報道の文章などとは違い、エッセイの場合はどう書いても著者の自由というところがあり、たとえば、ここはいかにも硬い雰囲気だから漢字で「雰囲気」と書き、ここはくだけた場面だから「フンイキ」と書こうという人もいるかもしれません。
しかし、そうした書き分けにはさしたる意味があるとは思えませんし、また、「表記を統一しなければならない」という意識がないのなら、この機会に改めましょう。
そうでないと、「今までは『エッセイ』と書いていたのに、ここにきて『エッセー』と書き出したけど、何か意味が違うのか」と深読みされるかもしれませんし、下手をしたら、「この著者は表記の統一ということを知らないのだ」と侮られてしまいます。
公募の審査では、これはちょっとだけ不利です。
※本記事は「公募ガイド2016年11月号」の記事を再掲載したものです。
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